メンタルモデルの話(1)

1)自民党総裁選の話

 

1-1)討論会

 

2024年9月には、自民党総裁選の討論会が行なわれました。

 

高市氏は、政府の資産と債務の双方で見れば、財政に問題はないと発言しています。

 

河野氏は「徐々に金利が上がりつつある中で、日本の政府債務は非常に大きい」と金利についてふれています。

 

高市氏は、今の状態で、PBの問題はないという立場です。

 

高市氏以外の候補は、PBの問題はあるが、財源は明示していません。

 

<< 引用文献

[2024自民総裁選]経済成長・国民負担軽減を訴える各候補、財源の議論は深まらず…財政規律「重視」は少数派  2024/09/19 読売新聞

https://www.yomiuri.co.jp/politics/20240919-OYT1T50022/

>>

 

1-2)加谷氏の指摘

 

加谷珪一氏は、PBを次のように、説明しています。

 

PBというのは政策経費などが税収などで賄われているのかを示す指標であり、国債の利払い費用は含まれていない。

 

日本経済は本格的なインフレ・モードに入っており、利払い費が急激に増える可能性があり、利払い費を除いた指標で議論しても、意味がなくなってしまうのだ。

 

今後、成長率よりも金利上昇幅が大きい状態では、利払いも含めた指標を導入しなければ意味がない。

 

PBが財政健全化目標となったのは小泉政権下における2002年度の「骨太の方針」からであり、当時の経済財政担当大臣は竹中平蔵氏だった。両氏によるPB採用はある種の政治的なレトリックだった。

 

政府の財政健全化目標に利払い費を除いたPBを採用すれば、表面的には財政健全化目標をしっかりと掲げ、財政規律を重視しているというメッセージを市場に送りつつ、利払い費を気にせずに国債の増発が可能となる。

 

金利を背景に、見えにくい形で、従来の財政収支目標よりも甘い数字を設定できるところがPB導入最大のメリットということになるだろう。市場を味方につけると同時に、予算拡大を望むグループとの妥協を図れるという点で、PBはある種、魔法の杖であった。

<<

ニュースは報じない…「プライマリーバランス黒字化の見込み」、じつは「ほとんど無意味」だった 2024/07/31 現代ビジネス 加谷珪一

https://gendai.media/articles/-/134683

>>

 

加谷珪一氏の説明の要点は、2点です。

 

第1に、PBの目的は、財政の健全化ではなく、国債の増発を可能にする目的がありました。

 

第2に、利払いを無視したPBには意味はありません。

 

1-3)メンタルモデルの課題

 

自民党総裁選の討論会を報道するマスコミは、主張を並べているだけです。

 

この方法では、どの主張が正しいのかという議論ができません。

 

つまり、メンタルモデルの共有ができていないので、コミュニケーションが成立していません。

 

コミュニケーションが成立するためには、どうして意見が一致しないのかという理由を明らかにする必要があります。

 

つまり、議論の前提の違いを整理する必要があります。

 

筆者が考える前提は以下です。

 

第1に、問題満載ですが、名目のPBを問題にする立場があります。

 

第2に、高市氏がいうように、公開されている財政データでは、実態がわかりません。

 

本予算では、骨太の方式に従うように言いながら、実態は、閣議できまってしまい国会の議論すらない補正予算でルールは守られません。

 

第3に、加谷珪一氏がいうように、インフレ率と国際の償還金の検討が必要です。

 

第4に、これは、誰も言わないのですが、人口が減っているので、歳出をそれに合わせて、縮小しなければ、税負担が増えつづけます。

 

これは、政府も、政党も、マスコミも、民主主義の基本ルールをまもっていないことを示しています。

 

これは、あまりに単純な話に思われるかもしれませんので、次回以降、事例を追加して説明します。

 

メンタルモデルの共有は、教育の基本条件なので、まともな教育を受けていれば、ここで躓くことはありません。

 

それだけ、根が深い問題でもあります。

 

また、年功型組織で、上司の命令に疑問を持たずに従うと考えることは致命的な間いになります。

 

自民党総裁選で解雇規制緩和の話がでていますが、常識的に考えれば、解雇規制緩和が実現すれば、経営者の半分以上は、株主によって解雇されるはずです。

 

これは、アメリカ株と、日本株のパフォーマンスの差を見れば当然の結論です。

 

東証は、株式市場改革をしています。

 

しかし、アメリカ株と日本株を比べた場合、例えば、アメリカのYahooファイナンスに匹敵するデータが、日本株では、手に入りません。

 

これは、日本株の評価が困難であり、リスクが高いことを示しています。

 

DXが遅れれば、こうなります。DXの遅れている国の企業を相手にするのは、手間が多くてわりにあわなくなっています。