3)水を得る権利
水を得る権利は、世界の持続可能な開発目標(SDGs)の目標6「安全な水とトイレを世界中に」の中に含まれます。
国際法学会エキスパート・コメントの一部を引用します。
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私たちは、1日に少なくとも3から5リットルの水を補給しなければ、生きてゆくことができません。水を使って顔や手そして体を洗い、トイレを流すことで衛生を保ちますし、炊事や洗濯もします。日本では、上下水道の普及によって安全な水をどのように得るか、廃水がきちんと処理されるか、心配をしなくてよくなりました。裏を返せば、私たちが水の恵みを意識することも稀になっています。
水に対する人権の登場
水に対する人権は、どの人権条約に規定されているのでしょうか。まず参照するべきは1948年の世界人権宣言を基礎に作られ、1966年に採択された社会権規約と自由権規約です。しかし、どの条文を読んでも「水」の文言は記されていません。この当時、水は国際的な問題として認識されておらず、これら文書を起草する過程において、議論の俎上にすら上らなかったようです。後に採択された差別の撤廃や平等を定めた条約には水へのアクセスに関わる規定も見られますが(例えば、女子差別撤廃条約第14条2項(h)、児童の権利条約第24条2項(c)、障害者権利条約第28条2項(a))、一般的な人権カタログの一つとして水に対する人権を認めたと根拠づけるのは難しそうです。
このように、水に対する人権は明文規定を持たないため、その存在について議論が交わされてきました。水が人権の問題として国際人権法の実務家や研究者の間で広く取り上げられるようになったのは、世界各地で水道事業の反民営化デモが起こった2000年頃からです。特に、翌年に京都での世界水フォーラム開催を控え、社会権規約委員会が2002年に公表した「水への権利(the right to water)」に関する一般的意見15は大きな影響を持ちました。その後、人権理事会の要請を受け、国連人権高等弁務官事務所が報告書を2007年に公開しています。また、2008年以降は人権理事会によって水と衛生分野の人権について担当する個人資格の特別報告者(当初は独立専門家)が任命され、テーマ別の研究、国の訪問調査、優良事例の収集と紹介をしてきました。
諸国はこうした意見や報告書などを参考に国連の総会や人権理事会で議論を進め、「安全な飲用水に対する人権(the human right to safe drinking water)」の存在を確認するに至ります。初めて水と衛生に対する人権を独立の人権として明示的に確認した2010年の総会決議64/292は、122カ国の賛成で採択されたものの、日本を含む41カ国もの棄権がありました。その理由は、事前の調整が不十分なままの決議案提出であり、十分な合意が得られていない内容が含まれていたためです。同年の人権理事会決議15/9以降は、コンセンサスで決議が採択されていきます。2015年の総会決議70/169(日本語訳)以降は、安全な飲用水に対する人権と、衛生に対する人権が、それぞれの固有の考慮の必要から別個の内容を持つ権利として分けられています。
総会や人権理事会の諸決議では、水と衛生それぞれに対する人権は「相当な生活水準についての権利から派生し、そして到達し得る最高水準の身体的及び精神的健康に対する権利、並びに生命及び人間の尊厳に対する権利と分かち難く関連している」と、根拠となる権利が明示されています。こうした権利は、日本が締約国である社会権規約の第11条、第12条や自由権規約の第6条で定められていますので、日本も義務を負っていることになります。
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水と人権 国際法学会エキスパート・コメントNo.2020-5
https://jsil.jp/archives/expert/2020-5
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前回、英語版のウィキペディアの「人権Human rights」を引用しました。
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普遍的な人権の原則は広く受け入れられていますが、どの権利を優先すべきか、どのように実施すべきか、そして異なる文化的背景においてそれが適用可能かどうかについては議論が続いています。
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これは、人権の権利の優先順位、実施方法についての解釈が変化することを意味します。
憲法には、基本的人権というオブジェクトがかかれていますが、基本的人権というオブジェクトに対応するインスタンスは、議論の進展によって変化します。
水を得る権利は、比較的最近になって、人権に含むべきであると考えられています。
国連の「水を得る権利」の一部を引用します。
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国連の決定
2002年11月、国連経済的、社会的、文化的権利委員会は、十分な量の清潔な個人・家庭用水に対するアクセスが、すべての人々の基本的人権であることを確認しました。1966年の「経済的、社会的、文化的権利に関する国際規約」第11条および第12条に関する一般的コメント第15号で、委員会は「水を得る人権は人間らしい生活を送るために不可欠である。それは他の人権を実現する前提条件である」と指摘しました。この一般的コメントは、同国際規約を批准した146カ国を法的に拘束するものではなく、規約実施の援助と促進をねらいとしていますが、実際に「ソフト・ロー」としての重要性と影響力を備えています。
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水を得る権利
https://www.unic.or.jp/news_press/features_backgrounders/1152/
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2023年3月22日から24日にかけて、ニューヨークで開催された2023年国連水会議が開催されました。
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オランダ王国とタジキスタン共和国の共催によるこの会議には、世界の指導者、市民社会やビジネス界のリーダー、若者、科学者、研究者、国連システム、そして農業・エネルギー・環境・水などさまざまな部門からの参加者が、共通の目標のもと一堂に会しました。すなわち、水危機に緊急に対処し、世界を持続可能な開発目標(SDGs)の目標6「安全な水とトイレを世界中に」の達成に向けた軌道に戻すという目標です。
この会議の成果については、2023年9月の国連総会期間中に開催される「SDGサミット」、2024年の「未来サミット」、2025年の「世界社会サミット」という今後予定されている3つの重要なサミットにおいて具体的なフォローアップが行われます。
