バカの壁の反対は、メンタルモデル(世界モデル)の共有です。
話せばわかる(理解できる)という条件は、パラグラフの論理では、データと推論プロセス(トピックセンテンスの説明)の共有が出来ているということを意味します。
話してもわからない場合は、データと推論プロセスの共有ができていないので、どこで躓いているかを点検すれば先に進めます。
段落の論理では、バカの壁があると、先に進みません。
学習において、暗記ではなく、理解できるとは、データと推論プロセスの共有を意味します。
日本の教育は、段落の論理でできています。
つまり、日本の教育には、「理解できる」ための言語(パラグラフの論理)がありませんので、学習とは、暗記を意味することになります。
暗記教育を回避するためには、パラグラフの論理が、必要条件になります。
孔子の「学びて思はざれば則ち罔し。思ひて学ばざれば則ち殆し」には、データと推論の区別がありません。
つまり、パラグラフの論理では、孔子には、歴史的な価値はありますが、説明になっていない(科学的な価値はない)といえます。
孔子を学習することは、段落の論理(共感と暗記)を強化学習していることになります。
推論プロセスは、メンタルモデル(世界モデル)にしたがって作られます。
メンタルモデルの共有ができなければ、推論プロセスの共有はできません。
それでは、AさんとBさんのメンタルモデル(世界モデル)が共有できていることはどのようにして、確認(検証)できるのでしょうか。
メンタルモデル(世界モデル)が共有できている。あるいは、共有できていないことが確認(検証)できる条件は、testable implicationsと呼ばれます。
testable implicationsは、「因果推論の科学」では、「検証可能な合意」と和訳されています。
つまり、話せばわかる(理解できる)、あるいは、話してもわからない(バカの壁ある)という判断は、「検証可能な合意」に対して有効です。
検討対象が、「検証可能な合意」でない場合には、「バカの壁」の有無を論じることすらできません。
疫学のロスマンは、有向非巡回グラフ( DAG、Directed acyclic graph )を使っています。
英語版のウィキペディアの「Directed acyclic graph」には、大変優れた解説があります。
ロスマンの「検証可能な合意」は、有向非巡回グラフの共有を意味します。
パールの「検証可能な合意」は、因果ダイアグラムの共有を意味します。
「因果推論の科学」にも、因果ダイアグラムの説明が出てきます。
「因果推論の科学」には、因果ダイアグラムの実例がのっていますが、体系的な説明はありません。
日本語の文献で、因果ダイアグラムのよい説明を見つけることは困難です。
幸い、英語版のウィキペディアの「因果ダイアグラム(Causal graph)」には、大変優れた解説があります。
筆者は、これを読んで、頭の中が整理できました。
パールは、「因果推論の科学」(原著2018年)の中で、因果推論のできる強いAIについて述べています。
2020年に、Webソースから抽出された1,100万を超える因果関係をコンパイルして因果的な質問への回答と推論をサポートするCauseNetが公開されています。
<
CauseNet: Web から抽出した因果関係グラフに向けて
因果知識は、人工知能を進歩させるための重要な要素の 1 つと見なされています。しかし、これまでのところ因果知識を含む知識ベースはほとんどありません。これは、検証に多大な労力が必要であるためと考えられます。この課題にもかかわらず、私たちは因果概念間の因果関係を主張する大規模な知識ベースである CauseNetをコンパイルしています。さまざまな半構造化および非構造化 Web ソースから抽出することにより、推定抽出精度 83% で 1,100 万を超える因果関係を収集し、初の大規模でオープン ドメインの因果関係グラフを構築しました。このグラフを分析して、Web 上で表現された因果的信念に関する洞察を得て、基本的な因果的質問応答におけるその利点を実証しました。今後の研究では、因果推論、計算による議論、マルチホップ質問応答などにこのグラフを使用する可能性があります。
>
日本の外をみると、因果推論の科学が先に進んでいて、日本が取り残されていることがわかります。