法の支配(2)

6)法の支配

 

筆者は、日本語版のウィキペディアをあまり信頼していません。

 

利害関係者が、都合の悪い記述を削除している場合が多いのです。

 

英語版のウィキペディアの「法の支配」には、次のように書かれています。

法の支配(Rule_of_law)とは、国、州、コミュニティ内のすべての人々と機関が、立法者、政府職員、裁判官を含め、同じ法律に責任を負うという政治的および法的理想です。 これは単に「誰も法の上にはない」または「すべての人は法の前に平等である」と表現されることもあります。ブリタニカ百科事典によると、法の支配は「法の下のすべての市民の平等をサポートし、恣意的でない政府形態を確保し、より一般的には権力の恣意的な使用を防ぐメカニズム、プロセス、機関、慣行、または規範」と定義されています。

 

(中略)

 

法理論と法哲学

 

オックスフォード英語辞典では法の支配を次のように定義している。

 

社会における法律の権威と影響力。特に、個人や組織の行動に対する制約として見られる場合。(したがって) 社会のすべての構成員 (政府関係者を含む) は、公開された法典とプロセスに平等に従うとみなされる原則。

 

政治家、裁判官、学者によって広く使用されているにもかかわらず、法の支配は「極めて捉えどころのない概念」と評価されてきた。現代の法理論では、法の支配には少なくとも2つの主要な概念がある。形式主義的または「薄い」定義と、実質的または「厚い」定義である。法の支配の形式主義的定義は、法自体の正当性について判断を下すのではなく、法の支配に準拠するために法的枠組みが備えていなければならない特定の手続き上の属性を定義する。法の支配の実質的概念はこれを超えており、法の支配に基づく、または法の支配から派生したと言われる特定の実質的権利を含む。時には、3番目の「機能的」概念に遭遇することもある。

 

法の支配という用語の機能的解釈は、法の支配と人の支配を対比させる。機能的見解によれば、政府職員が大きな裁量権を持つ社会は「法の支配」の度合いが低く、政府職員がほとんど裁量権を持たない社会は「法の支配」の度合いが高い

 

つまり、<政府職員が大きな裁量権を持つ社会は「法の支配」の度合いが低い>ので、日本には、「法の支配」はありません。

 

天下りを受け入れる企業は、裁量権を期待しています。

 

政府は、形式的に天下りの禁止を主張していますが、問題は、天下りではなく、「法の支配」の欠如です。

許認可行政は、「すべての人は法の前に平等である」という「法の支配」の欠如です。

 

日本には、「法の支配」はありません。

 

日本には、「法の支配」がなく、裁量権で動いているので、それが当然であるという認知バイアスが生じます。

 

ポンコツ学者が、帰納法をつかって、過去のデータから得られた仮説をあたかも科学のように主張します。

 

しかし、帰納法による研究は、裁量権のあるデータを追認しますので、「法の支配」を追放してしまいます。

 

因果推論の科学でいえば、<政府職員がほとんど裁量権を持たない社会は「法の支配」の度合いが高い>という反事実を取り扱えない手法では、問題解決はできません。

 

帰納法は、必然的に現状維持の研究になります。

 

7)DOGE

 

アメリカのDOGEでは、過去にソーシャルメディアに投稿した白人優越主義発言など人種差別的行動が明らかになって解雇された人も働いています。

 

政府職員が大きな裁量権を持つ社会(「法の支配」の度合いが低い社会)の常識では、人種差別的行動をした人物は危険人物になります。

 

しかし、<「法の支配」が、機能して政府職員がほとんど裁量権を持たない社会>では、人種差別的偏見によって、政策に変化は起こりません。

 

アメリカの最高裁の判事は、共和党よりの人と民主党よりの人に分かれます。これは、最高裁の判決には、支持政党による裁量権があると考えられていることを示します。とはいえ、党派は2つですから、裁量権による判決のブレがどこにあるかが、常にチェックされています。

 

DOGEは、各省庁のデータにアクセスしています。DOGEの目的は、データをもとに、効率指標を作成することです。指標の作成は、プログラムが自動的に行います。そのためにDOGEには、プログラマーが投入されています。

 

この方法では、仮に、プログラマーに人種差別的な偏見があっても、それを、裁量権として反映させることは不可能です。データは、変えられません。プログラムは、バグとりのテストをします。プログラムは、チームで開発しますので、人種的偏見などのバイアスに伴うバグのテストをすれば、プログラムに人種的偏見が入り込むことはありません。

 

「法の支配」がなく、裁量権で動いている日本人は、DOGEに裁量権がないので、DOGEは、機能しないだろうといいます。

 

「法の支配」が、機能している場合には、裁量権はありませんので、この点は問題になりません。



DOGEが、効率性指標の作成に成功すれば、どの省庁も、その指標を無視することはできません。

 

