日本の終わり

1)「中国製造2025」とDXの基本

 

ASEANでは、「中国製造2025(Made in China 2025)」をモデルにしたDX政策が行われています。



2013年のアベノミクスでは、「第三の矢」では、「成長産業や雇用の創出を目指し、各種規制緩和を行い、投資を誘引する」が、実現しなかった政策であると評価されています。



この方法では、「成長産業」が、利権のキャッシュバックをうける産業になります。「第3の矢」は、建前であって、本音は、政治献金の多い企業と官僚の天下りを多く受け入れる企業が、「成長産業」になってしまいます。

 

日本政府は、1980年代に、将来、他の発展途上国が、安い賃金を武器に、安くて品質の良い製品をつくるようになると、経済成長が止まると予測しました。

 

その対応の一つがゆとり教育でした。

 

1990年以降、計算科学、統計学を含むデータサイエンスが進歩します。

 

ゆとり教育とは、ゆとりの分だけ教育しないことです。

 

一方、先進国の教育は、計算科学とデータサイエンスを重視していきました。

 

1990年以降、予想されたとおりに、日本経済の成長は減速します。

 

1990年以降の日本の経済政策、教育政策、産業政策は、失敗であったことがわかります。

 

2010年代以降、中国は世界第2位、購買力平価(PPP)ベースでは世界最大の経済大国になりました。一方では、 中国は、低賃金国や、先端技術を持つ工業国との競争に直面しました。

 

つまり、2010年の中国の状況は、1980年代の日本と同じです。

 

大きな違いは、この30年の間に、デジタル社会への移行が明確になった点です。

 

また、データサイエンスの発達が世界を変えることも確実になりました。

 

日本の失われた30年は、モデルにはなりません。

 

デジタル社会はこれから出現する社会なので、過去の経験に価値はありません。

 

デジタル社会は、設計図をもとに、計画する必要があります。

 

設計の要点は、デジタル技術の利用効率が最大化できるように、データと組織を組み替える点にあります。

 

データにもとづく、効率的な製品やサービスが見つかった場合には、組織は、それに対応できる必要があります。

 

年功型雇用では、アウトです。ジョブ型雇用も、工夫しないとアウトになります。

 

「中国製造2025(Made in China 2025)」は、中国経済が、日本経済のように停滞しないための対策を示しています。



「中国製造2025」は、デジタル社会の産業政策を検討する上で、ひとつの基準となる政策です。ASEANの国は、「中国製造2025」をロールモデルにしています。

 

例によって、日本語の情報は、「中国製造2025」を正しく伝えていません。以下では、英語版のウィキペディア「Made in China 2025」を引用します。

 

今回は、ほぼ、全文の引用ですが、ここには、日本経済が成長しない原因が書かれています。

 

中国製造2025(MIC25、 MIC 2025、またはMIC2025、中国語:中国制造2025、ピンイン:Zhōngguózhìzào èrlíng'èrwǔ)は、2015年5月に習近平中国共産党総書記と李克強中国首相の内閣によって発布された、中国の製造業の更なる発展を目指す中国共産党(CCP)の国家戦略計画および産業政策である。第13次および第14次5カ年計画の一環として、中国は「世界の工場」、つまり労働コストの低さとサプライチェーンの利点を活かした安価なローテク製品の生産者からの脱却を目指している。産業政策は、中国の産業の製造能力を向上させ、労働集約型の工場から、より付加価値の高い技術集約型の大国へと成長することを目指している。

 

「中国製造2025」の目標には、コア材料の中国国内での調達比率を2020年までに40%、2025年までに70%に引き上げることが含まれている。外国のサプライヤーからの独立を支援するために、このイニシアチブはハイテク製品とサービスの生産増加を奨励しており、半導体産業を産業計画の中心に据えている。その理由の1つは、チップ技術の進歩が「他の技術分野でのブレークスルーにつながり、最高のチップを持っている国に優位性がもたらされる可能性がある。これは現在北京には手の届かない優位性である」ためである。

 

2018年以降、米国、欧州などからの反発を受けて、政府やその他の公式発表では「中国製造2025」というフレーズは強調されなくなったが、プログラムは継続されている。中国政府は、特定された技術に多額の投資を続けている。 2018年、中国政府は産業計画の達成に約3000億米ドルを投資することを約束した。COVID-19パンデミックを受けて、少なくともさらに1.4兆米ドルが中国製造2025イニシアチブに投資された。中国が現在中所得国であることを考えると、先駆的な新技術への不均衡な支出の実現可能性が疑問視されている。

