(17)日本の技術力の評価
(Q:ロケットなどを例にすれば、日本の技術力は、どのレベルでしょうか)
1)日本のロケットと技術力
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2023年3月7日、新型主力機H3ロケット初号機を種子島宇宙センター(鹿児島県)からの発射に失敗しました。
当初は20年度の初号機発射を予定していましたが、新型主エンジンのタービンの動翼にひびが入るなどの不具合で2回延期されています。
初号機は2月17日にも電源系統の異常を検知して補助の固体ロケットブースターの着火が止まるトラブルがあり、発射を直前に中止していました。
JAXAは異常を解消できたとして、予備期間である3月10日までに発射を行いました。
失敗を繰り返すパターンは、三菱スペースジェットとそっくりです。
スペースジェットから撤退したのであれば、ロケットから撤退するシナリオも考えられます。
少なくとも、三菱重工業が、スペースXやブルーオリジンと競争できる技術力を持っているとは思えません。
スペースXは2023年3月4日(日本時間)に、「ファルコン9」ロケットの打ち上げを実施しました。今回のミッションでスペースXは、衛星を51機を投入することに成功して、これで、スターリンク衛星の総数は「4053機」となりました。
中国がスターリンクの対抗馬を開発しています。まずは1万3000基を打ち上げ、最終的にはスターリンクと同じ4万基規模の通信網の完成を目指しています。
遠藤 誉氏が、オーストラリアのAustralian Strategic Policy Institute(ASPI)(オーストラリア戦略政策研究所)は、今年3月2日に「重要なテクノロジーの追跡 ―未来の力をめぐるグローバル・レース」という調査結果を和訳して紹介しています。
これを見ると、経済や安全保障などの基盤を形成する重要な技術の国別競争力のランキングの44調査項目のベスト5のうち37項目に関して中国が世界1位となっています。
日本がベスト5に入っている項目は以下の4つだけです。
先端磁石と超伝導体 5位(5.01%)
連続フローと化学合成 5位(3.85%)
核エネルギー 3位(6.11%)
量子センサー 4位(4.29%)
中国とアメリカは44全項目で、ベスト5入りしています。
英国が23項目、インドが21項目、韓国が20項目、ドイツが12項目、オーストラリアが9項目、イタリアが6項目、カナダが4項目、ベスト5入りしています。
つまり、日本の企業には、競争力のある技術はない、あるいは、競争力のある技術を育てる能力はないと判断できます。
スペースジェットには、競争優位なコア技術はありませんでした。
新型主力機H3ロケットにも、特に競争優位なコア技術がある訳ではありません。
冷静に考えれば、撤退が合理的な可能性が高いです。
マスコミに報道は、国産ロケットがあればよいという感情的なものです。
これは、太平洋戦争で、ミッドウェイで、敗戦が決定的になったのに、戦争を続けた判断に似ています。
勝てない戦線からは撤退するのが鉄則です。
スペースジェットと同じように撤退した場合には、つぎ込んだ税金は、ロスになってしまいます。
1990年から、30年間、日本は経済成長せず、一人当たりGDP(賃金)は増えませでした。
これも、同じ失敗が繰り返されるという点で、スペースジェットの失敗とそっくりです。
ロケットの事故は、確率現象なので、事故が起こるか否かを予測することはできません。
しかし、事故の確率を予測することは可能です。
スペースジェットの撤退、30年間成長しない日本経済をみれば、日本企業の失敗する確率は、欧米企業に比べて、異常に高いことがわかります。
日経平均の株価変化と、アメリカの株価の変化を見れば、パフォーマンスの違いが歴然としています。これは、日本企業の経営が不合理で、企業の成長を阻害してることを示しています。
そこには、コロナ対策の補助金に見られるような、政府の大きな介入があります。
つまり、日本経済が成長しない原因は、過剰な介入による政府の失敗である可能性が高いと判断できます。
ロケットの開発は、スペースXやブルーオリジンにみられるように、民間が行うものになりました。
