1)消費税率の軽減
10月27日の選挙の結果について、 スポニチに、森永卓郎氏は「伸び率から言ったら国民民主とれいわ新選組なんですよ。で、2つとも国民民主はデフレが続く限り消費税5パーセント、れいわは完全廃止。それが大きな国民の支持を得たっていうのが、政策面で今回大きかったなと」と私見を述べています。
<< 引用文献
森永卓郎氏 「予想通り」衆院選も「感動した」国民民主、れいわの躍進「政策面で」大きかったポイントは 2024/10/28 スポニチ
https://news.yahoo.co.jp/articles/4052e0df62178e44b1b055faa399a3631402e7f1
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消費税率の軽減は可能ですが、将来の医療費、社会保障費の増加を考えれば、今後、消費税率をあげる余地が必要です。
現時点で、社会保険料と税を合わせた実質の負担率が50%近くなっていますので、実質負担を下げなければ、内需がしばんで経済成長しなくなります。
これは、補助金のような税を通じたお金のサイクルの効率と、減税による消費者を通じたお金のサイクルの効率の違いの問題です。
減税による消費者を通じたお金のサイクルの方が、効率が高い場合には、減税は経済成長につながります。
消費税率を軽減するためには、非効率な補助金や公共事業を中止する必要があります。
今回の選挙では、各党は何をするかという公約を掲げました。
森永卓郎氏が指摘するように、何をするかという政策では、消費税率の軽減以外の違いは、ほとんどありませんでした。
立憲民主党は、民主党時代に消費税の増税に加担していますが、そのことについては、今回の公約では何もいっていません。
消費税率を軽減するためには、非効率な補助金や公共事業を中止する必要があります。
これは、政策の中心課題が、何をするかではなく、何をやめるかにあることを意味します。
問題は、消去法にありますが、各党とも、消去法の問題には踏み込んでいません。
2)民主党の間違い
民主党政権時代に、政府は、非効率な補助金や公共事業を中止する検討をしています。
これは、行政仕分けという魔女狩り裁判でした。
財務省出身者の故藤井財務大臣は、行政仕分けで財源を捻出できると主張しました。
財務省出身者の発言なので、筆者は、この主張に間違いはないと考えました。
しかし、行政仕分けでは、財源の捻出はできず、民主党政権は、消費税増税にハンドルを切りました。
立憲民主党の支持率が伸び悩んでいる原因には、このときの問題点の解消法が示されていないためです。
行政仕分けという魔女狩り裁判は間違いでした。
つまり、「非効率な補助金や公共事業を抽出する正しい方法」が必要になります。
3)科学の方法
実は、公共経済学では、「非効率な補助金や公共事業を抽出する方法」は、費用対便益分析として確立しています。
英語版のウィキペディアには、2種類の費用対便益分析が、書かれています。
第1の方法は、「便益>費用」を確認する手法としての費用対便益分析です。
第2の方法は、代替市場における価格に相当する「便益/費用」を計算する手法としての費用対便益分析です。
現在、政府が行っている費用対便益分析は、第1の方法で、「補助金や公共事業の効率の計測」には使えません。
第2の方法の「便益/費用」は、「補助金や公共事業の効率の計測」に使えます。
第2の方法の「便益/費用」を使えば、すべての事業には、スコアがついて、スコアの高い順に並べれば、優良事業からゾンビ事業までをならべた順位表ができます。
この表を使えば、「非効率な補助金や公共事業の抽出」が可能になります。
先進国では、第2の方法が、標準です。特に、エビデンスに基づく政策を行うためには、第2の方法が、必須条件になります。
AIが政策決定のサポートをする場合には、第2の方法が前提になります。
第2の方法が使われない理由は、「便益/費用」の数値が公開されると、利権に基づいた予算配分ができなくなるためです。
田中角栄氏は、新潟の寒村にトンネルをつくりましたが、「便益/費用」の数値が公開されれば、そのような無茶はできなくなります。
なぜなら、より優先度の高い事業があるからです。
利権の方法は、政治資金の過多によって、事業の優先順位を変えることで成立します。
「便益/費用」の数値があると、利権が発生しないので、困る政治家がいるわけです。
4)一重盲検の方法
疫学では、検査の中立性を保つために二重盲検を行います。
費用対便益分析に、二重盲検を導入することは困難ですが、一重盲検にする必要があります。
この場合の費用対便益分析の留意点は以下です。
費用対便益分析の計画値とエビデンスに基づく実績値を区別する必要があります。
ここでは、エビデンスに基づく実績値としての費用対便益分析(第2の方法の「便益/費用」)について述べます。
検討すべき点は、2点あります。
第1点は、評価につかう「便益」と「費用」に何をいれ、その計測方法を決定することです。
第2点は、第1点に基づいて、前向き研究で、エビデンスのデータを計測して、「便益/費用」を計算することです。
政策実行には、予算案の作成者(立法)と予算案の実行者(行政)が必要であり、三権分立では、この2者は独立であることが求められます。
三権分立に基づけば、この2者の他に、予算案の評価者(司法)が必要になります。
ここでの司法は、裁判所のように、遵法しているか、会計検査院のように、予算が予定通りに執行されているかの点検に限りません。
予算案の評価者は、予算が効率的に使用されているかを評価します。
これは、司法の範囲にはおさまりませんが、権力の暴走(利権の乱用)をさけるために、必要な手順です。
つまり、第1点と第2点(特に第2点)は、予算案の作成者(立法)と予算案の実行者(行政)とは独立した機関が行う必要があります。
これらの手順が整備されれば、利権の方法も、魔女狩り裁判も避けることができます。