「テクノリバタリアン」を読む(7)イデオロギーの境界

データサイエンティスト(テクノリバタリアン)は、「数学は、イデオロギーより優先する」と考えます。

 

数学には2つのレベルがあります。

 

第1は、解の存在証明のレベルです。

 

第2には、数値解を求めるレベルです。

 

第1のレベルは、従来では問題にされることがあまりありませんでした。

 

第2のレベルは、従来は人間が分担してきたレベルです。

 

このレベルでは、数学は、人間をサポートすることが多いです。

 

しかし、数学(コンピュータ)が人間を駆逐してしまった例もあります。

 

アルファ碁に代表されるようなボードゲームの世界では、人間は、数学(コンピュータ)に勝てません。

 

つまり、ボードゲームの名人は、陸上の選手のような価値しかありません。陸上の選手は、人間の中ではずば抜けた体力をもっています。しかし、ビジネスの世界では、陸上の選手の体力を活用するよりも、輸送トラックやフォークリフトを使います。

 

アマゾンでは、ロボットを使っています。

 

スポーツ選手は、ビジネスの世界で、特別な体力を使った働きはしていないけれど給与を受け取っています。

 

これは、普通の体力の社員並みの給与を受け取っていることを意味します。

 

あるいは、特別な体力を使って社会人スポーツで活躍して、企業イメージをあげる宣伝効果が期待されています。

 

エストニアは、DXに優れた徴税システムを導入しています。

 

エストニアでは、納税はスマホで済みます。

 

税務署の職員も、税理士もほぼゼロです。

 

つまり、日本にいる税務署の職員と税理士は、スポーツ選手のような価値しかありません。

 

西原なつき氏によれば、財政破綻したアルゼンチンでは、公務員のレイオフが行なわれています。(筆者要約)

 

アルゼンチンのミレイ大統領は、2024年3月末のイースター休暇の直前に「解雇通知や契約更新無しの通知が7万人に届く」と公式会見をしました。この発表では、ミレイ大統領は契約未更新という形で職員の切り捨てを実施できることを「とても光栄に思っている」と発言しました。

 

このリストラの目的は、政府職員の中で「実際には働いていないけれど登録されており給与だけ受け取っている」人を淘汰することにあります。

 

2024年4月までに解雇通知があった政府職員の人数は24000人で、7万人まであと46000人が解雇される計画です。

<< 引用文献

ミレイ政権発足から4カ月。変化していくアルゼンチン経済、「痛みを伴う改革」に国民の反応は? 2024/04/22 Newsweek 西原なつき

https://www.newsweekjapan.jp/worldvoice/nishihara/2024/04/4.php

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アルゼンチンでは、政府職員の中で「実際には働いていないけれど登録されており給与だけ受け取っている」人を淘汰する目的でリストラが行なわれています。

 

エストニアと同じレベルのDXの徴税システムが、日本に導入されれば、エストニアと同じように、日本の税務署の職員も、税理士も、「実際には働いていない」人になります。「実際には働いていないけれど登録されている人に給与だけを支払う」わけには行きません。

 

それをしたらDXの効果はマイナスになります。

 

つまり、マイナンバーカードの問題は、DXを導入後に「実際には働いていないけれど登録されており給与だけ受け取っている」人を淘汰することにあります。

 

この問題を放置して、レイオフする必要のないマイナンバーカードシステムをつくったらDXにはなりません。

 

エストニアのように、DXで優れた徴税システムを構築すれば、徴税は数学の問題になります。

 

マイナンバーカードが機能しない理由は、レイオフを前提としていないことと、担当者の数学のスキルが低いことが原因です。

 

DXで優れた徴税システムを構築してない場合には、正常な徴税をするためには、税務署職員の健康などに配慮する必要があります。徴税は数学の問題ではありません。徴税は、職員のやる気の問題にもなり、数学ではなく、イデオロギー(上司と部下の信頼関係)の領域問題になります。

 

問題を整理します。

 

数学の第2のレベルは、コンピュータが導入されるまでは、イデオロギー(人間関係)の領域で扱われていました。

1990年頃までは、コンピュータは、ソロバンがエクセルに変わったような利用法で使われ、イデオロギー(人間関係)の領域に介入することはありませんでした。

 

工業社会が、情報社会にレジームシフトする現象は、第2のレベルで、イデオロギー(人間関係)が、数学に置き換わるプロセスに対応します。

 

年功型雇用の企業では、新卒の採用について、人間関係を重視しています。この採用基準は、工業社会のものです。

 

イデオロギーを、上司と部下の信頼関係と書くと奇妙に感じるかもしれません。

 

功利主義以外のイデオロギーは、数式で表わすことができません。

 

コンピュータは、イデオロギーを理解することができません。

 

これは、イデオロギーは、形而上学であって、人間関係の空間にしか存在しないためです。