2025年の賃金予測(4)

ジニ係数について書くことは気が重いです。

 

日本のジニ係数のデータは正しいのでしょうか。

 

最初に結論をいうと、正しいかわかりません。

 

ファクトチェックができるデータがありません。

 

政府は、法度体制の無謬主義でできています。

 

政府の発表したデータには、間違いが含まれる可能性があるという前提ではありません。

 

しかし、実際に間違いが見つかった事例があります。

 

それは、マイナンバーカードです。

 

マイナンバーカードと同じレベルの確率で、ジニ係数などの公表データにも、バグが含まれていると考えられます。

 

ベイズ統計では、事前情報がない場合には、50%か、類似の確率を事前情報(初期確率)として検討を始めます。

 

この立場では、政府の情報のエラー率の検討の初期値として、マイナンバーカードのエラー率を使うことは、理にかなっています。

 

同様に考えれば、ジニ係数だけでなく、人口統計、所得統計にも、エラーが含まれている確率は高いと思われます。

 

コメの値段が下がりません。明らかになったことは、政府は、コメの生産、流通、販売量について、信頼のできるデータをもっていないという事実です。

 

政府のコメの統計データには、マイナンバーカードと同じレベルのエラーが含まれているという仮定は十分合理的です。

 

人口、所得のデータに、多くのエラーが含まれている場合には、今までの年金や社会保険料の議論は、間違った数字に基づいている可能性が高いということです。

 

備蓄米を放出しても、米価が下がるかは不明です。その理由は、信頼できるデータがないからです。

 

同様に、信頼の出来る人口データがなければ、少子化政策を考えることはできません。

 

読者は、人口データに間違いがあるはずがないと思うかもしれません。

 

しかし、失われた年金問題を振り返れば、人口の台帳にも、年金の台帳と同じレベルのエラーが含まれている可能性があります。さらに、台帳の存在が不安定な外国人の統計データは、ほとんどあてにならないと思います。納税している外国人は把握できますが、納税していない外国人の人口は、どのような方法で推計しているのでしょうか。

 

英語版のウィキペディアの「ジニ係数」には次のように書かれています。

 

ジニ係数は所得や富の分配の不平等度を表す指標であり、国の富や所得の分配が平等な分配からどの程度逸脱しているかを推定するために使用される。

 

ジニ係数は通常、人口の総所得(y軸)のうち、人口の最下層xが累積的に稼いだ額の割合をプロットしたローレンツ曲線に基づいて数学的に定義されます。

 

ジニ係数の解釈には多くの問題があり、同じ値が多くの異なる分布曲線から生じる可能性がある。これを緩和するために人口構造を考慮する必要がある。高齢化が進む国や出生率が上昇する国では、労働成人の実質所得分布が一定であっても、税引き前のジニ係数が増加する。多くの学者がジニ係数の12種類以上の変種を考案している。

 

 

貧困問題は、人権問題です。

 

問題は、一人あたりになります。

 

統計学でいえば、母集団は、人口であり、サンプルは、人になります。

 

ジニ係数の横軸は、第1に、人口であって世帯ではありません。

 

一方、所得データは、世帯を中心に整理されます。

 

なので、この間の調整(通常は平方根を使う)にも問題があります。

 

平方根調整の根拠は、1人でも2人でも、住宅に必要なトイレ、家具などの設備費用が変わらないことを根拠にしています。

 

一方では、生活用水(水道代)、食費のように、世帯人口の規模を反映する支出もあります。

 

ジニ係数には、問題が多く、「多くの学者がジニ係数の12種類以上の変種を考案」しています。

 

英語版のウィキペディアの「米国の所得格差」には次のように書かれています。

 

米国の所得格差(Income inequality in the United States)

 

米国は、(脱工業化)先進国の中で、所得格差が最も大きい。すべての世帯で測定した場合、米国の所得格差は、税と移転前では他の先進国と同程度であるが、税と移転後では最も高い部類に入る。つまり、米国では高所得世帯から低所得世帯への所得の移転が比較的少ないということである。2016年の平均市場所得は、最下位25%で15,600ドル、最上位25%で280,300ドルであった。不平等の度合いは上位25%内で加速し、上位1%の所得は180万ドルで、中位25%の所得59,300ドルの約30倍であった。

 

