トランプ関税の理解(2)

アメリカの作文教育では、パラグラフの表現を身につけます。

 

パラグラフには、トピックセンテンス、トピックセンテンスの説明、背景のデータが含まれます。パラグラフとは、「主張」、「説明」、「背景のデータ」を含んだ構造体です。

 

採点のしやすさから、トピックセンテンスを段落の最初に持ってくることが推奨されていますが、これは、パラグラフの必要条件ではありません。

 

日本の作文教育では、段落の表現を身につけます。

 

段落の表現には、構造と理解可能な主張はありません。

 

アメリカの基準では、段落の表現は、作文教育ではありません。

 

段落の表現の制約条件は、文章のまとまりという形式だけがあります。

 

段落の表現では、共感できることが、良い段落になります。

 

問題は、この先です。

 

アメリカ人は、日本人の段落をパラグラフとして、理解します。

 

逆に、日本人は、アメリカ人のパラグラフの表現を、段落として、理解します。

 

アメリカのトランプ大統領は2月10日、アメリカに輸入される鉄鋼製品とアルミニウムに25%の関税を課すと正式に表明しました。

 

時事通信は、次のように伝えています。

【キャンベラ時事】オーストラリアのアルバニージー首相は11日、トランプ米大統領と電話会談し、鉄鋼・アルミニウムの追加関税の対象から豪州を除外するよう求めた。

 

 トランプ氏は対豪貿易で大幅な黒字を確保していることを理由に「大いに検討している」と伝えた。

 

 豪州は第1次トランプ政権でも鉄鋼・アルミの関税を免除されていた。アルバニージー氏は会談後の記者会見で、米国との協議について「建設的に対応していく」と強調した。米国の輸入に占める豪製品の割合は、鉄鋼が1%、アルミが2%。 

<< 引用文献

豪州の関税除外「検討」 トランプ米大統領、電話会談で伝達 2025/02/11 時事通信

https://news.yahoo.co.jp/articles/af784b2e15fbbe478b834759e4d9c9ea05cba11a

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アルバニージー氏の主張をパラグラフの表現で整理してみます。

 

トピックセンテンス

「鉄鋼・アルミニウムの追加関税の対象から豪州を除外すべきべき」

トピックセンテンスの説明

米国の輸入に占める豪製品の割合は低い。対豪貿易で大幅な黒字を確保している。

データ

鉄鋼が1%、アルミが2%。黒字額**ドル

 

日本の対応を引用します。

 

アメリカのトランプ大統領が、アメリカに輸入される鉄鋼製品とアルミニウムに25%の関税を課すと表明したことに対し林官房長官は日本時間の12日、措置の対象から日本を除外するよう外交ルートで申し入れたことを明らかにしました。

 

武藤経済産業大臣は、閣議のあとの記者会見で、12日、アメリカ政府に対し、この関税措置の対象から日本を除外するよう申し入れたことを明らかにしました。

 

その上で「広範な貿易制限措置は、WTOルールに基づく多角的貿易体制全体や世界経済に大きな影響を及ぼしかねない」と述べ、日本企業への影響を精査し、必要な対応をとっていく考えを示しました。

 

国会では、参議院本会議で、石破総理大臣が、先週のアメリカのトランプ大統領との初めての首脳会談について報告し、それに対する各党の質疑が行われました。

 

一方、石破総理大臣は、トランプ大統領が、アメリカに輸入される鉄鋼製品とアルミニウムに25%の関税を課すと表明したことについて「首脳会談の時点では議論はなかったが、措置の内容やわが国への影響を十分に精査しつつ措置の対象からの除外を働きかけるなど、必要な対応を行っていく」と説明しました。

<< 引用文献

米政府に鉄鋼製品とアルミニウムの関税措置除外を申し入れ 2025/02/12 NHK

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250212/k10014719631000.html

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段落の表現である日本政府の要請を、パラグラフの表現に読み替えてみます。

 

