ストックオプションへの課税

日経新聞によると、国税庁は、ストックオプションについて、所得税と同じ最高税率55%を適用すると主張しています。

 

2023年5月17日の現代ビジネスに、加谷珪一氏が、ご自身が企業してときの体験を書かれていますが、それを読むと、日本では、起業は不可能に近いと感じてしまいます。

 

ストックオプションに、所得税と同じ税率を適用すれば、日本で起業する人はだれもいなくなります。起業家は、海外を目指します。アメリカやシンガポールはもちろんですが、今後、べとナムやインドネシアを目指す人も出てくると思われます。

 

2000年頃に、インターネットの検索サービスが普及し始めたころに、サーバー上のデータは、事前に著作権の問題をクリアする必要があると主張されたため、国内では、データサーバーが設置できなくなりました。

 

現在の貿易収支では、日本は、ネットワークサービスの利用料では、大きな赤字を出していますが、原因の一つは、そこで、生み出されました。

 

IBMは、解雇について、裁判を繰り返してきましたが、裁判所は、一貫して解雇は無効であるという判決を繰り返してきました。

 

解雇をしないで、社内失業を抱えていれば、給与は下がります。

 

人員削減が出来なければ、DXも、効果はありません。

 

一方では、非正規雇用を拡大して、同一労働同一賃金ではない、違法状態のダブルスタンダードを許容しきました。

 

その結果、若年人口の所得が極端に低下して、少子化が進んでしまいました。

 

つまり、解雇は違法という判決には、とてつもない副作用がありました。

 

そもそも、人口が減少したり、売り上げが減少する側面で、年功型賃金を維持することは、不可能であることは自明ですが、この点は無視されました。

 

日経新聞によると、「3メガバンク中途採用を大幅に増やす。2023年度は少なくとも計770人と21年度実績比4.5倍に急増する。新卒を含む採用全体に占める比率も4割に迫り、三菱UFJ銀行は24年度にも中途の採用数を新卒とほぼ同水準にする方針」ですが、これで間にあうのかは不明です。

 

解雇について、違法ではなく、解雇条件の問題になっていれば、ここまで、ジョブ型雇用の導入が遅れることはなかったと思われます。

 

また、少子化もより緩やかになったと思います。

 

アメリカの場合、リスキリングして、5年毎に転職しますが、年齢に関係なく、15年位で、十分な生涯賃金を得る人がいます。そのために、大学では、必死に勉強します。

 

日本では、解雇はないが、努力しても給与があがらないシステムを作りましたので、人材の劣化が進んでしまいました。

 

2018年に、プリンストン大学清滝信宏教授はNHKのインタビューに次の様に答えています。(注1)

 

 

日本がこれだけ成長率が低い理由のひとつは、「人的資本の蓄積」が少し遅れているんじゃないかと。日本企業は、従来は若い人をたくさん雇って、ガンガン訓練して熟練を蓄積するというのが強みだったのが、不況が続いた間に、新規採用を削ったし、非常勤、パートで雇ってしまう。そうすると、職場での訓練が常勤に比べると少ない。昔は、日本企業は、幹部候補生とかをアメリカに留学させていた。このあたりにもたくさん来ていた。そういう企業派遣が、ほとんど見られなくなった。様変わりした。それはなぜかと言うと、昔だったら、アメリカのビジネススクールに送っても必ず帰ってくると自信があったが、今は帰ってこないかもしれないから(笑)

 

 

5月28日の日経新聞によると経済産業省は、M&Aの基準を見直すそうです。

 

20年くらい前に、M&Aが始まったときに、経済産業省は、強欲資本主義キャンペーンをはって、M&Aを阻止して、天下りポストの確保に動きました。

 

その結果、日本の対内直接投資は、北朝鮮より下の196位になっています。

 

M&Aの基準の見直しは、今更という気がします。



「鉄のトライアングル」を維持することは、国際市場から撤退することになり、貿易収支が、劣化していきます。

 

国税庁は、鎖国状態を前提に判断しているように見えます。

 

M&Aの見直し、ストックオプションの課税基準、社会保険料の値上げなど、法律に基づかない、裁量で、重要な決定がなされることは、法治国家としての制度疲労を起こしていることを示しています。

注1:

 

年功型雇用は、同じ名称でも、前世紀と今世紀では中身が変わっています。

 

同じキーワードが、常に同じ内容を指さないことに、注意する必要があります。

 

2023年5月1日、日本ディープラーニング協会が「生成AIガイドライン」を発表しました。

 

政府もガイドラインを作る計画ですが、生成AIは、3か月もすれば、内容が入れ替わってしまいます。

 

生成AIがメージャーバージョンアップする度に、ガイドラインもバージョンアップを繰り返せば、よいのですが、そこまでの決断ができないのであれば、ガイドラインは、実態と遊離するので、必ず問題を引き起こします。

 

 

引用文献

 

3メガ銀、中途採用2年で4.5倍 三菱UFJは新卒と同水準へ 2023/05/08 日経新聞

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB04B5Q0U3A400C2000000/



じつはいま「地銀と中小企業の関係」が激変中…そのウラに隠された「意外な落とし穴」 2023/05/17 現代ビジネス 加谷 珪一

https://gendai.media/articles/-/110338

 

ノーベル賞候補に聞く 次の“危機”と“備え” プリンストン大学清滝信宏教授

https://www3.nhk.or.jp/news/special/nobelprize/2018/tokushu/tokushu_04.html