1)アメリカ
トランプ次期大統領は既に、中国への追加関税と、メキシコとカナダからの輸入品にも関税をかける方針を表明しています。
2)EU
欧州委員会は2024年11月29日、中国製電気自動車(EV)に対する追加関税の導入を正式決定しました。今後5年にわたり、従来の10%に7.8から35.3%を上乗せし、最大45.3%の関税を課します。11月30日に適用を開始しました。
遠藤誉氏は、ノースボルトの破綻の原因を分析しています。
遠藤誉氏によると、EUには、EV用電池をつくる技術がなく、ノーズボルトは、中国の技術を導入して、EV用電池を作っていました。
中国のEV用電池は、一流で、ノーズボルトのEV用電池は、二流ですから、ノーズボルトには、競争力はありません。
<< 引用文献
中国に勝てず破産した欧州のEV用電池企業ノースボルト トランプ2.0で世界に与える影響 2024/11/30 中国問題グローバル研究所 遠藤誉
>>
3)日本
いまのところ、日本では、中国のEV用電池に関税をかけるという話は出ていません。
遠藤誉氏の資料を見ると、2020年には、EV電池の生産量は、中国と韓国が50GWhで、日本は、25GWhでした。
2023年には、中国が450GWh、韓国が170GWh、日本が50GWhです。
2024年1月から9月のシェアは、中国65%、韓国21%、日本4%です。
日本のEV用電池メーカーは、パナソニック1社です。3か国のなかでは、日本のEV用電池の伸び率が一番小さいです。
2020年の25GWhが、3年後の2023年に50GWhになる場合、年間の伸び率は、27%です。
この比率を使えば、2024年の日本のEV電池の生産量は、50GWhの27%増しの65GWになります。
2024年通年のシェアも中国65%、韓国21%、日本4%と仮定すれば、2024年の推定EV電池生産量は、中国が、1050GWh、韓国が340GWh、日本が65GWhです。
つまり、パナソニックは技術開発コストを捻出できません。
パナソニックの技術は、ノーズボルトよりは、上ですが、中国と韓国の比較では、水を開けられています。
日本が、EUのように、EV用電池の国内生産を目指すのであれば、関税化の提案が出ても不思議ではありません。
EV用電池が自給できなければ、EVの国内生産は、不可能で、自動車産業がなくなってしまいます。
日本の自動車産業は、GDPの約12%を占めていて、自動車産業がなくなれば、雇用の10%以上が失われ、経済が失速してしまいます。
4)ブドウの話
世界のシャインマスカット生産は、中国が中心です。
<< 引用文献
損失100億、シャインマスカット「中国流出」の痛恨 中国の栽培面積は日本の30倍、逆輸入の危機も 2022/09/15 東洋経済 印南 志帆
https://toyokeizai.net/articles/-/616796
>>
中国のシャインマスカット生産は合法的なものです。
NHKは次のようにいいます。
<
これまでの種苗法では苗木がホームセンターなどで買われた時点で開発者の権利が消滅するため、海外に持ち出す行為は違法にはならない。
日本のブランド農産物が中国で権利を主張するには流通開始から6年以内に現地で品種登録する必要がある。しかし、シャインマスカットは中国でこの登録をしていなかった。そして6年以上が経過していた。
>
<< 引用文献
高級ぶどうは誰のもの?2020/12/09 NHK
https://www.nhk.or.jp/politics/articles/feature/49665.html
>>
シャインマスカットブランドも合法です。
<
令和2年12月2日に国会で可決成立して12月9日に公布された改正種苗法では、新品種育成者による海外持ち出し制限や国内指定地域外の栽培制限を可能にするとともに、従来は育成者の権利が及んでいなかった農業者による自己の経営内での種苗の増殖利用(農業者の自家増殖)も含めて、種苗の増殖は全て許諾を受けて行うこととされる内容が盛り込まれました。
改正種苗法では、開発者が輸出できる国や国内の栽培地域を指定でき、それ以外の国に故意に持ち出すなどした場合は10年以下の懲役や1000万円以下の罰金を科すことができる。
例えば、栽培地域を日本に限定した場合、海外で栽培が確認されれば、故意に持ち出した者に対し刑事罰を問えることになる。
>