DOGEのような第3者機関が機能するためには、「法の支配」が機能して政府職員がほとんど裁量権を持たない社会である必要があります。

 

日本の野党は、政府の職員にヒアリングをして、無駄を省くといっています。しかし、ヒアリングでは、不都合なデータは出てきません。

 

日本では、「法の支配」が機能しないので、政府職員がデータにもとづかず裁量権で政策を決定している場合(法治主義)が多いです。この場合には、ヒアリングをしても、データがないので、効率評価はできません。そもそも、データ(ファクト)に基づく政策をしていません。

 

政策単位の個別の面談では、マンパワーがかかりすぎます。

 

DOGEは、政府職員に、ヒアリングをしていますが、その内容は、データの所在と政策決定のアルゴリズムであると思われます。

 

DOGEの活動の理解には、データサイエンスと「法の支配」のメンタルモデルが必要になります。

 

8)身分制度

 

「法の支配」は単に「誰も法の上にはない」または「すべての人は法の前に平等である」と表現されることもあります。

 

つまり、「法の支配」に対立する概念(反対語)は、身分制度です。

 

徳川政権が作った法度体制は、身分制度です。

 

水林章氏は、法度体制が、現在も日本社会を規定していると言います。

 

森永卓郎氏と深田萌絵氏は、「身分社会」のまえがきとあとがきで次のように書いています。

 

「小泉構造改革以降、急速に進んだ格差拡大の背景には、身分によって処遇が大きく異なる理不尽な仕組みがある。もちろん、私は「結果の平等」を求めたことは一度もない。二倍稼いだ人は、二倍の報酬を受け取るべきだと思っている。私が許せないのは、同じ仕事をしているのに処遇が異なることだ。(略) 身分社会のなかでは、階級の壁を超えることは、容易ではない。だから、深田さんや私の経験は、世間から見たら非常に珍しいケースだと言えるだろう。しかし、だからこそ、二人の経験を重ね合わせることで、これまで表に出てくることが少なかった身分社会の実態が浮かび上がってくるだろう。読者のみなさんには、ぜひ本書を通じてその実態を把握して、自らのキャリア設計を見直すきっかけにして欲しいのと、日本の理不尽な社会を見直すための第一歩を踏み出して欲しいと心から願っている。」 (〈森永卓郎 はじめに〉 より)



「大人になり、社会へ一歩足を踏み出した私が見たのは、低賃金、社会保障もロクに整備されていない世界だった。仕事が少ない奈良市民の多くは生駒山を越えて大阪へ出稼ぎに行く。低賃金脱却を目指し非正規から非正規へ職を転々としたが時給は千円に満たず、現代版『あゝ野麦峠』の女工だと自嘲したこともあった。森永卓郎さんの著書に出会い、非正規雇用、低年収が既に社会問題だと知り、それを政治的に解決するよう求める言論活動を始めようと思い、早稲田大学政治経済学部に入った。(略) いまの夢は「新しい時代」をつくること。

 非正規雇用問題、低所得問題を政治的に解決するために、良い日本で生きていくために、まだ出会ったことのない皆さんと共に世論を形成し、政治を変えていきたいと願っている。」(〈深田萌絵 おわりに〉 より)

<< 引用文献

身分社会  2024/10/15 森永卓郎 (著), 深田萌絵 (著)

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日本は、身分制度社会でしょうか。

 

法度体制があるので、身分制度である可能性が高いです。

 

9)ディープステート

 

英語版のウィキペディアの「米国のディープステート陰謀論(Deep state conspiracy theory in the United States)」には、次のように書かれています。

アメリカ合衆国のディープステート陰謀論は、連邦政府(特にFBIとCIA )のメンバーによる秘密ネットワークであるディープステートの存在を仮定する、誤ったアメリカの政治陰謀論である。この理論は、選出されたアメリカ合衆国政府と並んで、あるいは政府内で権力を行使する、高レベルの金融および産業団体の指導部内に協力者のネットワークが存在すると主張している。

 

この理論はドナルド・トランプ大統領の下で主流の認識に達した。トランプ大統領は「ディープステート」が彼と彼の政権の政策に反対していると誤って主張している。

 

誤りであることが証明されているにもかかわらず、2017年と2018年に行われた世論調査では、アメリカ人の約半数が米国にディープステートが存在すると信じていることが示唆されています。

 

USAIDの大きな部分は、NEDで、これは、以前は、CIAの担当業務でしたので、トランプ大統領は、マジで、ディープステート対策をしています。

 

法度体制の制度は、ミームですが、法度体制のルールで活動している人は、「法の支配」を追放して、「身分社会」の維持に邁進しています。

 

こう考えると、日本にも、ディープステートがあると主張する人が出て来る可能性があります。