コミットメント
日本は、「質の高いインフラ」を整備し、今後5年間で約5,000億円(36億5,000万ドル)相当の資金援助を提供することで、アジア太平洋地域が直面する水に関連した社会問題の解決に向けて、積極的に貢献します。
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歴史的な国連水会議、世界的な水危機と水の確保に対処する分岐点となり、閉幕(2023年3月24日付プレスリリース・日本語訳)
https://www.unic.or.jp/news_press/info/47943/
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4)水道の問題
2023年国連水会議は、主に、途上国の水を得る権利を扱っているように見えます。
日本は、「質の高いインフラ」を整備し、今後5年間で約5,000億円(36億5,000万ドル)相当の資金援助を提供するコミットメントをしています。
日本国内には、水を得る権利の問題はないのでしょうか。
2025年1月28日、埼玉県八潮市の中央一丁目交差点で、埼玉県八潮市道路陥没事故が発生しました。原因は呼び径4.75メートルの下水道管の破損とみられます。
八潮市道路陥没事故では、水を得る権利が侵害されています。
水道の老朽化が進んで、水道料金を値上げする自治体が増えています。
政府は、今後、過疎地域では、上水道サービスを中止して、タンクをつかった簡易水道に切り替える計画です。
日本の水を得る権利は、先進国レベルから途上国レベルへの劣化が止まりません。
水を得る権利が、人権でなければ、赤字の水道は営業を中止すればよいことになります。
しかし、水を得る権利は、人権なので、赤字の水道の営業を中止する場合には、人権侵害にならない配慮が必要になります。
つまり、場合によっては、水道に関する法律を書き換える必要があります。
こうした法律の書き換えは、法治主義ではありえません。
しかし、人権と憲法を個別法より優先する法の支配では、法律の書き換えはあるべき姿になります。
マスコミによれば、水道料金を支払わなかったために、水道を停止され
水道とガスが止められたあとで、遺体が見つかった事例があります。生活保護の申請がうまくいかなかった事例です。
国際法学会のエキスパートは、「1日に少なくとも3から5リットルの水を補給しなければ、生きてゆくことができません」といいます。
飲料水に2リットル、これに、炊事を合わせれば、3から5リットルになります。3から5リットルでは、水洗トイレは使えません。
飲料水と水洗トイレが使えなくなれば、生存の危機になります。
水道料金を滞納したから、水道を停止するという行為は、人権の侵害になります。
水道料金を滞納したから、水道を停止するという行為は、
たとえば、1日5リットルの水を得る権利が人権であると仮定します。
水洗トイレの場合には、20リットルは必要ですが、ここでは、国際法学会のエキスパートの数字を使っています。
その場合には、水道料金を支払わなくとも、1日5リットルの水を使えるようにすべきです。
水道料金は、個人あたりではなく、世帯単位の料金体系になっています。
これも、人権を無視しています。
もちろん、ひとり1日5リットルまでの水道料金をただにすれば、財源が必要になります。
そうした場合には、「今後5年間で約5,000億円相当の資金援助」と国内の水道料金の財源の優先順位が問題になります。
トランプ大統領が、日本の首相であれば、「今後5年間で約5,000億円相当の資金援助」を中止して、国内の水道料金の人権部分をただにする財源に使うべきであるというでしょう。
筆者には、国際法学会のエキスパートは、日本には、水を得る権利についての人権問題がないという前提で議論しているように見えます。
5)基礎年金
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物価高への対応策として与野党の一部から消費税の減税を求める声が上がっていることについて、2025年4月8日の総務会後の記者会見自民党の鈴木総務会長は、「やはり、消費税の減税というものは、こういう状況ではありますけれども、実施すべきものではないとそういうふうに思っております。やはり、社会保障を支える重要な財源であるわけであります。一度下げるとですね、元に戻すということも相当な政治的なエネルギーがないとできないということもあわせて考えていかなければならない」といいました。
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消費税減税に自民幹部から否定的な発言相次ぐ 2025/04/08 TBS NEWS
https://news.yahoo.co.jp/articles/d678465930163e9faa79cfcafa75eba1b35f1d94
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「消費税が、社会保障を支える重要な財源である」というエビデンスはありません。
消費税(収入)と社会保障(支出)のバランスのデータは公開されていません。
「消費税が、社会保障を支える重要な財源である」のであれば、年金のマイクロスライド(実質減額)はありえません。なぜなら、年金のマイクロスライド(実質減額)を回避するために、消費税率をあげればよいからです。
基礎年金底上げ案は、つぎの内容です。
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基礎年金は全ての国民が受け取る。底上げ案は就職氷河期世代などが低年金に陥らないようにする対策の一環で、厚生年金の積立金を活用する。その影響で標準的な世帯では厚生年金受給額が2040年度まで最大月7千円減ると見込まれる。
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【独自】基礎年金底上げ案、修正検討 厚生年金の受給総額を調整 2025/04/06 共同
https://news.yahoo.co.jp/articles/2f4cfae95ce2c3891c489282903c65d82c126968
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これは、財産権の侵害になり、民主主義と人権を無視しています。
要するに、政府は、人権を無視した法治主義であって、法の支配を気にしている様子は全くありません。
SDGsの基本は人権ですが、日本政府のSDGsは、環境問題に歪曲化されています。
基軸通貨のドルを基準にすれば、円安によって、所得も年金も、実質は1994年の半分になってしまいました。これだけ大きな構造変化を起こしてしまえば、年金のマイクロスライドや厚生年金の積立金の流用では、問題解決はできません。
因果推論で考えれば、原因は、円安と生産性の低下にあります。結果である社会保障費に手をいれても、問題が解決できません。