不平等の経済的、政治的影響としては、GDP成長の鈍化、所得の流動性の低下、貧困率の上昇、家計債務の利用増加による金融危機リスクの増大、政治的二極化などが挙げられます。不平等の原因としては、平均的な労働者に比べて役員報酬が増加すること、金融化、産業集中の高まり、労働組合組織率の低下、高所得者に対する実効税率の低下、高学歴者に報いる技術変化などが挙げられます。

 

不平等の尺度はデータセットによって大きく異なるため、測定は議論の的となっている。また、測定が現金報酬(市場所得)に基づいて行われるか、税金や移転支払い後の所得に基づいて行われるかなどについても議論されている。ジニ係数は、管轄区域間の比較に適用される広く受け入れられている統計であり、ゼロは完全な平等を示し、1は最大の不平等を示す。さらに、議会予算局(CBO)、内国歳入庁、国勢調査な​​ど、さまざまな公的および民間のデータセットがこれらの所得を測定している。国勢調査局によると、所得格差は2018年に当時の記録的なレベルに達し、ジニ係数は0.485であった。それ以来、国勢調査局は税引き前の現金所得あたり2020年には0.488、2021年には0.494の値を示してきた。

 

アメリカでは、議会予算局(CBO)、内国歳入庁、国勢調査な​​どのいろいろなデータを使って、ジニ係数の計算が行われています。複数のデータと方法をつかった複数のジニ係数が求められ、クロスチェック(ファクトチェック)がかけられています。

 

次のような参考文献があります。

<<

Overview Of The Definition Of Income Used By The Staff Of The Joint Committee On Taxation In Distributional Analyses

https://www.jct.gov/publications/2012/jcx-15-12/

 

Measuring income inequality in the US- methodological issues December 2018 Urban Institute Stephen J. Rose

https://www.urban.org/sites/default/files/publication/99456/measuring_income_inequality_in_the_us_methodological_issues_final.pdf

 

How CBO Adjusts for Survey Underreporting of Transfer Income in Its Distributional Analyses: Working Paper 2018-07 2018

https://www.cbo.gov/publication/54234

>>

 

こうしたクロスチェックをかけるためには、集計結果ではなく、ものとRAWデータを公開する必要があります。

 

失われた年金の台帳では、既に死亡した人にも年金が支払われていました。RAWデータには、そのような異常値が必ず含まれます。こうした異常値を欠測にする場合と近傍のデータで補間する場合があります。この修正方法は、1つには限りません。現在政府が行っている修正方法がベストである保証はありません。

 

今回の検討は、データがないので、ここまでです。

 

しかし、コメの実態データ、失われた年金の台帳エラー、マインナンバーのバクを見るかぎり、政府のデータには、膨大なエラーが含まれている可能性が高いです。少なくとも、第3者機関がデータをチェックするシステムがありませんので法度制度の無謬主義を信じない限り、政府のデータは、あてにならないと言えます。

 

中国では、遼寧省の元党委員会書記であった李克強が2007年に米国大使に「遼寧省GDP成長率など信頼できません。私は省の経済状況をみるために、省内の鉄道貨物輸送量、銀行融資残高、電力消費の推移を見ています」と語ったため、鉄道貨物輸送量25%、銀行融資残高35%、電力消費40%が、李克強指数と言われています。

 

最近の日本政府のインフレ率のデータは、生活実感に合わないという人も増えています。

 

日経平均の株価が日本経済の実態を反映しているとは思えません。

 

政府は、RAWでなく、編集値の賃金データしか公開していないので、ファクトチェックができません。

 

大企業中心の賃金データは、日本の賃金実態を反映していません。

 

小さな企業のデータは、実際には、欠測になっています。統計学では、欠測の補間の修正が必要になりますが、政府はそれを行っていません。

 

たとえば、従業員5人未満の企業の所得は、サンプル調査などによって、欠測の補間をする必要があります。

 

アメリカのジニ係数の文献をみればわかりますが、アメリカでは、アンケ―トによる聞き取りをふくむ複数の方法で賃金を調べて、クロスチェックをかけています。手法により、賃金の値にバラツキがでますが、統計的には、分布形とバラツキの情報がないデータは使えませんので、科学的なアプローチです。

 

日本も、日本の李克強指数を考える必要があるかも知れません。