1)検討の目的
今までの「段落の論理」と「パラグラフの論理」の議論を要約します。
段落の論理:
段落の基本は、文字配列の形であり、基本形は、意味に制約されない。
段落は、共感で評価される。
パラグラフの論理:
パラグラフとは、意味の塊であり、文字配列の形は自由である。
パラグラフの意味は、主題(トピックセンテンス)、データ、論理で構成される。
さて、この解釈に因果推論の視点を導入することで、問題の整理ができないかという疑問が、今回の検討の目的です。
2)前向き推論と逆向き推論
因果推論では、原因のオブジェクトと結果のオブジェクトの間に向き(矢印)が付けられると考えます。
「嵐=>気圧計の針」の場合には、逆向きに矢印を付ける人はいないと思われます。
スポーツ選手の場合には、好敵手がいることがあります。
これは、Aさんに、刺激を受けて、Bさんがトレーニングをするような場合、「Aさんのトレーニング=>Bさんのトレーニング」と、Bさんに、刺激を受けて、Bさんがトレーニングをするような場合、「Bさんのトレーニング=>Aさんのトレーニング」という相互作用を示す言葉です。
しかし、パールは、「因果推論の科学」(p.29)で、<科学研究においては「仮定」の単純化が必須となる>といいます。
因果推論では、同じ時刻には、相互作用はないという「仮定」の単純化が行われています。
これは、相互作用を全否定しているわけではありません。
プロのテニスプレーヤーには、世界ランキングがあります。
ランキングで、Aさん>Bさんのときには、「Aさんのトレーニング=>Bさんのトレーニング」、Bさん>Aさんのときには、「Aさんのトレーニング=>Bさんのトレーニング」という因果構造を考えることは可能です。
しかし、因果モデルでは、同じ時刻には、必ず矢印の向きは、1つだけという仮定を採用します。
パールは、因果ダイアグラムの言語を習得するのは、簡単であるといいます。
パールは、AI研究者でした。パールは、新しいコンピュータ言語を言語規約(文法)を読むだkで、簡単に使いこなすことが出来るはずです。このレベルの言語能力があれば、因果ダイアグラムとdo演算子を含む数式言語を使いこなすことは容易です。
残念ながら、筆者のような凡人にとっては、言語規約を読んだだけで、因果ダイアグラムを書くことは困難です。
最大の問題は、要素をどこまで取り込むかです。
さて、因果推論の基本は、「原因=>結果」の因果関係のある要素の抽出です。
このプロセスには、2つの側面があります。
第1は、矢印の方向が一方通行であることです。
第2に、状況を変えるためには、原因に介入する必要があることです。
パールは、この点を「因果推論の科学」(p.24)で、「気圧計の針を無利に押し下げても、嵐が来る確率に変化は起きない」と言います。
「嵐が来る(原因)=>気圧計の針が下がる(結果)」の因果構造がある場合には、原因に介入して、結果を変えようとします。
嵐を指で押さえることはできませんが、気圧計の針は指で押さえることができます。
介入のしやすさを考えれば、圧倒的に、気圧計の針が有利です。
しかし、問題解決のための推論は、「原因=>結果」の前向きに行われます。
この方向の推論を「前向き推論」と呼ぶことにします。
逆に、「気圧計の針を無利に押し下げて、嵐が来る確率を変化させる」という「結果=>原因」の逆向きの水路を「逆向き推論」と呼ぶことにします。
逆向きの推論をしても、原因はかわりません。
なので、逆向きの推論は、存在しないと考える人がおおいかも知れません。
しかし、原因を2つに分ければ、逆向きの推論があり得ます。
ガソリンの価格の例をあげます。
原因(ガソリンの仕入れ値)=>結果(ガソリンの販売価格)
政府は、逆向き推論を多用しています。
ガソリンの販売価格があがった場合に、ガソリンの販売価格を下げようとします。
これは、「気圧計の針を無利に押し下げる」ように、結果に介入する方法です。
政府は、補助金を使い、原因の「ガソリンの仕入れ値」を下げます。
因果モデルで考えれば、ガソリンの仕入れ値は、輸入する石油の価格、石油の生成コスト、輸送コスト、人件費などのマージンで決まります。これからが、原因であり、「ガソリンの仕入れ値」は結果です。
因果モデルで考えれば、原因に介入しないで、結果を変えることはできません。
補助金は、「ガソリンの仕入れ値」ではないので、因果構造が維持されていれば、補助金によって、「ガソリンの仕入れ値」が変わることはありません。
パールは、介入は、因果ダイアグラムに対する外科手術であると考えます。
つまり、介入によって、因果構造が変化します。
「ガソリンの仕入れ値」(補助金なし)と「ガソリンの仕入れ値」(補助金あり)は、全く異なった因果構造をしています。この2つは、全く別のデータです。
読者は、体調が悪くて、高熱を出したとします。体温(解熱剤なし)と体温(解熱剤あり)また、全く別の種類のデータになります。体温(解熱剤なし)が平熱になれば、病気の状態を脱したと判断できますが、体温(解熱剤あり)が平熱になっても、病気の状態を脱したとは言えません。解熱剤を中止すれば、再び高熱になるリスクがあります。
補助金は、逆向き推論です。原因(ガソリンの仕入れ値)(補助金なし)はまったく変化していません。補助金によって下がったのは、原因(ガソリンの仕入れ値)(補助金あり)です。
逆向き推論では、一見すると、原因が変わったように見えますが、これは、もとの原因とは別のデータになります。簡単にいえば、逆向き推論では、もとの原因データを入れ替えて、フェィクな原因データを表示するデータハッキングが行われています。
補助金を中止すれば、解熱剤を中止したように、またもとの因果構造に逆戻りします。
補助金は、逆向き推論です。原因が生じる因果構造の改善を放置しますので、問題は解決されません。
今のモデルでは、補助金は、原因(ガソリンの仕入れ値)に作用するという因果モデルをかんがえました。
補助金は、結果(ガソリンの販売価格)に作用するというモデルも考えられます。このモデルには、原因がないので、因果モデルではありません。
結果に介入する場合には、対処療法と考えることもできます。
この場合には、原因がないので、逆向き推論ではありません。
このように、モデルは1つには、限りません。
ただし、因果推論をするためには、出来るだけ、因果モデルを使うべきです。