構造改革とは何だったか(3)

5)増税のメカニズム

 

政府は、日本株式会社グループであると考えることができます。

 

政府は、株式会社ができない黒字にならない(赤字)事業をすべきであると考える人もいます。

 

政府が、利益や効率を追及すべきではないと考える人もいます。

 

日本には、思想信仰の自由がありますので、「政府は、利益や効率を追及すべきではない」と考えることは自由です。

 

筆者も、経済学のメンタルモデルができるまでは、「政府は、利益や効率を追及すべきではない」と考えていました。

 

しかし、この思想は大変危険です。

 

政府の事業の効率が悪ければ、成果をだすためには、より多くの資金を投入する必要があります。

 

これは、増税を意味します。

 

ニュージーランドの大学は、無償です。

 

大学には、入学試験はありませんが、高等学校レベルの学力証明(学力試験の合格)が必要です。

 

大学は8校しかありません。

 

大学は習得主義ですから、学習についていけなければ、卒業できませんので、卒業する自信のない人は、受験しません。

 

大学が8校であれば、大学を無償化しても、税負担の金額には、上限があります。

 

日本の現状は、ニュージーランドとは違います。

 

2024年の市長選挙で27歳にして初当選し、現職の市長として全国最年少の秋田県大館市・石田健佑市長が、自身の学歴について説明しています。

 

慶應義塾大学環境情報学部のAO入試<2018年9月第1学年入学者選考>において、合格になったものの「入学金と半期分の授業料合わせて100万円以上の納入通知」を知って、進学を諦めたと言います。

 

<< 引用文献

学歴詐称」指摘された最年少27歳の市長、高卒を選択した理由を告白 「慶大合格」記載も「なぜ」 2025/03/06 スポニチ

https://news.yahoo.co.jp/articles/cf7e111354bc89a867fdb4406c63b39c1c51e5e4

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大学の授業料が、無償であれば、このようなことはおきません。

 

しかし、日本の大学の数は、非常に多いので、全ての大学を無償にすれば、大きな財政負担が生じます。また、文部科学省は、習得主義ではなく、履修主義です。習得ができていない学生を落第させるのではなく、卒業させることを求めています。

 

卒業証書があれば、スキルを習得したくない学生が溢れています。

 

教育の成果は、スキルの習得ですから、日本の大学では、教育効果を計測していないと言えます。

 

日本の多くの大学は、世界の大学ランキングに出てきません。途上国の大学以下の大学が多数あります。ニュージーランドの8大学はすべてランキング入りしていますので、大きな違いがあります。

 

日本の大学は、教育効果(習得)をめざしていませんから、ランクインすると考えるべきではありません。そもそも、日本の大学は、ランキングのレースに参加していません。

 

政府は、「教育は、能力の習得を追及すべきではない」(習得主義の否定)と考えています。

 

「政府は、利益や効率を追及すべきではない」の教育版です。

 

教育経済学で、効率を考えれば、最小の大学定員で、最も効率的に、スキルを習得することがベストな大学教育です。

 

ベストな大学教育を目指さなければ、税収はいくらあっても足りないので、増税地獄になります。

 

教育の効率性が図られなければ、教育予算は、利害関係者の相談で決まってしまい法の支配が崩壊します。

 

人材が育たないので、経済成長ができませんので、税収が減少します。

 

その結果、増税が繰り返されます。

 

つまり、「政府は、利益や効率を追及すべきではない」と「教育は、能力の習得を追及すべきではない」という考えは、増税地獄は許容できるという主張になります。

 

筆者は、それでは、持続可能ではないので、「政府は、利益や効率を追及すべきである」と「教育は、能力の習得を追及すべきである」と考えます。

 

これは、現状とは異なりますが、現状は持続可能ではないので、こうなると考えます。

 

6)日本株式会社グループ

 

日本株式会社グループは、財務省総務省国土交通省環境省といった企業グループから構成されています。

 

1つの企業グループは、政策事業(公共・非公共を含む事業)という企業を抱えています。

 

事業予算が大きな政策事業(大企業)と事業予算が小さな政策事業(小企業)などがあります。

 

さて、読者が株主であって、日本株式会社グループ企業の株式を購入する計画があるとします。

 

読者は、どの企業の株を購入するでしょうか。

 

実際の株式市場では、取引の中心はアルゴリズム取引です。

 

英語版のウィキペディア資源配分(Resource allocation)には、次のように書かれています。

アルゴリズム

リソースの割り当ては、特定のドメインに適用された コンピュータ プログラムを使用して、申請者にリソースを自動的かつ動的に配布することによって決定できます。

 

株式市場のアルゴリズム取引もこのアイデアを使っています。

 

株式市場のアルゴリズム取引のためには、各企業のデータが必須です。

 

クオンツのマルコス・ロペス・デ・プラド氏は、同じデータでは、同じ売買になる可能性が高いので、同業他社に対して優位になるためには、他社のもってないないデータ、他社より精度の高いデータの入手が必須であると言います。

 

つまり、多くの良いデータがあればあるほど、アルゴリズム取引が成功する可能性は高くなります。

 

東証や日経では、各企業のデータを提供しています。

 

これらのデータなしに、株式の売買をする人はいません。

 

驚くべきことに、日本株式会社グループは、企業(公的事業)は、データを公開していません。

 

日本政府は、効果があるかどうか不確かな半導体企業ラピダスに10兆円規模の公的支援を30年度までに行うことを決めています。

 