 

2024年10月、ブルームバーグは「習近平のハイテク覇権への取り組みを封じ込めようとする米国の取り組みは行き詰まっている」と題する記事を掲載し、中国の「中国製造2025」構想はおおむね成功しており、高速鉄道グラフェン無人航空機、太陽光パネル、電気自動車、リチウム電池など13の主要技術のうち5つで中国が主導的地位を獲得し、他の7つの技術でも急速な進歩を遂げていると指摘した。この進歩は、将来の経済成長に不可欠な産業における中国の影響力の増大を強調していると結論付けている

 

背景と目標

 

2010年代以降、中国は世界第2位、購買力平価(PPP)ベースでは世界最大の経済大国として、新興超大国となった。 中国は、ベトナムのような低賃金国や、高度に工業化された国との製造業の競争に直面している。経済成長と生活水準を維持し、ますます教育水準の高い労働者の需要を満たすために、中国は中国製造2025で経済・技術競争力の潜在力を刺激し、「世界をリードする製造大国」になることを目指している。英国のシンクタンク、チャタムハウスのアラン・ウィートリーは、2018年に、中国の中産階級の拡大と拡大が、国の経済的・政治的安定に必要であると指摘した。

 

中国は産業政策プログラムを信頼しており、それが経済的成功の鍵だと考えている。中国の指導者たちは、重要な技術分野への政府の投資が第四次産業革命で強力な地位を築くことにつながると期待している。中国製造2025プログラムの主な目的は、米中間の競争がますます支配的になっていると見られる世界において、AI、5G、航空宇宙、半導体、電気自動車、バイオテクノロジーなどの主要技術を特定し、国家のチャンピオンの助けを借りてそれらの技術を国産化し、中国国内で市場シェアを確保し、最終的には世界の海外市場を獲得することである。

 

ワシントンDCの戦略国際問題研究所は、中国製造2025を「中国の産業を包括的にアップグレードするための取り組み」と表現しており、これはドイツが提案したインダストリー4.0戦略に直接影響を受けている。これは、中国の製造拠点をバリューチェーンの上位に移行させ、 米国と直接競合する主要な製造大国になるための包括的な取り組みである。

 

ポリシー

 

定められた目標を達成するために、次のようないくつかの具体的な政策が実施されている。

 

ハイテク企業は減税の対象となります。

 

1:外国テクノロジー企業の合併と買収の奨励

2:大手製造企業による研究開発資金の増加

3:研究開発への直接的な政府資金提供

4:研究開発費の割合、生産性、デジタル化、環境保護などの要素に関する具体的な目標を記載したロードマップ。

 

中国製造2025に対する政策支援には、政府の指導基金、国立研究所、研究助成金に対する国費によるインセンティブも含まれている。

 

戦略的取り組み

 

中国共産党は政策をより良く実行するために5つの戦略的取り組みも実施した。]

 

1:中国全土に研究開発センターを建設(2025年までに40カ所建設予定)

2:主要産業全体にわたるハイエンドプロジェクトの開発

3:持続可能な生産と世界をリードするグリーン製造の実践

4:ロボット工学とデジタル化を含むスマート製造

5:新素材の生産は依存度が低くなる

 

主要産業

 

中国製造2025に不可欠な産業には、航空宇宙、バイオテクノロジー、情報技術、スマート製造、海洋工学、先進鉄道、電気自動車、電気機器、新素材、バイオメディカル、農業機械・設備、医薬品、ロボット製造などがあり、その多くは外国企業によって支配されてきた。中国は、これらの分野での収益源は利益が大きく、ハイテクで高付加価値の経済を確立するという中国の取り組みにとって重要であると考えている。 中国製造2025は、これらの分野でのグリーンで持続可能な生産を重視している。

 

中国製造2025では、中国政府が世界をリードする産業となることを目標に掲げている以下の10の主要産業を挙げている。

 

中国製造2025の主要産業

 

