自民党総裁選と日本の行方

1)自民党総裁選の結果

 

自民党総裁選は、1回目投票で首位の高市氏が、決選投票では逆転を許して、石破氏になりました。

 

1回目投票で、小泉氏を支持した議員票が、石破氏にながれた結果であると思われます。

 

FNNは、「一回目の結果が大きく覆る大逆転劇ともいえる展開に、会場内からは大きなどよめきが起こり、涙を流す議員の姿もみられました」と報道していますので、予想外であった人も多かったと思われます。

<< 引用文献

麻生派高市氏支援が逆効果?石破氏“大逆転”で涙の議員も…小泉氏陣営や旧岸田派が石破氏支持に流れたか 2024/09/27 FNN

https://news.yahoo.co.jp/articles/62419dbd17f24e7bcf31e88a25c34304d47b3e64

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8月21日の加谷珪一氏の「総裁選有力候補」の経済政策の比較では、一番最後に次のように書かれています。

現時点で首相になる可能性は低いとされているが、高市早苗経済安保相も出馬を検討中だ。高市氏はアベノミクス継続と積極財政を主張しており、高市氏が首相になった場合には、金融政策は元の状態に戻る可能性が高い。

<< 引用文献

石破、河野、小泉…自民党の「総裁選有力候補」たちの「金融政策」を比べて見えてきたこと 2024/08\21 現代ビジネス 加谷珪一

https://gendai.media/articles/-/135918

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1か月前には、高市氏は、「首相になる可能性は低い」とみなされていたので、高市氏の政策の是非は、別にして、自民党総裁選では、日本の政治が急変する可能性があった訳ですが、自民党の国会議員は大きな変化を望まなかった(既得利権の維持を優先した)と見ることができます。

 

立憲民主党の野田代表も、大きな変化を提示していませんので、今後の日本の政治は、大きな変化は選択されなかったといえます。

 

しかし、大きな変化なしに、日本経済が、世界の競合企業と競走できる可能性は低いと思われます。

 

2)ベトナムのFPTの半導体開発

 

売れる半導体を作る条件は、良い設計ができる人材がいること(必要原因)と、製造工場を建設する資金があること(十分原因)からなります。

 

東洋経済の石阪友貴氏は、最近にインテルについて、次のように述べています。(筆者要約)

インテルは、2010年代前半までは、CPU市場で100%近いシェアをもっていました。インテルは、10nm以降の微細化競争で躓き、現在は、製造を台湾TSMCに委託していたAMDが台頭しています。また、アームのレネ・ハースCEOは「2030年までにはウィンドウズPCの過半がアームベースのCPUになる」と意気込んでいます。

 

パット・ゲルシンガーCEOが2021年に掲げた戦略の柱のファウンドリー事業への参入は、ファウンドリー事業で2025年内には1.8nm相当の次世代品を製造することでTSMCに追い付き、再び業界をリードすることを狙っています。インテルは事業立ち上げのためアメリカのアリゾナ州などで工場を建設。半導体サプライチェーンの国内回帰を促すアメリカのCHIPS法によって、最大85億ドルもの助成を受けることも決まっています。

 

2024年1〜6月期のファウンドリー事業の売上高87億ドルのうち、外部顧客への売上高はわずか1億ドルに過ぎません。

 

ファウンドリー事業の失敗とCPU市場での独占的な地位の喪失によって、S&Pによる格付けは、2023年から断続的に格下げが続き、8月にはトリプルB格に格下げされています。その下のダブルB格(投機的)になれば、負債性の資金調達は出来なくなります。

<< 引用文献

インテル「独り負け」招いたCEO肝煎り事業の混沌 2024/09/27 東洋経済 石阪 友貴

https://toyokeizai.net/articles/-/829497?display=b

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9月16日の日経新聞には、ベトナムのIT最大大手のFPTが、2030年までに、半導体製造の「後工程」に、参入する計画であると伝えています。FPTは、ソフトウェアの企業ですが、2022年から、半導体製造に参入しています。

 

木内里美氏は、2023年6月にベトナムFTPの開発センターを訪問した時の様子を報告しています。(筆者要約)

 

FPTコーポレーションの前身は、1988年創業の食品加工技術会社(The Food Processing Technology Company)で、1990年に技術開発への投資会社になり、現在は従業員4万2400人を擁する大企業です。FPTソフトウェアはグループ会社として1990年に設立されたベトナム最大級のIT企業で、2万6500人の従業員が在籍しているそうです。

 

訪問したFPTコンプレックスダナンビルは、FPTソフトウェアの開発拠点です。ビルは、2025年に完成すると、1万人の社員が勤務する拠点になる計画です。

 

敷地内には幼稚園から大学までの教育機関があります。FPTには教育事業グループがあり、13の市と省にFPT大学があり、合計すると15万人を超える学生が学んでいます。

 

 日本の大手IT企業で大規模な大学を運営しているところは1社もありません。業界全体にも大学を作って人材育成していこうという気概は感じられません。それでいていつも人材不足だと言い続けています。やるべきこと、やればできることをやっていないのだから当然だと思います。ベトナムと日本の決定的な違いは人材育成の仕組み作りにあります。

 

ダナンの開発センターの社員の平均年齢は26歳だそうです。今まではオフショア開発の受け皿のような役割を持っていましたが、FPTジャパンには2500人の社員がいてダイレクトの受注を目指しています。もう日本の大手IT企業の下請けではなく、競合会社になりつつあるのです。若い人材が多いベトナムの発展の勢いは凄まじいものがあります。今では数百のIT開発会社があり、日進月歩で進化しています。変わろうとしない日本のソフトウェア会社に勝ち目があると思いますか?

<< 引用文献

日本のソフトウェア会社はベトナムに勝てない─その決定的な理由 IMPRESS ITLeaders 木内里美

https://it.impress.co.jp/articles/-/25088

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人材育成は、必要原因です。

 

日本のソフトウェア会社が、GAFAMには立ちませんが、FPTに勝つことも難しいことがわかります。

 

高等学校の授業料の無償化よりも、カリキュラムを変えることを優先しなければ、変わりません。

 

石破氏の総裁が決まって、株価が下がり、円高になりましたが、大きな変化は、起きないと思われます。