6-2-4)Google Flood Hubの追記
Google Flood Hubに関連した情報を追加しておきます。
情報には、重複がありますが、整理はしていません。
(a)Artie Beaty氏の解説
Artie Beaty氏の解説は以下です。(筆者要約)
<
Googleは2018年から、人工知能(AI)を活用した洪水予測に取り組んでおり、その情報を「Flood Hub」や「Google検索」「Googleマップ」のほか、「Android」の通知を介して提供している。同社は一般公開されているデータを用いて、洪水が発生しそうな地域を最大7日前に予測する。これは現地の自治体や人道支援組織に対する警報として役立っている。
Flood Hubは米国を含む80以上の国々を網羅しており、4億6000万人を超える人々が住む多くの地域に対する予測を提供している。
洪水予測に関する同社の取り組みは、インドで最も洪水が多発している地域の1つであるパトナから始まった。同社は過去に発生した洪水や、河川の水位、地形、標高といった情報を予測モデルに入力し、数十万回におよぶシミュレーションを実行し、洪水マップを作成した。
その後同社は2019年に対象地域を12倍に拡大し、80万件のアラートを送信した
同社のAIモデルの進歩により、現在のFlood Hubはより正確に洪水を予測できるだけでなく、水位の測定ができない地域の予測もできるようになっている。同社によると、アフリカにおける洪水の予測は、欧州に比べても遜色がないという。
Googleはまた、その他の気候問題に対してもAIを用いて取り組んでいる。その1つとして、世界気象機関(WMO)と協力し、世界中の人々に対して気象関連の警報を発出できる早期警報システム「Early Warnings for All」(EW4All)を2027年までに開発したいとしている。
>
<< 引用文献
グーグル、洪水予測AIモデルの進化を報告 2024/03/25 CNET Japan Artie Beaty (Special to ZDNET.com)
https://japan.cnet.com/article/35216876/
>>
Artie Beaty氏の解説の要点は、以下です。
第1に、GoogleのAIを活用した洪水予測は、2018年から開発されており、そのコア技術は、生成AIのような大規模言語モデルではなく、その前の世代の技術です。
第2に、2027年までに、世界気象機関(WMO)と協力し、世界中の人々に対して気象関連の警報を発出できる早期警報システム「Early Warnings for All」(EW4All)を提供します。
現在の気象庁の予報は、県内の地方レベルです。
スマホであれば、都市レベルの予測が可能です。
2027年までに、GoogleはEW4Allサービスを開始すると予測されます。
日本のデータを非公開にしない限り、気象庁と日本の民間予報サービスが生き残れる可能性は、小さいと予測されます。DX後進国の日本のことですから、政府は業界とつるんで、データを非公開にする可能性があります。その場合には、日本の災害警報システムは、ベトナム、カンボジア以下になります。これは、日本では、スマホ決済や、自動車の自動運転が遅れていることの、災害警報での繰り返しになります。
(b)Nature の論文
2024年3月20日に、Googleは、Natureに、AIを活用した洪水予測の論文を掲載しました。
これは、AIを活用した洪水予測の技術が実用レベルになったという自負を示しています。
一部を引用します。
<
大規模な世界規模の洪水予測は長い間、実現不可能でした。本日発表された Nature の論文では、AI の進歩によってこのギャップが解消され、これまでデータが不足していた地域でも信頼性の高い洪水予測が可能になることを示しています。
洪水は最も一般的な自然災害であり、世界中で年間およそ500 億ドルの経済的損害をもたらしています。洪水関連の災害の発生率は、気候変動も一因となり、2000 年以降2 倍以上に増加しています。世界人口の 19% を占める約15 億人が、深刻な洪水事象による大きなリスクにさらされています。早期警報システムをアップグレードして、これらの人々が正確でタイムリーな情報にアクセスできるようにすることで、年間数千人の命を救うことができます。
信頼性の高い洪水予測が世界中の人々の生活に及ぼす潜在的な影響に駆り立てられ、私たちは2017年に洪水予測の取り組みを開始しました。この数年にわたる取り組みを通じて、私たちは何年もかけて研究を進め、Google 検索、マップ、Android 通知、およびFlood Hubを通じてアラートを提供するリアルタイムの運用可能な洪水予測システムを構築してきました。しかし、世界規模で、特に正確なローカル データが利用できない場所で拡張するには、さらなる研究の進歩が必要でした。
Natureに掲載された「観測データのない流域における極度の洪水の世界的予測」では、洪水関連データが不足している国々において、機械学習(ML)技術が現在の最先端技術に比べて世界規模の洪水予測を大幅に改善できることを示しています。これらのAIベースの技術により、現在利用可能な世界のナウキャストの信頼性を平均で0日から5日に拡張し、アフリカとアジアの地域全体の予測をヨーロッパで現在利用可能なものと同等に改善しました。モデルの評価は、欧州中期予報センター(ECMWF)と共同で実施されました。
これらの技術により、Flood Hub は80 か国以上の河川範囲をカバーし、最大 7 日先までのリアルタイムの河川予報を提供することもできます。この情報は、人々、コミュニティ、政府、国際機関が脆弱な人口を保護するための予防措置を講じるために使用できます。
コードの可用性
