関連して、追加で紹介したい事例があったので、書いておきます。
7)山本昌弘氏の話
鰻専門のチェーン店「鰻の成瀬」を経理しているフランチャイズビジネスインキュベーションの山本昌弘代表のインタビューがSPAにのっていました。
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山本昌弘氏は、人と同じことをするのが大嫌いで、英語圏に留学しても特別感ゼロなので、高校卒業後、イタリアに留学しています。
特別性を身につけるために留学したのに、帰国してみると日本にはイタリア語を生かせる場が全然なかったそうです。
山本昌弘氏は、将来の起業を胸に、英会話スクールのECC、ハウスクリーニングのおそうじ本舗と、一貫してFC業界を歩みます。
26歳で転職したおそうじ本舗では、FCビジネスの入り口から出口までのすべてを学びます。山本昌弘氏は、当時20代後半でしたが、100以上の店舗を担当し、加盟店の解約率を1割以内に収めることができました。
給料だけはバンバン上がったものの、自分には、社会適応能力があまりないので出世はできなかったそうです。結果さえ出せばいいと思っていたんですが、日本の会社は結果より和を重んじる企業風土で、中間管理職が評価してくれず、出世は叶わなかったそうです。
ところが、会社が海外のファンドに身売りするや、一気に管理職に抜擢されました。よしよし! このまま行くぞ、と思っていたら、今度は国内ファンドに会社が売られてしまい、また出世がピタッと止まったそうです。
山本昌弘氏は、会社の社会に適合できないから自分で会社を起こしたそうです。
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「鰻の成瀬」社長が語る驚きの経営戦略「鰻に触ったこともないし、究極の美味しさも求めていない」2024/07/03 SPA
https://nikkan-spa.jp/2005745/2
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「日本の会社は結果より和を重んじる企業風土」とは、会社が中抜き経済で出来ていることを示しているように思われます。
「結果より和を重んじる企業風土」は、法度制度のミームと思われます。
安田隆夫氏が指摘するような「守る」経営と、山本昌弘氏の「結果より和を重んじる企業風土」は、市場経済原理が成り立っていないことを示しています。
「国内企業=>海外のファンド=>国内ファンド」と経営主体が代ることは、因果モデルでは、介入に他なりませんので、人事評価が、「結果より和を重んじる企業風土」に左右されるという山本昌弘氏の仮説には、交絡因子はないと思われます。
日本経済の最大の障害は、法度制度にあると言えます。
8)林 壮一氏の大学事情の解説
林 壮一氏は、最近の大学事情について書いています。
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2024年4月26日の『ワシントンポスト』に「現在、1週間に1度のペースで大学が閉鎖されている」と報道しました。
米国では4年制大学の10校に1校が財政危機に陥っており、今後、確実に潰れていくと予想されています。
『大学通信』の情報調査・編集部部長の井沢秀氏へのインタビューの結果を昇華しています。
私立大学の53パーセントが定員割れしています。
早慶上智、GMARCH、関関同立(関西学院、関西、同志社、立命館の略)までの、所謂私立TOPグループの塊は、志願者が増えています。
一方、早稲田だけは、志願者が大幅減になっています。
共通テストの利用が始まった2021年に、文科省が思考力、判断力を見る指針で大学入試改革を進め、早稲田は、これに応じて入試改革をしました。
その結果、政経は数1を必須とし、英、国、社で受けやすかったパターンが通じなくなってしまっています。政経学部以外にも、入試改革を拡充していって、国立型の勉強をしてきた受験生が有利になりつつあります。
早稲田は、1970年代中盤より続いていた10万人の志願者を割っています。受験生が、早稲田は難しいと感じたからですよ。しかしながら、早稲田は志願者が減ったことを問題としていないそうです。
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<< 引用文献
潰れる大学・生き残る大学…私立大では早稲田が圧倒的に優れていると言える「納得の理由」2024/07/3 現代ビジネス 林 壮一
https://gendai.media/articles/-/132727
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この記事では、021年に、文科省の大学入試改革の結果、数学を必修科目にしたように読めます。
正確に発言を書くと次になります。
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文科省が学力三要素―知識、技能に加えて思考力、判断力、それを活用する能力を、しっかり見なさい、という指針で大学入試改革を進めたんですね。
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「思考力、判断力、それを活用する能力」が数学なしに成立するはずがありません。
コロナウィルスのワクチンには副作用があるから、ワクチンを打たない人がいます。
ワクチンを打たない人が、確率を理解していない場合には、説得することはできません。
「思考力、判断力、それを活用する能力」という言葉の意味は、コンテキストで異なります。
「思考力、判断力、それを活用する能力」という言葉は、コンテキストを離れて理解不可能です。
「思考力、判断力、それを活用する能力」と書く代わりに、数学を必修にして、文系を廃止すれば良いだけです。
筆者には、「思考力、判断力、それを活用する能力」は、数学の部分集合にしかみえません。
{X;「思考力、判断力、それを活用する能力」かつ「数学」}が空集合になっているはずです。
仮に、この仮説が正しいとすれば、文部科学省は、言っていることと実施していることが一致してない(空集合)ことになります。
文部科学省は、できるだけ大学を減らさない方針ですが、この方針と「思考力、判断力、それを活用する能力」は、矛盾しています。
教育効果のない大学は、税金の無駄遣いなので、閉鎖すべきです。
学習する素材は、クラウド上に沢山ありますので、出席に関係なく、学習が到達していれば、卒業証書を出すべきです。