 産業分野               説明

 1:情報技術            AI、IoT、スマート家電

 2:ロボット工学            AI、機械学習

 3:グリーンエネルギーとグリーン車  エネルギー効率、電気自動車

 4:航空宇宙機

 5:海洋工学とハイテク船舶

 6:鉄道設備

 7:動力機器

 8:新しい素材

 9:医薬品および医療機器

10:農業機械

 

李首相は、産業の発展におけるイノベーションを促進し、ボトルネックを解消するには、産業における高度な基準が絶対に必要であると示唆した。中国では、より高品質の商品やサービスを求める中産階級が増加している。海外の競争相手と比較すると、中国製品の品質とイノベーションは追いついていない。李首相は品質革命について語った。これは起業家精神と職人技を中心に展開される。それは、生産される商品の品質を継続的に革新し、改良する文化を受け入れることを伴うだろう。

 

主要産業のリーダーとして名を連ねた企業には以下のものがある。

 

百度(AI、自動運転車)

アリババ(電子商取引

テンセント(電子商取引

メグビー(AI)

DJI(AI、ドローン)

BAIC(新エネルギー車)

吉利(新エネルギー車)

NIO(新エネルギー車)

BYD(新エネルギー車)

SMIC(半導体)[ 36 ] [ 37 ]

福建省金華集積回路DRAM 製造)

Huawei半導体、通信、家電)

BBKエレクトロニクス(家電製品)

Xiaomi(家電製品)

中国航空工業集団(航空宇宙)

CRRC(鉄道)

シノファーム(医薬品)

 

資金調達と評価

 

MIC 2025産業を支援するための国家資金の額は公表されていないが、国家資金、低金利融資、税制優遇措置、その他補助金で「数千億ドル規模」になると推定されている。この額には、先進製造業基金への29億ドルと国家集積回路産業投資基金への202億ドルが含まれている。

 

中国の5Gへの投資は、中国製造2025プログラムの一部とみなされている。2020年初頭の時点で、中国では約20万の5Gタワーが使用されており、年末までに50万以上、最終的には500万を目標としている。中国の全国人民代表大会は、第14次5カ年計画で、5Gネットワ​​ークを構築し、「スマートシティを構築するためにカメラとセンサーを設置し、このネットワークを産業と統合してスマート製造の進歩を加速する」ために、5〜6年で1.4兆ドルの支出を承認した。

 

カリフォルニア大学サンディエゴ校の教授で中国専門家のバリー・ノートン氏は、中国がまだ中所得国であることを考慮すると、「新技術の開拓に伴うリスクの高い支出のこれほど不釣り合いな部分」を負担することは賢明なことなのだろうかと疑問を呈した。同氏は、純粋に経済的な観点からは意味をなさないが、中国の政策立案者は「中国製造2025」などの産業政策を実施する際には「他の考慮事項」を持っているとコメントした。

 

サウスチャイナ・モーニング・ポストによる2024年の分析によると、計画で提案された260以上の目標のうち、86%以上の目標が達成された。報告書によると、電気自動車や再生可能エネルギーなどの分野の目標は大幅に上回り、ロボット工学、農業機械、バイオ医薬品、海洋工学のすべての目標は達成されたが、高度なフォトリソグラフィー技術、大陸間旅客機、ブロードバンドインターネット衛星ネットワークなどの一部の目標は達成されなかった。達成率が最も低かったのは新素材で、75%だった。

 

2024年10月、ブルームバーグは、6年以上にわたる米国の関税、輸出規制、金融制裁にもかかわらず、中国が未来志向の産業で世界的リーダーとしての地位を確立するための着実な進歩を強調する一連の記事を発表しました。ブルームバーグエコノミクスとブルームバーグインテリジェンスの調査では、新興技術における中国のリーダーシップを確保するために設計された「中国製造2025」イニシアチブは「ほぼ成功」していると結論付けています。ブルームバーグが追跡している13の重要な技術のうち、中国は高速鉄道グラフェン無人航空機、ソーラーパネル、電気自動車とリチウム電池の5つで世界的リーダーシップを獲得し、他の7つの分野で急速に差を縮めています。この調査では、中国の電気自動車の世界的な普及、インターネットアクセスのための中国製スマートフォンへの依存の高まり、住宅用エネルギーとしての中国製ソーラーパネルの広範な採用も指摘されています。

 