完全に機能するトレーニング済みモデルは、 https://doi.org/10.5281/zenodo.10397664 (ref. 45 )にあります。これらのトレーニング済みモデルは実行可能ですが、入力データ製品の配布ライセンスがないため、実行するには、関連する入力データを自分で取得して前処理する必要があります。入力データは次のソースから取得できます。NASA IMERG 降水量データ、https://gpm.nasa.gov/data。ECMWF HRES 予報データ、https://www.ecmwf.int/en/forecasts/datasets/set-i。ECMWF ERA5-Land データ、https://cds.climate.copernicus.eu/cdsapp# !/dataset/reanalysis-era5-land?tab=overview 。 NOAA CPC Global Unified Gauge-Based Analysis of Daily Precipitation data、https://psl.noaa.gov/data/gridded/data.cpc.globalprecip.html。さらに、このプロジェクト用に開発された予測モデルは(他のいくつかの AI 流量予測モデルとともに)NeuralHydrology コード ベース22に統合され、 https://neuralhydrology.github.ioで入手できます。NeuralHydrology フレームワーク内でこれらの研究グレードのモデルを使用すると、概念的に類似したモデルを独自の入力データセットで簡単に実行できます。この論文で報告されている図と分析を再現するためのコードは、https://github.com/google-research-datasets/global_streamflow_model_paperで入手できます。このリポジトリは、この論文で報告されているように、AI モデルと GloFAS 出力のメトリックを計算し、Zenodo データセット45 を必要とします。
>
<< 引用文献
How we are using AI for reliable flood forecasting at a global scale 2024/03/20 Google Yossi Matias Vice President, Engineering & Research
https://blog.google/technology/ai/google-ai-global-flood-forecasting/
Global prediction of extreme floods in ungauged watersheds 2024/-3/20 Natuer
https://www.nature.com/articles/s41586-024-07145-1
>>
AIを活用した洪水予測のモデル自体は公開されています。
(c)アカデミック分野との連携
アカデミック分野との連携について、Google のYossi Matias 氏 により開催されたイベントの記事があります。(筆者要約)
<
このイベントは、Google のYossi Matias 氏 によって開催され、最近の 機械 学習の取り組みと、それが洪水予測、危機対応、社会貢献のための AIにどのように関連しているかについて説明しました。その後、2 つの分野間の知識ギャップを埋めることを目的とした 2 つの入門セッションが行われました。1 つはETH チューリッヒのPeter Molnar 教授によるコンピューター科学者のための水文学入門、もう 1 つはテルアビブ大学とGoogleのYishay Mansour 教授による水文学者のための機械学習入門です。2 日間のイベントでは、洪水予測の分野全体にわたって、水文学と機械学習の両方の観点から、 さまざまな興味深い講演とポスター発表が行われました。
さらに、このワークショップでは、実験的な「ML コンサルティング」パネルを試行し、Google 社員の Gal Elidan、Sasha Goldshtein、Doron Kukliansky が、水文学関連のいくつかのタスクで機械学習を最も効果的に使用する方法についてアドバイスしました。最後に、水文学の専門家であるETH チューリッヒのPaolo Burlando 教授、ブリストル大学のDawei Han 教授、共同研究センターのPeter Salamon 博士、 Google Earth Engine のTyler Erickson 博士を招いて、洪水予測は、私たちのより大きなAI for Social Good の洪水予測における最大の課題と機会についてパネルをモデレートしてワークショップを締めくくりました。
>
<< 引用文献
Using AI to expand global access to reliable flood forecasts 2024/03/20 Google Yossi Matias Vice President, Engineering & Research
https://research.google/blog/using-ai-to-expand-global-access-to-reliable-flood-forecasts/
Prof. Dr. Peter Molnar, Lecturer at the Department of Civil, Environmental and Geomatic Engineering, ETH Zürich
https://hyd.ifu.ethz.ch/the-group/people/person-detail.html?persid=100330
Yishay Mansour, School of Computer Science, Tel Aviv University
https://www.cs.tau.ac.il//~mansour/
>>
Flood Hubは、インドにモデル流域を設定して研究が始まりましたので、ワークショップには、インドからの参加者もいます。
しかし、日本の大学が、ワークショップに対応できているのかは不明です。
また、欧州中期予報センター(ECMWF)、世界気象機関(WMO)と同じレベルで、気象庁が対応できているのかも不明です。
(d)ピチャイ氏の公演:
2024年9月には、第 79 回国連総会 (UNGA)が開かれています。この総会では史上初の「未来サミット(UN Summit of the Future)(20日と21日アクションデイ、22日と23日サミット)」も開催されています。
未来サミットの説明を引用します。
<
未来サミットとは何ですか?
