Society 5.0は永久に来ない(18)

28)ICT教育

 

アメリカの標準的な高校の統計学の学習は、カーンアカデミーで学習可能です。

 

ビデオは英語ですが、字幕がつけられます。統計学には、難しい単語はないので、英語が少しできる中学校以上であれば、利用可能です。

 

日本語対応は、2025年2月時点では、まだ、途上にあります。

 

<< 引用文献

高校の統計(High school statistics)カーンアカデミー

https://www.khanacademy.org/math/probability

>>

 

高校の統計の目次は以下です。

 

ユニット 1: 単一の定量変数の表示

頻度表とドットプロット

(四分位範囲)

ヒストグラム

(箱ひげ図)

データ表示における平均値と中央値

 

ユニット2: 単一の定量的変数の分析

標準偏差

正規分布と経験則)

分布の比較

正規分布の計算)

パーセンタイルとZスコア

 

ユニット 3: 2 元表

2元表の紹介

二元表の分布

 

ユニット 4: 散布図

散布図にトレンドラインを当てはめる

散布図のトレンドラインの分析

残余

 

ユニット5: 研究デザイン

研究計画の概要

(実験デザイン入門)

サンプリングの潜在的な問題

(推論と実験)

サンプリング方法

 

ユニット 6: 確率

ベン図と加法則

(シミュレーションによる確率)

確率の乗算規則

(順列)

(組み合わせ)

組み合わせ論を用いた確率)

条件付き確率

 

ユニット 7: 確率分布と期待値

確率分布の紹介:

(期待値)

理論的および経験的確率分布:

確率に基づく決定

 

カーンアカデミーは、GAISE IIに対応しています。

 

高校の統計のコマ数(時間数)は、多くないので、カリキュラムに何を残して、何を捨てるかは、難しい問題です。

 

しかし、「学習指導要領」の統計とカーンアカデミーの統計を比較すれば、どちらが、Society 5.0に役立つかは、自明であると思います。

 

<< 引用文献

高等学校数学B/確率分布と統計的な推測 wikibooks

https://ja.wikibooks.org/wiki/%E9%AB%98%E7%AD%89%E5%AD%A6%E6%A0%A1%E6%95%B0%E5%AD%A6B/%E7%A2%BA%E7%8E%87%E5%88%86%E5%B8%83%E3%81%A8%E7%B5%B1%E8%A8%88%E7%9A%84%E3%81%AA%E6%8E%A8%E6%B8%AC

>>

 

例えば、「高等学校数学B/確率分布と統計的な推測」の内容は、pハッキングの手法です。

 

英語版のウィキペディアの「データドレッジング(Data_dredging)」には、次のように書かれています。

 

データドレッジング(データスヌーピングまたはpハッキングとも呼ばれる)は、統計的に有意であると提示できるデータ内のパターンを見つけるためにデータ分析を悪用することであり、これにより偽陽性のリスクが大幅に増加し、過小評価されます。これは、データに対して多くの統計テストを実行し、有意な結果が返ってきたものだけを報告することによって行われます。

 

カーンアカデミーの統計学は、この問題点をクリアしています。

 

カーンアカデミーは、世界中の学生が学習することができます。

 

東南アジアの発展途上国の高校生が、カーンアカデミーで統計学を学習し、日本の高校生が、「学習指導要領」の統計学を学習したと仮定します。

 

どちらが、Society 5.0を支える人材になれるかは、カーンアカデミーの圧勝です。

 

つまり、「学習指導要領」のカリキュラムでは、日本には、「Society 5.0は永久に来ません」。

 

カーンアカデミーは、ボランティアです。プロが、ボランティアに勝てないのであれば、プロを廃業すべきです。

 

もし、トランプ氏が、日本の首相であったなら、「You're fired!」といって、文部科学省中教審を解体するでしょう。

 

29)科学技術基本法

 

Society 5.0の検討は、「科学技術基本法」から始まりました。

 

最後に、「科学技術基本法」に戻ります。

 

「学習指導要領」は、法度体制を維持するための規制になっています。

 

これから考えると、「科学技術基本法」は、法度体制を維持するための利権確保(予算分配のガイドライン)になっていると考えられます。

 

科学技術基本法」は、1995年に施行されました。

 

1995年以前には、「科学技術基本法」はありませんでしたが、1995年以前の日本の科学技術の競争力は低くありませんでした。

 

図1は、「科学技術指標2023」を基に、筆者が加工・作成したTop10%論文のシェアです。

 

 

 

図1 全分野 Top10%補正論文数シェア

 

  (出典)文部科学省 科学技術・学術政策研究所、「科学技術指標2023」を基に、筆者が加工・作成。

https://www.nistep.go.jp/sti_indicator/2023/RM328_table.html



図は、10%以下を拡大表示していますので、アメリカの線は表示されていません。

 

相関は、因果ではありませんので、「科学技術基本法」が、Top10%論文のシェアが下がった原因であるといえません。

 