ブルームバーグの報道は、中国の台頭を封じ込めようとする政策が意図せず米国を孤立させ、米国の企業や消費者に悪影響を及ぼす可能性があることを示唆しており、米国にとっての懸念を引き起こしている。ピーターソン国際経済研究所所長で、さまざまな政府や中央銀行の研究者であるアダム・ポーゼン氏は、「米国の規制によって中国の技術的台頭が妨げられることはなく、遅くなることもないかもしれない」と警告しているが、米国と世界のイノベーションを同時に妨げる可能性のある「厳格な措置」は別である

 

反応

 

欧州連合

 

欧州委員会は、中国製造2025(MIC 2025)政策に対応して、欧州連合EU)に産業および研究のパフォーマンスを向上させ、「中国におけるEU企業とEUにおける中国企業に公平な競争条件を確保できる貿易政策を策定する」よう求める報告書を発表した。同委員会は、MIC 2025が「ドイツと日本のイノベーションと経済発展へのアプローチ」に似ていると認識している。

 

中国EU商工会議所は、中国製造2025は国内企業を優遇する中国の保護主義を強めるだろうと述べた。同会議所は報告書の中で、中国製造2025は市場を歪め、市場ベースのイノベーションは産業政策よりも中所得国への通過に適した方法であると述べている。同会議所会長のイェルク・ヴトケ氏は「政府官僚が勝者と敗者を決める多額の資金を投じた大規模計画は、往々にして失敗に終わる」と述べた。

 

日本

 

日本の評論家は、中国製造2025によって半導体製造装置や生産ラインのロボット化装置など日本製の高付加価値品の輸出が増加していると指摘し、ビジネスチャンスとみているが、長期的には中国が強力な競争相手となるのではないかと懸念している。

 

韓国

 

韓国国際貿易協会(KITA)の報告書は、中国産工業2025を中国の自給自足に向けた一歩と見なし、韓国の輸出を脅かす一方で、変化する産業需要による韓国にとってのチャンスも認めている。KITAは、韓国のイノベーションの向上、合併や買収による頭脳流出や知的財産の喪失の防止、中国による不公正な貿易慣行の防止、そして中国産工業2025から生じる市場機会の積極的な活用による対応を求めている。

 

台湾

 

台湾のチップ業界の優秀な人材を有利な条件で獲得しようとする積極的なキャンペーンの結果、3,000人以上のチップエンジニアがMIC 2025に流出し、「頭脳流出」の懸念が高まった。 台湾の「DRAMゴッドファーザー」と見なされているチャールズ・カオは、中国で職を得るために台湾を離れた人の一人で、清華紫光集団で5年間(2015年から2020年)を過ごした。紫光集団は、カオが採用されてから2年後に、台湾で2番目に大きな契約チップメーカーであるユナイテッド・マイクロエレクトロニクスの元最高経営責任者兼副会長である孫世偉も採用していた。

 

アメリカ合衆国

 

2010年代の初め、米国の政策立案者は、デジタル世界における中国の地位の拡大に対する防御的調整を開始しました。これらの調整には、輸出入量の規制、金融投資の規制、金融制裁とビザ禁止の創設が含まれていました。近年、米国は中国に対抗するためにより攻撃的な戦略を採用しています。米国は、研究開発分野への投資を増やし、大学やその他の学術機関内での特定の中国製テクノロジーの使用を禁止することで、デジタル世界に参入してきました。中国に対抗するための攻撃的な措置は、テクノロジー分野に対する中国の影響力を鈍らせるのに効果的であることが証明されています。ただし、防御的な措置とは異なり、十分な影響力を発揮するには時間がかかります。研究者は、講じられている防御措置は、中国の急速な成長を譲り、米国の戦略が実行される時間を与えることを意図していると考えています。

 

「メイド・イン・チャイナ2025」構想の拡大は、米国にとって国家安全保障への脅威である。米国当局は、北京がテクノロジー分野全体に大きなギャップを作り続けるなら、ワシントンの当局者は政府部門や機関内での侵害を懸念すべきだと考えている。これが米国政府による「技術的分離」と呼ばれるプロセスの創出を促した。米国は戦略的に中国国境で生まれたテクノロジーから離れる別の手段を模索している。これは、中国の製品やサービスに対する規制を設けたり、国内で競争するためにメイド・イン・USA企業を設立したりすることで実行される。

 

