1)2つの選挙
アメリカの大統領選挙は、2024年11月5日に行われます。
自民党の総裁選挙は、9月27日に行なわれます。
2)選挙と経済政策
1992年に、米国大統領選挙の戦略家のカービルは、選挙運動関係者の内部向けに、選挙運動のメッセージを伝えるために、ビル・クリントンのリトルロック選挙本部に次のような看板を掲げました。
Change vs. more of the same.
The economy, stupid
Don't forget health care.
2番目の文は、「It's the economy、 stupid(大事なのは経済。そんなことも分からんのか!)」と変形して流行しました。
このフレーズはアメリカの政治文化で頻繁に繰り返されるSnowcloneとなり、通常は「it's(それは)」という言葉で始まり、解説者は時々「economy(経済)」の代わりに別の言葉を使います。
Snowcloneは、2004年に造られた単語で、複数のバリエーションで使用され、認識される決まり文句とフレーズのテンプレートです。
現在でも、アメリカの大統領選挙では、論点を3つ程度要約します。
そして、その3項目の中から、経済政策がなくなることは、よほどの好景気でなければ、ないでしょう。
3)大統領選挙
安田佐和子は、カマラ・ハリス氏の経済政策について述べていますが、基本的にばら撒き政策です。
<< 引用文献
カマラ・ハリスに忍び寄る「不吉なデータ」…全米の世論調査でトランプを逆転したものの、新たに判明した「意外な事実」2024/08/22 現代ビジネス 安田 佐和子
https://gendai.media/articles/-/135898?imp=0
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これは、民主党が大きな政府を主張する政党なので、理解できる政策です。
一方の共和党は、伝統的には、小さな政府を目指す政党でした。しかし、トランプ氏が、この基本を壊しました。トランプ氏の政策も、基本的には、ばら撒きです。
つまり、誰が大統領になっても、生産性の向上は政策には、入っていません。
3)自民党の総裁選挙
自民党の総裁選挙の候補者の経済政策を加谷珪一氏が分析しています。
といっても、ほとんどの候補の経済政策は未定です。
<< 引用文献
石破、河野、小泉…自民党の「総裁選有力候補」たちの「金融政策」を比べて見えてきたこと 2024/08/21 現代ビジネス 加谷珪一
https://gendai.media/articles/-/135918
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結局、自民党の総裁候補者は、経済政策には、関心がないことがわかります。
誰が、総裁になっても、「新しい資本主義」のように、総裁になってから、経済政策を考えると思われます。
議員報酬はなかりよいので、自民党の総裁候補者は、経済政策に差し迫った必要性を感じないのかも知れません。
4)庶民の懐
2019年6月、金融審議会が、老後資金として2000万円必要との報告「高齢社会における資産形成・管理」をまとめました。
野口 悠紀雄氏は、この数字は、「持ち家であり健康であることを前提にした支出想定」であり、一般に、必要な金額を3700万円と推定しています。
<< 引用文献
実は2000万円では全く足りず3700万円強が必要な老後資金、健康・持ち家が命運を分ける不足分の深刻な内訳 2024/01/07 現代ビジネス
https://gendai.media/articles/-/121318
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政府は、100年安心年金を半ば放棄して、老後資金として2000万円必要であるといい、さらに、NISAをつかって、投資するように誘導しています。
筆者は、100年安心年金が実現可能であるとは考えていません。
しかし、仮に、100年安心年金が実現不可能であれば、不可能であると明示すべきです。
そうすれば、給与が絶対的にたりないという議論になります。
2022年の厚労省『国民生活基礎調査』によると、世帯主が65歳以上の高齢世帯の平均貯蓄額は1625万円です。
3000万円までを500万円階層でみると、最も多いのは貯蓄3000万円以上の世帯で、全体の16.5%あります。2000万円以上の世帯の割合は、26.4%です。
しかし、舞田敏彦氏は、高齢世帯の貯蓄額の中央値は700万円であるといいます。
ゼロが、12.9%、200万以下が、31.8%あります。
<< 引用文献
「平均は格差を隠す」平均値だけを見ても格差の実態は見えない 2024/08/21 Newswwek 舞田敏彦
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2024/08/post-105483.php
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「It's the economy、 stupid」は正しいといえます。
5)経済対策の基本
給与を上げるためには、生産性を上げる必要があります。
リチャード・カッツ氏は、この点を明快に説明しています。
<< 引用文献
「日本経済」が韓国に追い抜かれた納得できる理由 同じ構造的問題を抱えながら何が差を生んだ? 2022/03/07 東洋経済 リチャード・カッツ
https://toyokeizai.net/articles/-/536058
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