しかし、「科学技術基本法」が出来てから、Top10%論文のシェアがあがったというファクトはありません。

 

科学技術基本法」を含む科学技術政策に問題があった可能性があります。

 

科学者であれば、問題があれば、少なくとも、何を変える必要があるかを検討します。

 

科学技術基本法」は、科学技術立国を目指しています。

 

これは、例えば、次の因果関係を期待していることになります。

 

科学技術基本法」(原因)=>基本法に基づく施策と予算配分(結果)

 

基本法に基づく施策と予算配分(原因)=>研究者の増加と水準の向上(結果)

 

研究者の増加と水準の向上(原因)=>Top10%論文のシェアの増加(結果)

 

Top10%論文のシェアをみると、「科学技術基本法」が、うまく機能していないように見えます。これは、上記のプロセスのどこかに問題がある可能性を示唆しています。

 

中国と韓国は、シェアを伸ばしています。

 

中国のシェアは、2000年の2.0%が、2020年の28.9%(1445%)に上がっています。

 

韓国のシェアは、2000年の1.1%が、2020年の2.2%(200%)に増えています。

 

英国、ドイツ、フランスは、シェアを下げています。

 

英国は、1982年以降継続してシェアを下げています。

 

日本のシェアは、2000年の6%が、2020年の2%(33%)に下がっています。

 

同時期の英国をみると、2000年の8.2%が、2020年の4.7%(57%)に下がっています。

 

同時期のドイツをみると、2000年の6.8%が、2020年の3.8%(56%)に下がっています。

 

同時期の英国をみると、2000年の4.9%が、2020年の2.2%(45%)に下がっています。

 

明らかに、日本の低下率が突出しています。

 

2020年の韓国のシェアは、日本と同じレベルですが、韓国の人口は、日本の人口の半部なので、人口当たりのパフォーマンスは高くなります。

 

そこで、2020年のTop10%論文のシェアを人口1億人当たり(PCP)に補正してみました。

 

表1 2020年の人口1億人当たり(PCP)のTop10%論文のシェア

 

年       日本  米国   ドイツ フランス 英国      中国    韓国

2020   2.0     19.2       3.8             2.2       4.7       28.9     2.2 

人口 1265   3391      836            658      672    14254    518

PCP     1.6      5.7      4.6             3.4        7.0          2.0     4.2 

 

注 人口は、10万人単位 PCPは人口1億人当たりのシェア

 

日本の論文生産効率は最悪です。

 

驚くべきことに、日本の人口1億人当たりTop10%論文のシェアは、中国の以下の値になっています。

 

これは、日本の技術者教育の平均水準が中国の平均水準以下である可能性を示唆しています。

 

英国は、シェアを落としていますが、図1にはないAI分野に限定すれば、英国は高い水準にあります。

 

また、英国、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドシンガポール英語圏では、大学の教員のポストは、同じひとつの高度人材の労働市場にあります。

 

こうした場合には、国単位の解析は有効ではありません。

 

人口統計には、出生数には、0歳人口が20歳になるまでの20年のタイムラグが存在します。

 

教育と人材育成にも、10年程度のタイムラグがあります。

 

Top10%論文のシェアを上げるために、教育を改善して、人材を育成する必要があります。

 

仮に、2025年に、教育を改善しても、10年程度は現在のトレンドが続きます。

 

例外は、技術者の水平移動です。

 

シンガポールのように、英語圏の高度人材の労働市場に組み込まれていれば、2、3年で、技術者をそろえることが可能になります。

 

Top10%論文のシェアは、技術力の指標のひとつであって、適切な指標ではない可能性があります。

 

例えば、経済成長を考えれば、AIなどの情報科学にウェイトを置くべきかも知れません。

 

しかし、そうした部分修正を、全体としての論理構成は、異なった範疇の問題です。

 

戦略をたてるためには、全体としての論理構成ができれば、あとのブラッシュアップは、人海戦術でも可能です。

 

筆者は、この分析を2時間程度で行っています。

 

この分析は、画家で言えば、日曜画家の水準にも達していない素人の分析であり、間違いも多くあると思います。

 

トレンドは、因果ではありませんので、トレンド分析は、科学ではありません。

 

ただし、例外として、時定数が大きな場合には、その時定数の範囲で、トレンド予測に妥当性があります。

 

経済をつくるドライビングフォースは、人材です。

 

Top10%論文のシェアはベストではありませんが、日本の技術レベルの代替指標です。

 

この代替指標は、2000年以降、日本の技術力が低下したことを示しています。

 

図1をみれば、2008年以降中国は、アメリカを除く、EUの先進国の技術レベルを超えています。また、その増加速度は大きいです。

 

Top10%論文のシェアは、アカデミックな技術のレベル(アイデアレベル)の評価です。

 

イデアが実装されるまでには、タイムラグがあります。

 

イデアを実装する企業を作って、黒字になって軌道に乗るまでには、少なくとも、5年前後のタイムラグがあります。

 

つまり、Top10%論文のシェアは、産業競争力の先行指数になります。

 

