プロセスの発見(2)

2-1)プロセスとコンピュータ

 

線形の連立1次方程式は、代入法か、掃き出し法で解くことができます。

 

数学の学習では、このプロセスを習得します。

 

掃き出し法は簡単に、プログラムで書くことができます。

 

連立1次方程式を、掃き出し法で解く場合、人間が計算で解いても、コンピュータのプログラムを使って解いても、違いはありません。

 

これは、計算をするときに、人間がソロバンを使って解いても、電卓を使って解いても答えに差がないことと同じです。

 

答え(ファクト)に差がない理由は、プロセスに差がないためです。

 

科学の基本は、入力が同じで、プロセスが同じであれば、結果に再現性があるというものです。

 

科学の基本は、因果モデルです。因果モデルはプロセスになります。

 

入力(原因)と因果モデル(プロセス)が同一であれば、同じ出力(結果)が得られることで、科学が成り立っています。

 

基本的に、「連立1次方程式を、掃き出し法で解く場合、人間が計算で解いても、コンピュータのプログラムを使って解いても、違いはない」のですが、ここにリマークがつきます。

 

それは、どちらが間違いが多いかという差が生じることがあるという点です。コンピュータも完全ではないので、停電があったり、半導体が壊れると、プロセスが正しく行われなくなり、正しい結果が得られません。しかし、一般には、その確率よりも、人間が計算間違いをする確率の方が高いです。

このため、コンピュータができる計算を、人間がすることは推奨されません。

 

2-2)機械学習の出現

 

前世代のAIでは、プロセスを人間が作っていました。

 

これは、連立1次方程式の掃き出し法を人間がプログラムに書くのと同じ方法です。

 

この方法は、プロセスをプログラムに書く手間が膨大であったことと、プロセスの変化に対応できないために行き詰ります。

 

連立1次方程式の掃き出し法のプログラムは1度作れば、永久に使えます。

 

しかし、賞味期限のあるプロセスもあります。

 

電話は、固定電話から、ガラケースマホと変化してきました。

 

固定電話の時代につくった電話に関するプロセスは、スマホを想定していませんので、現在では、使えません。

 

物理学や数学の公式には、賞味期限がありませんが、それは例外であって、一般のプロセスには、賞味期限があり、常に、改訂する必要があります。

 

機械学習では、プロセスをプログラムによって、データから、コンピュータが探します。

 

したがって、コンピュータが習得したプロセスは、人間のプロセスとは異なります。

 

一方、人間の習得したプロセスも、個人の学習経験によって異なります。

 

コンピュータの機械学習プログラムが、n個あり、人間が、m人いた場合を考えます。

 

ここには、学習によって得られた、n+m個のプロセスがあります。

 

コンピュータグループから、プロセスを1つ選んで、人間のクループからプロセスを1つ選んだ場合、組合せがnxm個出来ます。

 

仮に、同じ入力に対して、コンピュータのプロセスと人間のプロセスのどちらがすぐれているかという評価をするのであれば、nxm回の対戦比較の結果を整理する必要があります。

 

こう考えると、AIと人間のどちらが正しいか、優れているのかという比較には意味がありません。

 

画像認識では、AIの方が、人間より優れていると言われますが、ここでは、n個の平均と、m個の平均を比較しています。

 

平均値では、AIの方が、人間より劣っている場合でも、個別の組み合わせでは、逆転する場合が考えられます。

 

AIと同じで、人間のプロセスも学習量が少ない場合には、精度が低くなります。

 

機械学習によるAIの学習効率は、人間より劣ると思われますが、圧倒的な学習量で、逆転することが可能になります。

 

2-3)AIか人か

 

プロセスの視点では、「AIか、人か」という問いは、「AIのプロセスか、人のプロセスか」という問いになります。

 

AIのプロセスと人のプロセスは、異なりますので、ファクトの比較には、意味がありません。

 

なぜなら、入力のファクトが同じ場合、出力のファクトが異なる原因は、プロセス(推論モデル)の違いに由来するからです。

 

比較をする場合には、比較対象となるプロセスを特定しなければ、比較は不可能です。

 

2-4)ジョブ型雇用

 

ジョブ型雇用のジョブは、プロセスです。

 

このプロセスを実行する主体は、コンピュータでも、人間でも、プロセスが同じであれば、全く等価になります。

 

したがって、ジョブ型雇用では、DXが容易にできます。

 

これから、プロセスに基づくジョブ型雇用と、アウトプットのファクトに基づく年功型雇用は併存できないことがわかります。



年功型雇用では、不祥事や業績不振が起こると、トップが減給します。

 

しかし、減給してもプロセスが変わらないので、不祥事や業績不振は再発します。

 

一方、持ち株や、業績給は、プロセスに連動しています。

ジョブ型雇用の採用条件は、プロセスがこなせる人材を選ぶことになります。

 

年功型雇用では、まずは、採用してから、トレーニングをしますが、この方法では、プロセスに到達できません。