1)維新の発言
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国会議員に月100万円支給される旧文通費は使途公開の必要がなく、維新は制度の見直しを主張してきました。
岸田文雄首相は5月31日の維新との党首会談で、旧文通費について「前向きに議論を行い、使途公開と残金返納を義務付ける立法措置を講ずる」との合意文書をかわしました。
自民党の浜田靖一国対委員長は6月11日、調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)の改革に関し、「すぐに解決する話にはなっていない。日程的に厳しい」と述べ、6月23日までの今国会中に成案を得るのは困難と国会内で記者団に語りました。
馬場氏は、6月11日に、記者団に「『うそつき内閣』と言っても過言ではない。約束を破るなら最大限の力で自民を攻撃する」と批判し、参院で審議中の規正法改正案の採決で、反対も辞さない考えを示しました。
岸田文雄首相は6月12日、調査研究広報滞在費(旧文通費)の使途公開に向けた関連法改正について、「早期に結論を得たいとの思いは変わっていないが、具体的な実現時期は合意文書に記載されていない」とも言及しました。
維新の東徹氏は、規正法改正案を審議する6月12日の参院政治改革特別委員会で、「(旧文通費と)パッケージでやってきた。このままでは(参院採決で)賛成できない」と断言しました。
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<< 引用文献
文通費改革、今国会は困難 自民幹部言及、維新反発「うそつき内閣」 2024/06/11 JIJI.com
https://www.jiji.com/jc/article?k=2024061100744&g=pol
旧文通費めぐり首相「時期は合意文書にないが早期に」 維新は反発 2024/06/12 朝日新聞
https://www.asahi.com/articles/ASS6D36DZS6DUTFK018M.html
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5月31日の合意文書が、6月11日には、反故にされたので、約束は、11日しか持たなかったことになります。
これは、政党間の約束ですから、政府と国民の間の約束よりは、守られる可能性が高いです。
政治家は、選挙の時の公約を、当選後に、守らないケースが多いと言われています。
発言内容の賞味期限が、2週間未満の場合には、全ての議論が成立しなくなります。
2)議論が不可能なこと
2024年6月4日に閣議は、統合イノベーション戦略2024を決定しています。
中止となる強化方策は以下の通りです。
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「統合イノベーション戦略2024」では、3つの強化方策として、「重要技術に関する統合的な戦略」、「グローバルな視点での連携強化」、「AI分野の競争力強化と安全・安心の確保」を打ち出すとともに、従来からの3つの基軸についても着実に推進することとしています。
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<< 引用文献
統合イノベーション戦略2024 (2024年6月4日閣議決定))
https://www8.cao.go.jp/cstp/tougosenryaku/2024.html
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野口 悠紀雄氏は、アメリカの転職情報サイトlevels fyiの報酬レポート Pay Report 2022の数字を紹介しています。
<以下は、2022年末の時点におけるソフトウェア・エンジニアの年間報酬の中間値を、世界の主要都市別に示したもの(ストックオプション、ボーナスを含む)です。
東京の値は6.9万ドル(22年末の市場レート、1ドル=130円では、897万円)です。
アメリカでは、サンフランシスコが23.4万ドル(2500万円)、ニューヨークが18.7万ドルです。
アメリカに限らず、外国の値は、軒並み東京より高くなっています。
2023年版では、日本は番外になってしまって、レポートに掲載されなくなってしまっています。
グーグルのトップのつぎのL9という階級(Distinguished Engineer:卓越したエンジニア)の、年間報酬は260万ドル(1ドル=150円で、3億9300万円)です。内訳は、基本給が37万ドル、ストックグラントが207万ドル、ボーナスが15万ドルです。
L6(Staff)は、年収53万ドル(7950万円)です。内訳は、基本給が25万ドル、ストックグラントが23万ドル、ボーナスが5万ドルです。
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<< 引用文献
日米給与格差が信じられないほどに開いてしまった、特に専門分野では 2024/04/14 現代ビジネス 野口 悠紀雄
https://gendai.media/articles/-/127501?imp=0
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つまり、高度人材の国外流出はとまりませんので、「AI分野の競争力強化と安全・安心の確保」は、実現不可能です。
日本以外の国では、ジョブ型雇用を採用しています。その場合、日本のように、若年層の給与が高齢者の給与の3分の1になることがありません。
年功型雇用を、ジョブ型雇用に切り替えれば、若年層の給与は、2から3倍になります。
年功型雇用と非正規雇用を維持して、子育て支援の補助金をバラまくことは、まやかしにすぎません。
当たり前ですが、若年層の給与が2倍になれば、子育て支援の補助金は、ほとんどの場合、不要になります。
「統合イノベーション戦略2024」は、利権のキャッシュバックの保証書にすぎません。
「統合イノベーション戦略2024」の目的は、イノベーションではなく、政党に寄付してくれた企業に対するキャッシュバックの保証書になっています。
ジョブ型雇用の採用は、少子化対策だけでなく、「AI分野の競争力強化」に、必須です。
クアクアレリ・シモンズ(QS)世界大学ランキング2025年版のアジア・オセアニアの大学のトップ200は以下です。
200位まででは、日本が10、中国が9で、日本がトップですが、香港の5を加えれば逆転します。
50位以内では、中国5、香港3、シンガポール2、オーストラリア2、日本2、韓国1です。
これは、10年後に、トップの科学技術では、日本は中国に勝てないことを示しています。
10年前のQS世界大学ランキングでは、日本の大学はより上位にありました。
なにもしなければ、10年後のQS世界大学ランキングでは、日本の大学はより下位になります。
大学にファンドをつけても、教員の給与が上がらなければ、人材流出は止まりません。
大学にファンドをつけることは、利権のキャッシュバックを温存していることを示しています。
教育のタイムラグが大きいので、イノベーション戦略のトップは、教育改革になります。
利権を優先して、間違った政策を継続すれば、何が起こるかは自明です。
帰納法(トレンド)では、今後も、利権の維持ができるという推論になりますが、それは不可能です。
QS世界大学ランキングのトップ200には、マレーシアの大学が5つ入っています。
マレーシアの人口は3394万 (2022年)です。
オーストラリアの人口は、2601万 (2022年)です。
オーストラリアの大学数は、40です。
オーストラリアの高等教育は、日本より進んでいます。
マレーシアの高等教育も平均値や中央値をみれば、日本を越えていると思われます。