サミットは、より良い現在を実現し、未来を守る方法について新たな国際的合意を形成するために世界の指導者が一堂に会するハイレベルのイベントです。
効果的な国際協力は我々の生存にとってますます重要になっていますが、今日の政治的、経済的現実を反映しなくなった時代遅れの構造では、不信感の雰囲気の中ではそれを達成するのは困難です。
この一世代に一度あるかないかの機会は、失われた信頼を修復し、国際協力によって合意された目標を効果的に達成し、新たな脅威や機会に対処できることを示す機会となります。
9月には、世界の指導者たちが国連に集まり、「未来のための協定」を採択する予定。この協定には、「世界デジタル協定」と「将来世代に関する宣言」が付属文書として含まれます。
>
<< 引用文献
What is the Summit of the Future?
https://www.un.org/en/summit-of-the-future/about
>>
「UN Summit of the Future」の21日のアクションデイのために、Googleのピチャイ氏が準備した原稿が公開されていますので、その一部を引用します。
<
導入
今日は、次の 3 つの点について主張するためにここに来ました。
AIが変革をもたらすと私が信じる理由
それを人類に利益をもたらし、国連の持続可能な開発目標の達成にどう役立てるか
そして、テクノロジーがすべての人に利益をもたらすよう、より深いパートナーシップを推進できる場所
Google 検索は情報へのアクセスを民主化し、教育や起業の機会を広げました。Chrome や Android などのプラットフォームは、10 億人の人々をオンラインに導くのに貢献しました。
現在、当社の 15 種類の製品は、それぞれ 5 億人以上の個人や企業に利用されています。また、検索、マップ、ドライブなど 6 種類の製品は、それぞれ 20 億人以上に利用されています。これらの製品は無料で使用でき、ユーザーのほとんどは発展途上国にいます。
AIのチャンス
1 つは、人々が自分の言語で世界の情報や知識にアクセスできるように支援することです。
AI を活用して、昨年だけで、世界中の 5 億人が話す 110 の新しい言語を Google 翻訳に追加しました。これで合計 246 の言語がサポートされ、世界で最も話されている言語の 1,000 言語のカバーを目指しています。
2 番目の分野は、人類に利益をもたらす科学的発見を加速することです。
AlphaFold の画期的な進歩は、タンパク質や DNA など、生命の構成要素の一部を予測する上での大きな課題を解決しています。AlphaFold は科学コミュニティに無料で公開されており、190 か国以上から 200 万人以上の研究者が利用しています。そのうち 30% は発展途上国で、たとえばブラジルだけでも 25,000 人以上の研究者が利用しています。世界中で、AlphaFold は、作物の病気に対する耐性向上、マラリアワクチンや癌治療などの分野での新薬発見などに役立つ可能性のある研究に使用されています。
3 つ目の機会は、国連の「すべての人への早期警告」イニシアチブに基づいて、気候関連災害の進路にいる人々を支援することです。当社の洪水ハブ システムは、最大 7 日前に早期警告を提供し、80 か国以上で 4 億 6,000 万人以上の人々を保護するのに役立っています。
また、山火事の進路上にいる何百万人もの人々のために、Google マップ上で境界追跡システムはすでに 22 か国で利用されています。また、FireSat テクノロジーも発表しました。これは衛星を使用して初期段階の山火事を検知および追跡し、世界中で 20 分ごとに画像を更新して消防士が対応できるようにするものです。AI によって精度、速度、規模が向上します。
4 番目に、私たちは AI が経済発展に大きく貢献する機会があると考えています。AI はすでに起業家や中小企業を支援し、政府が公共サービスを提供できるようにし、さまざまな分野の生産性を向上させています。いくつかの調査によると、AI は今後 10 年以内に世界の労働生産性を 1.4 パーセントポイント向上させ、世界の GDP を 7 パーセント増加させる可能性があります。
たとえば、AI は、接続性、インフラ、交通渋滞が大きな課題となっている新興市場での業務と物流の改善に役立っています。エチオピアの貨物スタートアップ企業 Gary Logistics は、AI を使用して商品をより速く市場に届け、フリーランスのドライバーにより多くの仕事の機会を提供しています。
AIのリスク