歳入には色がついていませんので、国債の一部が、10兆円にまわるでしょう。

 

企業グループでも、企業ごとに、独立採算することが原則です。

 

事業部を分社化する企業もあります。

 

そこで、ラピダス補助事業という企業が、日本株式会社グループにあると考えます。

 

ラピダス補助事業は、社債を発行して資金調達することができます。

 

これは、ラピダス国債を発行すればできます。

 

ラピダス国債が、株式市場で売れれば、ラピダス補助事業は、企業活動をすることができます。

 

ラピダス国債が、株式市場で売れなければ、ラピダス補助事業は、企業活動をすることができません。

 

ラピダス国債を株式市場で売るためには、企業情報、予定配当などを公開する必要があります。

 

予算・税制を作るにあたって、財務省は、他の省庁の事業の予算(費用)を査定しています。

 

これは、日本株式株式会社グループの公的事業(企業)の株式の購入手続きに相当します。

 

公的事業(企業)のリスクとリターンのデータがなければ、株式の購入は出来ません。

 

例えば、A公的事業について、リターン(費用対効果)、GDPの増加効果、税収の増加効果を計算することができます。これらの値の初期値は、机上の値ですが、前向き研究によって、エビデンスを集めれば、次第に、統計的に意味のある数字を揃えることができます。

 

こうしたデータがあれば、事業の費用の査定は、アルゴリズムでできます。

 

EBPM(エビデンスに基づく政策選択)が、欧米では進んでいます。EBPMには、コストがかかるので、全ての公的事業(企業)を対象にすることは難しいかも知れません。

 

とはいえ、ラピダス補助事業のように、10兆円もの税金を投入するのであれば、EBPMは可能です。

 

欧米では、金額の大きな公的事業(企業)では、エビデンスのデータが整備されつつあります。

 

つまり、予算査定をクオンツと同じように、アルゴリズムでできる準備が整いつつあります。

 

データが、不完全な場合には、AI(パターンマッチング)を使って、欠測データの補間をすることも可能です。

 

科学的に考えれば、減税につながる効率的な査定は、アルゴリズム査定であり、現在のデータに基づかない人間による査定は、効果と効率を無視した利権調整になっています。

 

効果と効率を無視すると何が起こるかは、検証するまでもありません。

 

射撃や弓の名人は、的の中心に、弾丸や矢を命中させようとします。

 

弾丸や矢が的の中央より、左にはずれれば、次の試射では、目標を右に少しずらします。データを見ながら、補正作業をするイメージです。

 

政府の予算査定は、データを見ていません。的に弾丸や矢があたったか否かを気にせずに、ひたすら、弾丸や矢を放てばよいといっています。この方法では、資源(財源、弾丸、矢)がいくらあってもたりません。

 

省庁の事業の費用(予算要求書)は、段落の論理でできています。そこには、論理も、データもありません。査定は、利権と共感を元に行われています。

 

新聞に載っている、巷で問題になっていること(共感)が、査定の根拠になっています。

 

これは、パラグラフの論理でみれば、論理的破綻です。

 

しかし、パラグラフの論理は、法度体制を崩壊させるので、タブーになっています。

 

公開される予算法案に、各事業の費用対効果、リスク、リターン、GDP効果、税収増加効果が添付されている状態を想像してみてください。

 

効率の悪い事業は、一目瞭然になります。

 

各段の理由のある事業以外を予算案に掲載することは困難になります。

 

データがなければ、アルゴリズム査定は機能しません。これは、科学はデータに基づくので、正常な状態です。

 

アルゴリズム査定には、データがあれば、AIは不要です。

 

アルゴリズム査定ができると、財務省は解体してしまいます。

 

今後予想される事態は、財務省が、アルゴリズム査定(AI)は使い物にならない、AIの判断にはバイアスがあると主張して、DXとAIをブロックすることです。

 

すでに、こども家庭庁は、AIは使えないとキャンペーンを張っています。

 

<< 引用文献

10億円かけた虐待判定AI、こども家庭庁が導入断念…ミス6割で「実用化困難」 2025/03/03 読売新聞

https://news.yahoo.co.jp/articles/2e93e428378fcb71b80fb0aa5bd1d4b5606fe0d7

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今後は、同様なキャンペーンが、各省庁から、続出すると思われます。

 

これが、筆者が、「高橋 洋一氏の歳入庁の設立」を指示しない理由です。

 

歳入庁が出来ても、法度体制が残れば、問題解決にはなりません。

 

十分なデータがあっても、予算のアルゴリズム査定と、財務省の人間による査定は一致しません。

 

科学の基準でみれば、データを無視している査定(人間)の方が間違いになります。

 

しかし、こども家庭庁の場合と同じように、政府は、財務省の人間による査定が正しく、アルゴリズム査定は間違いであると主張するはずです。

 

なぜなら、アルゴリズム査定は正しく、人間の査定が間違っていることを認めれば、無謬主義(法度体制)が崩壊するからです。

 

それを避けるためには、人間が正しく、AIが間違っているという主張を繰り返すしか、方法がありません。

 

正誤の判別は、2値分類問題であり、混同行列で考える必要があります。

 

しかし、混同行列に持ち込めば、無謬主義が崩壊します。つまり、法度体が崩壊するまでは、ひたすら、科学を無視することがこれから起こります。

 

キーポイントは、段落の論理を拒否して、パラグラフの論理に持ち込むことです。