しかし、シャインマスカットの苗は、ホームセンターで購入できます。
シャインマスカットの苗には、生産者のIDがついていませんので、トレースできません。
シャインマスカットの苗を違法につくった人が、時々摘発されています。
しかし、この摘発は、異常です。
第1に、法律には遡及しない原則があります。
これから、品種登録された品種を栽培制限の対象にすることは問題がありませんが、今まで、栽培制限の対象になっていなかった品種の栽培を制限することは、遡及になります。
第2に、このこの摘発には、効果がありません。
中国にあるシャインマスカットの苗を増やすことは、日本の種苗法では、禁止できません。
中国では、シャインマスカットの苗を増やすことは合法です。
中国のEV用電池は日本に輸入されています。
中国のシャインマスカットが日本に輸入される可能性があります。
シャインマスカットの市場規模は、EV用電池や、その影響をうける自動車の市場規模にくらべれば、問題になりません。
5)疑惑
日本の政治が外国の影響を受けていることが知られています。
アメリカとの間には、日米地位協定があります。在日米軍基地は、アメリカ軍及び連邦政府関係者は、パトリオット・エクスプレスと軍用車で出入りする限り、本国から一歩も出ていない扱いになっています。出入国審査はありません。
統一教会は、韓国に司令部があるので、統一教会を通じて、政治家が、韓国の利益で活動した可能性もあります。
孔子学院は、中国への理解や友好関係の醸成を目的として掲げているが、欧米では中国のプロパガンダ機関であるとの警戒・批判も強く、閉鎖する政府・大学も多いです。
ウィキペディアは、次のようにいっています。
<
2014年6月に、アメリカ合衆国大学教授協会(英語版)は「孔子学院は中華人民共和国の中国共産党政府の手足として機能しており、『学問の自由』が無視されている」と批判し、関係を絶つよう各大学に勧告した。同年9月にはシカゴ大学とペンシルベニア州立大学が相次いで孔子学院の打ち切りを決定した。カナダでも10月1日にトロントの教育委員会が、孔子学院との関係解消を決めました 。
2018年2月13日には、アメリカ連邦捜査局(FBI)のクリストファー・レイ長官が連邦議会上院の情報委員会の公聴会にて、孔子学院がアメリカ国内にて諜報活動やプロパガンダ活動など違法行為を行っている疑いがあり、捜査対象となっていることを証言しています。
>
2021年5月13日、文科省は「少なくとも大学側には(組織や活動について)透明性を求める必要がある」と述べていますが、具体的な対策は講じていません。
具体的な対策を講じていないことは、政府や政治家の中に、中国の影響下にある人がいる可能性を示しています。
アメリカ、EU、中国は、現在、関税率の変更を繰り返しています。
関税率の変更が、経済合理性に反するか否かは、別にして、外国には、国内法が及びませんので、外国の態度を変化させる外交カードは限られています。
冷戦時代には、アメリカとソ連は、軍隊を派遣するという荒療治の外交カードを使っていましたが、現在では、かなり困難です。ウクライナは、その例です。
軍隊を派遣するという外交カードを除けば、関税率をあげるなどの経済制裁、ビザの発行を制限するなどのカードしかありません。
日本政府は、過去どのような外交カードをとったかをみれば、実体は、外交カードを全くといって良いほど、使っていないことがわかります。
これは、日本国内に、外交カードを使わないようにする外国の干渉が入っている可能性を示しています。
シャインマスカットの問題は、外交カードを使わないようにする干渉の典型のように見えます。
シャインマスカットの問題は、合法ですから、外交カードで阻止することは不可能です。
つまり、外交カードで阻止することができるシャインマスカットより重要な問題があります。
シャインマスカットの問題は、そうした問題から、注意をそらすツールになっている可能性があります。
外国の政治への干渉は、大国であれば、多かれ少なかれ、行っているはずです。
その実体は、表にでませんが、外交カードの使い方をみれば、どの国の干渉が成功しているかが推測できます。
企業からの政治献金は、外国の干渉の隠れみのになります。
つまり、現状で、外国からの干渉が成功している場合には、企業からの政治献金はなくならないと思われます。
アメリカの政治献金の金額は、大きいですが、透明性の確保は徹底しています。