私たちは、2018 年に公開した AI 原則に従って活動しています。また、フロンティア モデル フォーラム、OECD、G7 広島プロセスなどの取り組みにおいて、業界、学界、国連、政府などさまざまな組織と協力しています。
AIの格差を防ぐ
AI があれば、最初から包括的になり、デジタル格差が AI 格差にならないようにすることができます。これは、民間部門と公共部門が協力して取り組む必要がある課題です。私たちは、次の 3 つの主要分野に焦点を当てることができます。
促進的な政策環境
3 つ目の分野は、有効な政策環境を創出することです。新しいテクノロジーに伴うリスクと懸念の両方に対処し、大規模な生活向上につながるようなアプリケーションを奨励する環境です。
>
<< 引用文献
UN Summit of the Future: AI opportunity for everyone 2024/09/21 UN/Google Sundar Pichai
CEO of Google and Alphabet
https://blog.google/inside-google/message-ceo/united-nations-keynote-2024/
>>
ピチャイ氏は、AIの活用が有効な分野を4つあげています。
Flood Hubはここに含まれています。
(e)Debbie Weinstein氏の論文:
Weinstein氏は、AI の可能性を最大限に引き出すために必要な包括的な AI 機会計画の素案を提出しています。説明の一部を引用します。
<
AIが英国に新たな機会をもたらす方法
英国の AI の可能性を最大限に引き出すには、包括的な AI 機会計画が必要です。
英国は科学技術のリーダーシップの豊かな伝統を持っていますが、AI の可能性を最大限に引き出すには、包括的な AI 機会計画が必要です。そのため、本日、私たちは新しい論文「英国の AI の可能性を解き放つ」を発表しました。
英国では 70 年以上前に近代コンピュータ サイエンスの基礎が築かれ、英国のリーダーたちは長年にわたりデジタル テクノロジーの進化における大きな進歩を先導してきましたが、AI も例外ではありません。英国の強力な学術および研究開発のリーダーシップにより、世界をリードする AI 研究機関や Google DeepMind などの先駆的な AI 企業が英国で成長し、繁栄し続けています。
AI の変革の可能性は、英国にとって政策立案の初期段階でありながら重要な局面にあることを意味します。AI を活用したイノベーションは、2030 年までに 4,000 億ポンドを超える経済価値を生み出し、英国経済のあらゆる分野で生産性を大幅に向上させる可能性があります。また、差し迫った社会問題の解決や基礎科学の進歩にも役立つ可能性があります。
この論文では、AI インフラへの投資、思慮深い労働力戦略、AI への普遍的なアクセスという 3 つの主要な行動領域を検討し、これらが英国の成功にとっていかに重要になるかを概説しています。各領域には、国立研究クラウドや国立技能サービスを求める私たちの呼びかけなど、真に変革の可能性を秘めた推奨事項があります。
国立研究クラウドは、コンピューティング能力とコンピューティングツールへの重要なアクセスを提供し、容量と配信の焦点の両方の観点から英国が包括的なコンピューティング戦略を開発できるようにする共同環境を促進します。
我々が提案する国家技能サービスはこれを補完し、英国の雇用主と労働者に生涯学習の新しいプラットフォームと認定システムを提供します。これにより、スキルセットを備えたより多くの人々が価値の高い仕事に就くことができるようになり、AI の潜在能力を最大限に発揮するための適切な条件を提供する英国の政策枠組みの利点を活用できるようになります。
新政権が経済成長を促進する独自の道を歩み始める中、成長と AI に対する英国の取り組みについて大きな決断を下す時が今です。次の議題が課題に立ち向かうことができれば、英国を投資と成長の国にする AI の機会が実現するでしょう。そして、私たち Google は、その役割を果たす準備ができています。
>
<< 引用文献
How AI can bring new opportunity in the UK 2024/09/19 Debbie Weinstein Vice President of Google and Managing Director of Google UK & Ireland
https://blog.google/around-the-globe/google-europe/united-kingdom/ai-potential-uk/
