プロセスの発見(5)

5-1)進化のプロセスと自由意思

 

自由意思の問題は、日本では、ほとんど議論されませんが、重要です。

 

自由意思の問題は、バイナリーバイアスのある表現では、「自由意思があるか」という問いになります。バイナリーバイアスを除けば、自由意思の範囲の特定問題になります。

 

5-2)エネルギー問題

 

エネルギー問題は、重要です。

 

エネルギー問題を解決するためにいろいろな試みが「自由意思」で行われています。

 

「自由意思」で努力しても、永久機関を作ることはできません。

 

つまり、「自由意思の範囲」が存在します。

 

永久機関のように、分かりやすくはありませんが、永久機関以外にも、「自由意思の範囲」が存在すると思われます。

 

この場合、自由意思の範囲は、時間的空間的に変化する確率密度関数になります。

 

たとえば、CO2の量を削減する場合、時間が短ければ、削減できる範囲は、小さくなります。

 

技術レベルが高ければ、削減できる範囲は、大きくなります。

 

こうした「自由意思の範囲」を無視すれば、失敗します。

 

5-3)大躍進の事例

 

毛沢東は、「自由意思の範囲」を無視して、意思があれば、農業生産の拡大が可能であると主張して、大躍進を進めました。

 

その結果、農業生産が急激に落ち込み、飢餓が発生しました。

 

「自由意思」の問題は、「自由意思の範囲」を逸脱して、自由意思を発揮できないという問題ではありません。

 

「自由意思の範囲」を逸脱して、「自由意思」を発揮することはできます。それは、一見する人間には、制約のない「自由意思」があるように見えます。しかし、そのアプローチは、破綻して、持続可能ではなくなります。

 

これは、永久機関はつくれませんが、永久機関を試作するという自由意識を禁止できないことに対応します。

 

5-4)進化の法則

 

進化とは自然選択のプロセスを指します。

 

自然選択のプロセスによって、エコシステムが変化します。

 

進化とはエコシステムを固定化することはできないという法則です。

 

自然選択のプロセスによって、種は変化し、多くは絶滅します。

 

どの種が生き残るかを、事前に予測することは困難です。

 

一方、あるエリア(コントロールボリューム)に、エネルギーが投入されていれば、生物がいなくなることはありません。

 

希少種の保存は、エコシステムの固定化につながります。

 

希少種の保存という「自由意思」は、「自然選択のプロセスによるエコシステムの変化」という「自由意思の範囲」を逸脱していると思われます。

 

簡単に言えば、希少種の保存によって、種の絶滅の変化速度を軽減することはできますが、絶滅を回避することはできないことになります。

 

5-5)企業のエコシステム

 

企業も、市場による選択プロセスを受けますので、エコシステムが変化します。

 

企業のエコシステムを固定化するという「自由意思」は、「自由意思の範囲」を逸脱しています。

 

企業のエコシステムを固定化するという「自由意思」には、年功型雇用、解雇規制などが含まれます。

 

大躍進の場合と同じように、企業のエコシステムの固定化は、短期的には、成功したように見えます。

 

しかし、企業は、市場による選択を避けることができませんので、解雇がある確率で起きます。

 

年功型雇用では、企業の枠を越えたスキル(科学的なスキル)が習得できませんので、転職が困難を極めます。

 

企業のエコシステムを固定化すれば、DXは進まず、生産性はあがりません。GDPは成長しません。



門間⼀夫⽒の説明の一部を筆者なりに、要約してみます。

株価は代表的な日本企業の価値を表すものであり、中小企業や家計も含めた日本経済の縮図ではない。

 

代表的な日本企業は過去20年ほど海外展開を強化し、日本経済が成長しなくても利益の成長を実現できる体質に変わった。成長しない日本から自らを切り離して、日本企業は成長するようになったので、株価の長期上昇トレンドは変わらない。

 

一方、日本経済は、停滞トレンドにある。

 

魅力的なビジネスの「場」(ビジネスのエコシステム、筆者注)提供されれば、日本企業の行動が内向きになる。

<< 引用文献

コラム︓円安が暗⽰する「失われた40年」=門間⼀夫⽒ 2024/12/07 ロイター

https://jp.reuters.com/opinion/forex-forum/IHVICSSQ5RIINAEFGNE5RD4GKM-2024-12-03/

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日本政府は、「自由意思の範囲」を逸脱した、企業のエコシステムを固定化する「自由意思」を発揮したつけを払っていると考えられます。

 

一方、現在の政府の政策は、自然選択の一種である市場による選択プロセスを無視して、企業やビジネスのエコシステムの固定化に走っています。

 

政治には、利権はつきものです。アメリカ政治にも、大きな利権があります。



しかし、利権と既得利権は別ものです。後者は、エコシステムを固定化させ、進化のプロセスを停止させますので、「自由意思の範囲」を逸脱しています。