時事通信は、1月に、米ボストンコンサルティンググループの試算を紹介しています。

ボストンコンサルティンググループは、トランプ氏が目指す中国に60%、メキシコ・カナダに25%、その他の国に一律20%の関税を適用した場合、輸入費用増は中国からが2107億ドル(約33兆円)、日本からは237億ドル(約4兆円)と試算。

<<引用文献

対米投資、高まる警戒 トランプ関税、エネ政策転換―日本企業、成長へ暗中模索 2025/01/22 時事通信

https://www.jiji.com/jc/article?k=2025012101161&g=eco

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Jetroの「2023年の国・地域別財貿易(国際収支ベース、季節調整済み)(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)」から、2023年のアメリカの対日貿易を抜きだすといかになります。

輸出               輸入                           貿易収支

           金額 前年比   金額           前年比   金額           前年との差

日本 77,219 △ 5.3   148,722 △ 0.4   △ 71,503 △ 3,757

<< 引用文献

2023年米国の貿易赤字は7,798億ドル、2009年に次ぐ縮小幅 2024/04/26 Jetro

https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2024/1643b446b08ecf10.html

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148,7億ドルに20%をかけると297億ドルになります。

 

ボストンコンサルティングとは、扱っている年次がことなるので、数字は、一致しませんが、ロジックはこれでよいと思われます。

 

ニッセイ基礎研究所のレポートによると、米国の貿易赤字に占める各国の割合は、以下です。

 

中国 26.2%

メキシコ 15.2%

ベトナム 9.8%

ドイツ 7.8%

カナダ 6.8%

日本  6.8%

 

メキシコの割合が高いですが、日本の自動車企業は、メキシコに工場があり、対米輸出をしています。

 

メキシコに工場のある日本の自動車企業

 

企業名 生産台数(万) 対米輸出(%)

トヨタ 25.0      91.2

日産  61.5      43.6

マツダ 20.2      54.0

ホンダ 16.7      83.1

 

<< 引用文献

日米貿易交渉の課題-第一次トランプ政権時代の教訓 2025/02/07 ニッセイ基礎研究所 矢嶋 康次

https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=81044?site=nli

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さて、アルバニージー氏と同じパラグラフの表現で主張するには、次の内容が必要です。

 

トピックセンテンス

「鉄鋼・アルミニウムの追加関税の対象からを日本を除外すべきべき」

トピックセンテンスの説明

米国の輸入に占める豪製品の割合は低い。

データ

鉄鋼が**%、アルミが**%。赤字額**ドル。

 

このデータの数字が大きければ、 トピックセンテンスは成り立たなくなります。

 

「鉄鋼・アルミニウム」は、第1弾なので、今後、範囲が広がって、ボストンコンサルティンググループの試算の237億ドル(約4兆円)になったと仮定します。

 

その場合には、アメリカのGDPは4兆円増ることになります。

 

トランプ大統領は、財政赤字を減らす目的で、公務員の規模縮小(歳出の削減)を行っています。関税化によって、GDPが増えれば、税収が増えます。これも、財政赤字の縮小に寄与します。

 

以上のように、戦術(短期的な政策)としての関税化は、短期的には、アメリカにプラスになります。

 

日本政府が、「関税措置の対象から日本を除外するよう申し入れ」ても、アメリカには、「関税措置の対象から日本を除外する」メリットはありません。アメリカ政府が、有権者に説明できない政策をとることはありません。

 

日本政府が、パラグラフの表現で、実は、「関税措置の対象から日本を除外すればこれだけ経済にプラスになる」というデータを付ければ、アメリカ政府は、日本政府の提案を検討します。しかし、データなしの段落の表現では、根拠が全く理解できない主張として、無視されるはずです。

 

トランプ関税は、237億ドル(約4兆円)を取り戻すところまで、拡大すると思われます。

 

これは、戦術なので、この関税が継続する訳ではありませんが、トランプ大統領は、日本政府の要請に応じることはありません。その理由は、日本政府の要請に応じることが不合理な政策になるからです。