Unlocking the UK’s AI Potential
>>
AI 機会計画は、AI の可能性を最大限に引き出すために必要な条件を整理したものです。
Weinstein氏は、英国を対象に発言していますが、役職は、「Vice President of Google and Managing Director of Google UK & Ireland」で、IT先進国の Irelandの動向も反映しています。
野口悠紀雄氏は、<生成AI開発・活用は成長戦略の柱なので、自民党総裁選は「デジタル化」加速の議論>をすべきであるといいます。
<< 引用文献
自民党総裁選は「デジタル化」加速の議論を、生成AI開発・活用は成長戦略の柱 2024/09/19 Diamond 野口悠紀雄
https://diamond.jp/articles/-/350682
>>
しかし、ピチャイ氏の公演とWeinstein氏の論文にみるように、第1段階の草稿をつくる議論は既に、終っています。
Google AI Principles(2018)の日本語版は以下にあります。
<< 引用文献
Google と AI : 私たちの基本理念 2018/06/11 Sundar Pichai
https://blog.google/intl/ja-jp/company-news/technology/2018_06_ai-principles/
>>
2016年12月にThe IEEE Global Initiative for Ethical Considerations in Artificial Intelligence and Autonomous Systemsは「倫理的に調和したデザイン(Ethically Aligned Design)」のバージョン1を公開しました。
2017年1月、イーロン・マスクらによる非営利団体のFuture of Life Institute (FLI)は、「アシロマAI原則(Asilomar AI Principle)」を公開し、特に自律型兵器(Autonomous Weapons)について議論を進めました。
<<引用文献
AI Principles Japanese 2017/08/02
https://futureoflife.org/open-letter/ai-principles-japanese/
>>
Google AI Principles(2018)はこれらを参考に、2018年に出されています。
日本では、「人工知能学会 倫理委員会」が活動しています。
(f)Bloombergの記事:
2027年までに、GoogleがEW4All(Early Warnings for All)を提供したら、気象庁と民間気象予報サービスで働いている人は、失業するのでしょうか。
この検討は、「洪水対策の話」を中心にしているので、EW4Allが問題になります。しかし、今後、AIによって失業する人が出て来ることは、日常茶飯事になるはずです。
もちろん、AI(科学)を受け入れるか、拒否するかは選択の問題ですが、AI(科学)を拒否すれば、生産性の罠(競合国に比べて生産性で負けて輸出ができなくなる)にはまって、経済的な破綻を受け入れることになります。
最近のBloombergの記事が参考になるので、引用します。(筆者要約)
<
中国共産党の習近平総書記(国家主席)が世界2位の経済大国を再構築すると決めたことで、何百万人にも上る中国市民の生活が一変した。
今世紀の中国経済成長をけん引してきた金融や消費者向けテクノロジー、不動産などの産業は今や時代遅れとなった。
金融業界では、「一流大学を卒業しても仕事がないし、海外留学組も就職できない。昇給はもはや努力とは関係なくなった」という。
コンサルティング会社、可研智庫のデータによると、不動産バブルの急激な崩壊により23年末までの3年間で約50万人が失業した。
消費者向けテクノロジー業界では、ブルームバーグがまとめたデータによれば、この業界に対する政府の締め付け以降、合わせて6万3000人以上の雇用が失われている。
代わりに、毛沢東初代国家主席以来最も強力な中国指導者となった習氏は、電気自動車(EV)や半導体製造などの事業に資源を集中させている。
ブルームバーグ・エコノミクス(BE)は中国の国内総生産(GDP)について、ハイテク産業が18年の11%から26年には19%を占めるようになると予測している。
長期的な観点からすれば、こうした状況は本質的な問いを投げかけている。つまり、最も優秀かつ有能な働き手の一部の意欲と士気を低下させると、経済にどのような影響が及ぶのか、という問題だ。