2010年代を通じて、技術分離理論の人気が高まったのは、米国が中国と習近平政権に対する見方を変えたためである。過去数十年間、米国の政策立案者は、中国の成長と利益は自国にとっても相互利益であると見ていた。しかし、近年の中国の政策決定をめぐる独特の緊張感は、中国の将来の課題に対する警戒感の高まりを表明していることが判明している。米国と中国は引き続き健全な経済交流を維持しているが、互いに対する見方はより競争的なレベルに変化している。

 

2018年、アメリカのシンクタンクである外交問題評議会は、政府が後援する補助金を伴う中国製造2025は「アメリカの技術的リーダーシップに対する脅威」であると述べた。李克強政権は、中国製造2025は世界貿易機関の義務に沿っていると主張した。  2018年6月15日、トランプ政権は中国製品に高い関税を課し、米中間の貿易摩擦を激化させた。関税は主に、ITやロボット産業に不可欠なものなど、中国製造2025計画に含まれる製造品に適用される。

 

米国は、技術窃盗と国家安全保障への懸念に基づき、福建省金華集成電路など中国製造2025計画に参加している中国企業に対する個別調査を開始した。

 

米国は中国のMIC2025戦略に対応していくつかの政策措置を実施している。これらの措置には、特定の中国企業による米国のインフラプロジェクトへの参加の禁止、米国政府資金による研究への中国の関与の綿密な調査、米国とEUから中国への航空宇宙技術の移転の制限などが含まれている。2018年、米国議会は外国投資の監視を強化し、輸出管理権限を強化する法律を制定した。より最近では、2022年8月にバイデン大統領は半導体やその他の技術における米国の能力を強化するためにCHIPSおよび科学法に署名した。

 



2)「中国製造2025」の行方

 

「中国製造2025」が、成功するかは、疑問です。

 

上記の引用の中でも、次の2点の指摘があります。

バリー・ノートン氏は、中国がまだ中所得国であることを考慮すると、「新技術の開拓に伴うリスクの高い支出のこれほど不釣り合いな部分」を負担することは賢明なことなのだろうかと疑問を呈した。

 

イェルク・ヴトケ氏は「政府官僚が勝者と敗者を決める多額の資金を投じた大規模計画は、往々にして失敗に終わる」と述べた。

 

中国の習近平国家主席は2021年8月、「共同富裕」というスローガンを大々的に打ち出し、注目を集めました。中国社会が、「新技術の開拓に伴うリスクの高い支出」に耐えられるかを問題視しています。



ヴトケ氏は、政府官僚が成長分野を選別した大規模計画は失敗に終わることが多いと言います。

 

習近平国家主席は2021年8月、「共同富裕」というスローガンを大々的に打ち出しています。これは、ノートン氏は中所得国では、産業生産への政府支出の拡大に、国民が耐えられなくなるリスクがあるといいます。「共同富裕」は、国民が耐えられなくなりつつあることを示しています。

 

ノートン氏とヴトケ氏は、「新技術の開拓に伴う支出はリスクが高い」といいます。これは、一般論としては、正しいと思います。しかし、デジタル社会へのレジームシフトを考えれば、判断は難しいです。例えば、AIと半導体のどちらを優先すべきかという判断には、おおきなリスクがあります。しかし、デジタル産業分野を平均してみれば、「新技術の開拓に伴う支出のリスク」は、あまり、高くないと思われます。

 

おそらく、最大の論点は、デジタル産業のリスク評価にあると思われます。

 

アメリカでは、テック企業は、AIに莫大な投資をしています。

 

リターンは、不透明です。しかし、どこかの企業が、AIで優位に立てば、残りの企業が生存できないリスクが高くなります。

 

ノートン氏とヴトケ氏の指摘は、「新技術の開拓に伴う政府の支出」に偏重しています。

 

「中国製造2025」の目標は、次でした。

経済成長と生活水準を維持し、ますます教育水準の高い労働者の需要を満たすために、中国は中国製造2025で経済・技術競争力の潜在力を刺激し、「世界をリードする製造大国」になることを目指している。

 

「中国製造2025」は、政府の支出だけでなく、人材育成、教育ともリンクしています。

 

台湾からは、ヘッドハントをしていました。

台湾のチップ業界の優秀な人材を有利な条件で獲得しようとする積極的なキャンペーンの結果、3,000人以上のチップエンジニアがMIC 2025に流出し、「頭脳流出」の懸念が高まった。 