香港、シンガポール、オーストラリア、マレーシアは、エンジニア教育を英語で行い、英語圏の大学教員の人材市場に組み込まれています。
日本の大学のエンジニア教育も、ジョブ型雇用で、英語圏の教員の人材の市場に組み込まないかぎり、イノベーションは実現しません。
3)付録
クアクアレリ・シモンズ(QS)世界大学ランキング2025年版
アジアの大学の順位(50位以内、15大学)
中国 5
香港 3
シンガポール 2
オーストラリア 2
日本 2
韓国 1
アジアの大学の順位(100位以内、26大学)
中国 5
香港 5
韓国 5
日本 4
オーストラリア 3
シンガポール 2
マレーシア 1
台湾 1
アジアの大学の順位(200位以内、53大学)
日本 10
中国 9
オーストラリア 7
韓国 6
香港 5
マレーシア 5
サウジアラビア 3
シンガポール 2
インド 2
カタール 2
台湾 1
カザフスタン 1
8 National University of Singapore (NUS) Singapore, Singapore
14 Peking University Beijing, China (Mainland)
15 Nanyang Technological University, Singapore (NTU Singapore) Singapore, Singapore
17 The University of Hong Kong Hong Kong, Hong Kong SAR
18 The University of Sydney Sydney, Australia
20 Tsinghua University Beijing, China (Mainland)
31 Seoul National University Seoul, South Korea
32 The University of Tokyo Tokyo, Japan
36 The Chinese University of Hong Kong (CUHK) Hong Kong, Hong Kong SAR
37 Monash University Melbourne, Australia
39 Fudan University Shanghai, China (Mainland)
45 Shanghai Jiao Tong University Shanghai, China (Mainland)
47 The Hong Kong University of Science and Technology Hong Kong, Hong Kong SAR
47 Zhejiang University Hangzhou, China (Mainland)
50 Kyoto University Kyoto, Japan
53 KAIST - Korea Advanced Institute of Science & Technology Daejeon, South Korea
56 Yonsei University Seoul, South Korea
57 The Hong Kong Polytechnic University Hong Kong SAR, Hong Kong SAR
60 Universiti Malaya (UM) Kuala Lumpur, Malaysia
62 City University of Hong Kong Hong Kong SAR
67 Korea University Seoul, South Korea
68 National Taiwan University (NTU) Taipei, Taiwan
84 Tokyo Institute of Technology (Tokyo Tech) Tokyo, Japan
86 Osaka University Osaka City, Japan
88 University of Technology Sydney Haymarket, Australia
98 Pohang University of Science And Technology (POSTECH) Pohang , South Korea
101 KFUPM Dhahran, Saudi Arabia
107 Tohoku University Sendai City, Japan
118 Indian Institute of Technology Bombay (IITB) Mumbai, India
122 Qatar University Doha, Qatar
123 RMIT University Melbourne, Australia
123 Sungkyunkwan University (SKKU) Suwon, South Korea
133 University of Science and Technology of China Hefei, China (Mainland)
138 Universiti Kebangsaan Malaysia (UKM) Bangi, Malaysia
145 Nanjing University Nanjing, China (Mainland)
146 Universiti Sains Malaysia (USM) Gelugor, Malaysia
148 Universiti Putra Malaysia (UPM) Seri Kembangan, Malaysia
149 King Abdulaziz University (KAU) Jeddah, Saudi Arabia
150 Indian Institute of Technology Delhi (IITD ) New Delhi, India
152 Nagoya University Nagoya, Japan
162 Hanyang University Seoul, South Korea
163 Al-Farabi Kazakh National University Almaty, Kazakhstan
167 Kyushu University Fukuoka City, Japan
167 University of Wollongong Wollongong, Australia
173 Hokkaido University Sapporo, Japan
174 Curtin University Perth, Australia
179 The University of Newcastle, Australia (UON) Callaghan, Australia
181 Universiti Teknologi Malaysia Skudai, Malaysia
181 Waseda University Tokyo, Japan
183 Hamad bin Khalifa University Doha, Qatar
188 Keio University Tokyo, Japan
192 Tongji University Shanghai, China (Mainland)
194 Wuhan University Wuhan, China (Mainland)
200 King Saud University Riyadh, Saudi Arabia
<< 引用文献
QS World University Rankings 2025: Top global universities
https://www.topuniversities.com/world-university-rankings
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