ケンブリッジ大学のクリストファー・マーキス教授は「中国の労働力に潜む危険な兆候」だと分析している。「中国経済の奇跡を推進する役割を担ってきた彼らの幻滅は、勤勉さによる繁栄という共産党の主張に疑念を抱かせるものであり、より広範な社会危機につながる恐れがある」とみている。
習氏にとって、中国経済成長をけん引してきた金融、消費者向けテクノロジー、不動産などの産業は今や時代遅れの分野で失業者が出るという痛みは必然的な犠牲であるという意見もある。
米国が先端テクノロジーの対中輸出を認めず、台湾を巡る軍事的緊張が高まる中で、習氏は中国を最先端製造業の大国に自立させる決意を固めている。
>
<< 引用文献
中国の勝ち組直撃、数百万人幻滅-有能な働き手の士気そぐ危うい政策 2024/09/20 Bloomberg
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-09-19/SK1ESET0AFB400?srnd=cojp-v2
>>
習氏は、中国経済成長をけん引してきた金融、消費者向けテクノロジー、不動産などの産業から、電気自動車(EV)や半導体製造などの事業に資源を集中させています。
その結果、金融、消費者向けテクノロジー、不動産では、大量の失業者が出ています。
Bloombergの記事を読む場合に、考慮すべき点を整理します。
第1は、産業構造の変換を、習氏と中国共産党に恣意的な産業政策に原因があると考えるのか、デジタル社会へのレジームシフトに伴っておこる必然的(不可避)な社会構造の変化に原因があるのかという点で、意見が分かれると思われます。
ケンブリッジ大学のマーキス教授は、前者に原因があるという意見ですが、Weinstein氏の論文にみるように、英国は安泰であるとは言えません。少なくとも、アイルランドに比べれば、問題は多いと思われます。
第2に、金融、消費者向けテクノロジー、不動産に大量のエンジニアがいる理由は、中国がエンジニア教育を拡充した結果であるという点です。
今後、金融、消費者向けテクノロジー、不動産の高等教育の定員枠が減少する可能性が高いですが、これは、これから、第2段階の高等教育の調整が起こる可能性を示唆します。
日本の場合には、高等教育の7割は文系で、中国の第1段階の調整すら済んでいません。
DXを使うのは人間ですから、デジタル人材がいなければ、それだけ、生産性はあがりません。
数学と統計学の出来ない人にリスキリングすることは不可能です。
これは、日本がデジタル社会へのレジームシフトに成功したとしても、中国以上の広範な社会危機が生じることを意味します。
中国のように、金融、消費者向けテクノロジー、不動産の高度人材が失業する状況になれば、その前に、大学定員の7割の文系人材が失業するはずです。
Weinstein氏は「英国の AI の可能性を解き放つ」を発表しましたが、それに相当する素案を提示できる専門家は日本にはいません。
日本は、デジタル教育の問題を放置しましたので、「リスクエリアを氾濫原エリアに指定すること」を放棄したツケを払っているように、これから、デジタル教育の問題を放置したツケを払うことになると思われます。
(g)Flood Hubのサンプル
Flood Hubのサイトは以下です。
Flood Hub
https://sites.research.google/floods/l/0/0/3?layers
イメージをつかむために、9月23日にアクセスしたサンプルを示します。
実測データは、9月22日までで、それ以降が予測になっています。
図1は、ワイドエリアの表示で、6角形でブロックが示されています。
赤色が危険を意味して、インドシナ半島の中央とベトナムのメコンデルタとインドに表示が見えます。
地図は、地図表示とハイブリッドが選べます。
図2以降は、詳細表示で、6角形のブロックの代わりに、データポイントが地図に示されています。
図2以降では、ハイブリッド表示を選択しています。
図2は、カントー(ベトナム)の水位予測です。9月22日に、危険水位を超えています。予測では、これから水位は下がります。
図3は、プノンペン(カンボジア)の水位予測です。9月22日に、警告水位を超えています。予測では、危険水位には達しません。湛水エリアは紺色に表示されています。
図4は、ウドンタニ(タイ)の水位予測です。9月22日に、危険水位を超えています。予測では、これから水位は下がります。
東北タイのメコン川沿いは、緑色のマーク(平常)です。
東北タイの洪水は、メコン川の支川で発生していることがわかります。