3)日本の終わり

 

KYODOは、次のように、伝えています。

政府が11月に取りまとめる方針の経済対策原案が11日判明した。人工知能(AI)や半導体産業に対し、複数年度にわたり10兆円以上の公的支援をする枠組みを設けると明記した。物価高対策として講じる低所得世帯向け給付金は、住民税非課税世帯を対象として実施する。ガソリン料金の補助を段階的に縮小する方針も盛り込んだ。

<< 引用文献

AI・半導体に10兆円超を支援 経済対策、22日にも閣議決定  2024/11/11 KYODO

https://news.yahoo.co.jp/articles/6513d7a080a470659b1bd8b9bcacdab2a50e9b50

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上述のように、現在の中国の技術レベルは高いです。

2024年10月、ブルームバーグは、6年以上にわたる米国の関税、輸出規制、金融制裁にもかかわらず、中国が未来志向の産業で世界的リーダーとしての地位を確立するための着実な進歩を強調する一連の記事を発表しました。ブルームバーグエコノミクスとブルームバーグインテリジェンスの調査では、新興技術における中国のリーダーシップを確保するために設計された「中国製造2025」イニシアチブは「ほぼ成功」していると結論付けています。ブルームバーグが追跡している13の重要な技術のうち、中国は高速鉄道グラフェン無人航空機、ソーラーパネル、電気自動車とリチウム電池の5つで世界的リーダーシップを獲得し、他の7つの分野で急速に差を縮めています。この調査では、中国の電気自動車の世界的な普及、インターネットアクセスのための中国製スマートフォンへの依存の高まり、住宅用エネルギーとしての中国製ソーラーパネルの広範な採用も指摘されています。

 

アメリカとEUは、中国のEVに高い関税をかけています。これは、電気自動車とリチウム電池で、中国の競争力に勝てないためです。

 

日本政府は、人工知能(AI)や半導体産業に対し、複数年度にわたり10兆円以上の公的支援をする枠組みを設けると明記し、物価高対策として低所得世帯向け給付金を実施します。つまり、産業政策と生活対策の二兎を追っています。

 

中国は、「共同富裕」と言いいますが、実際には、産業優先の予算です。

 

ロイターは、次のように伝えています。

中国とインドネシアは2024年11月10日、北京で開かれたビジネスフォーラムで、食品や新エネルギー、テクノロジーなどの分野における100億ドル相当の契約に署名した。

 

首脳会談後の共同声明で、両国は新エネルギー車、リチウム電池太陽光発電、デジタル経済などの分野で協力を強化することで合意した。

 

両首脳はまた、 世界的なエネルギーシフトに関する連携を強化し、世界の鉱物供給と産業チェーンの安全を共同で確保することを約束した。

<< 引用文献

中国とインドネシア、ハイテク分野などで100億ドル規模の契約 2024/11/11 ロイター

https://jp.reuters.com/markets/commodities/DB3FGPMCBRO2PJZGUBEJKBSIKM-2024-11-11/

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中国は、インドネシアの資源の確保に動いています。それが、可能になった原因は、「中国製造2025」の実績です。

 

日本には、「中国製造2025」のような実績がないので、資源を確保する外交カードがありません。

 

政府の今回の人工知能(AI)と半導体産業への公的支援は、「中国製造2025」を考慮していません。つまり、中国に勝てる技術開発をするつもりはありません。

 

政府の公的支援は、政治献金のキャッシュバックを目的としたものと思われます。「中国製造2025」に勝てない公的支援では、作っても売れない人工知能(AI)と半導体しかできません。結局、10兆円以上の税金が無駄になります。これは、過去35年の間に行った政策の繰り返しになります。

 

日本の企業に輸出競争力がなければ、資金逃避が起きます。貿易収支とサービス収支が赤字になれば、外貨がなくなり、日本は飢えてしまいます。

 

政府は、過去35年の間に行った政策を、これからも繰り返すことができると考えています。

 

これは帰納法による推論の典型的な間違いです。製品を輸出する場合には、競合企業の有無が、交絡因子になります。中国という交絡因子は、「中国製造2025」によって、大きく変化してしまいました。

 

過去35年の間に行った政策を、これからも繰り返せば、その先には、「日本の終わり」が待っています。

 

これが、パーティ券問題の終着駅です。