2005年の日本のシェアは、5.1%で、中国のシェアは5.0%でした。

 

2006年の日本のシェアは、4.8%で、中国のシェアは5.8%でした。

 

これから、2005年に、中国は、日本の技術に追いつています。その後は、差が拡大しています。

 

Wen-Yee Lee氏は、ロイターの記事で、次のように言っています。

 

台湾の力晶科技(パワーチップ・テクノロジー)が中国東部の合肥市と新たなファウンドリー(半導体製造受託)合弁設立契約を結んだ2015年、同社は有望な中国市場へのアクセス向上を期待していた。しかし9年後、その中国ファウンドリー企業である晶合集成(ネクスチップ)は、レガシーチップ(旧世代半導体)分野で最大のライバルの一つとなってしまった。

 

台湾半導体企業の幹部によると、先端半導体技術の追求を米国に阻まれた中国ファウンドリー企業は近年、レガシーチップに注力、政府からの強力な資金援助と低利益率を武器に台湾の競合企業に価格面で優位に立っている。

 

トレンドフォースによると、2024年のレガシーチップ生産能力における世界シェアは中国が34%、台湾が43%。27年には中国が台湾を上回ると予測されている。

SEMIによると、23─25年生産開始の新しい工場97カ所のうち57カ所は中国にある。

<< 引文献

アングル:台湾レガシー半導体業界、中国にシェア奪われ戦略転換が不可避 2025/02/10 ロイター Wen-Yee Lee

https://jp.reuters.com/economy/STXP3OG5EZKQBAU7T4723LCRTY-2025-02-10/

>>

 

これを見ると、「中国製造2025」の効果は大きく、中国の半導体技術は、2020年頃に、台湾を追い越しています。

 

にほんが中国に技術で負けたのは、台湾のケースより少し前です。

 

日本の家電産業は、2010年以降、中国の家電産業との競争に敗れ、貿易黒字が生めなくなりました。

 

日本の家電産業が、中国の家電産業との競争に敗れた原因が、技術力にあったという仮説には説得力があります。

 

日本が、技術力のある高度人材の育成に失敗したことが原因で、日本経済が停滞した(結果)という仮説を立てることができます。

 

この仮説は、因果推論のエビデンスレベルではありませんが、相関係数のファクトレベルでは検証されています。

 

政府と日銀の金融緩和をすれば、経済成長するという仮説は、相関係数のファクトレベルで否定されています。

 

政府と日銀の主張を因果モデルで書けば次になります。

 

金融緩和(原因)=>経済成長(結果) :金融仮説

 

日本が、技術力のある高度人材の育成に失敗したことが原因で、日本経済が停滞した(結果)という仮説は次に要約できます。

 

国際的技術優位(原因)=>経済成長(結果)   :科学技術仮説

 

政府は、科学技術立国といっていますが、実際には、科学技術仮説を却下して、金融仮説を採択しています。

 

政府の文書は、段落の表現であって、パラグラフの表現ではないので、論理的な矛盾は検討されませんし、検討不可能です。

 

「学習指導要領」は、法度体制を維持するための規制になっています。

 

「学習指導要領」は、図1の「全分野 Top10%補正論文数シェア」のような技術力の低下を無視しています。

 

「学習指導要領」は、図1をみれば、間違いがあるか、効果が小さいことがわかります。少なくとも、中国と比べてもパフォーマンスが悪いのは、放置できません。しかし、政府は、法度体制の無謬主義なので、間違いを認めて、政策を改善することはありません。

 

アメリカには、「学習指導要領」はありませんので、民間の活動があれば、「学習指導要領」は不要です。一般に、「民間の活動があれば」は、「その国が先進国であれば」に置き換え可能です。日本が、先進国になった時点で、「学習指導要領」を廃止しても問題はありませんでした。

 

もしも、読者が、「学習指導要領」がないと困ると感じるようであれば、読者は、法度体制のミームに洗脳されていると言えます。「学習指導要領」がないと困ると感じることは、「上位者からの指示がないと不安になる」ことを意味します。これは、隷属しないと不安になるという心理です。

 

法度体制の下で、「学習指導要領」が、読者の意見より正しいと考える原因は、「学習指導要領」は、お上(政府、上位者)が作ったという根拠に基づきます。法度体制を認めなければ、「学習指導要領」が正しいという根拠はありません。法度体制を認めなければ、「学習指導要領」が正しいかは、中身次第になります。

 

そこで、<「学習指導要領」が正しいかをチェックすればよい>ことになります。

 

しかし、ここに落とし穴があります。

 

「学習指導要領」は、パラダイムの表現ではなく、段落の表現になっています。

 

つまり、「学習指導要領」は、論理構造がないので、正しいかチェックできません。

 

全ての文章を、パラダイムの表現にしなければ、つまり、科学的な論理のリラシーのない人を排除しないと、法度体制から抜けだすことは困難です。

 

科学的な論理のリテラシーのない人には、リテラシー教育を受けてもらう必要があります。