政府が開発しなけれは、ロケットが供給されないという市場の失敗はなくなりました。
この場合には、経済学が問題にするのは、政府の過剰な介入で、技術開発や企業の競争力がなくなる政府の失敗です。
ロケットの開発は、民間が行うものになっていますので、JAXAは手を引くべきです。
三菱重工業のような民間会社が、スペースXやブルーオリジンのように、ロケットを開発できれば、それはそれでよいです。一方、スペースジェットのようにロケットの開発から撤退してしまうのであれば、それでも問題はありません。
ロケットは、航空機と同じように購入できます。
スペースジェットから、撤退しても、今まで、国産の航空機はありませんでしたので、変化はありません。
国産ロケットも、2022年の打ち上げ実績をみれば、ほぼ、ゼロに近い数ですので、大きな変化はありません。
日本のGDPは中国より小さくなったので、技術開発の戦線は絞りこむ必要があります。戦線を広げたら全滅してしまいます。
より大きな問題は、外貨の獲得です。
いままで、日本が技術開発投資が出来た原資は、家電製品と自動車の輸出による貿易黒字です。
今では、企業は内部留保が多いと言われています。「重要なテクノロジーの追跡 ―未来の力をめぐるグローバル・レース」に見るように、技術力が落ち込んでいるにもかかわらず、技術開発は進んでいません。これは、開発すべき技術分野を見つけて、プロセスを組み立てる技術開発能力が低いことを意味します。
家電製品の輸出による貿易黒字はなくなりました。
自動車の輸出による貿易黒字は、今後、EVの普及により大きく変化します。
2023年時点でわかっていることは、「重要なテクノロジーの追跡 ―未来の力をめぐるグローバル・レース」に見るように、EVのコア技術(通信、AI、電池)において、日本企業は、中国企業に全く歯が立たないという事実です。
つまり、EVの普及に伴い、自動車の輸出による貿易黒字が急激に減少していく可能性が高いということです。
その時点では、技術開発にまわす資金は減っていきます。
技術開発に残された時間は少ないのですが、ビジョンが描けていないように見えます。
2)三菱スペースジェットの経緯
2023年2月7日、三菱重工業は、ジェット旅客機「三菱スペースジェット(旧MRJ)」の開発中止を決めました。
経緯は以下です。
2008年03月 MRJ:スペースジェット計画を決定。
2008年07月 ボンバルディアが、CSeries を発表。
2008年09月 MRJ:初号機納入予定を2013年と発表
2009年09月 MRJ:初号機納入予定を2014年第1四半期に延期(1回目)。
2012年04月 MRJ:初号機納入予定を2015年後半に延期(2回目)。
2013 年06月 エンブラエルSA:E-Jet E2 ファミリーを発表。
2013年09月 ボンバルディア: CS100が初飛行。
2013年08月 MRJ:初号機納入予定を2017年第2四半期に延期(3回目)。
2014年01月 エンブラエルSA:2013年の売り上げがにボンバルディアを越え、世界3位。
2015年10月 ボンバルディア:ケベック州政府から財政援助を受ける。
2015年11月 MRJ:初飛行に成功。
2015年12月 ボンバルディア: CS100がカナダ運輸省から型式認定。
2016年02月 ボンバルディア: 2015 年会計に、54 億ドルの評価損を計上。
2016年02月 エンブラエルSA: E190-E2 が初飛行しています。
2016年04月 ボンバルディア:ボーイングが、CSeriesのダンピング請願書を提出。
2016年08月 MRJ:初号機納入予定を2018年に延期(4回目)。
2017年01月 エアバス:ボンバルディア C シリーズの過半数の株式取得。
2017年01月 MRJ:初号機納入予定を2020年半ばに延期(5回目)。
2017年02月 ボンバルディア:カナダ政府から 3 億 7,250 万ドルの無利子返済ローン。
2018 年01月 ボンバルディア:ボーイングのダンピング請求が棄却。
2018年01月 MRJ:イースタン航空との契約がキャンセルに。
2018 年02月 エンブラエルSAのE190-E2が、型式証明書を取得。
2018年06月 MRJ:ベラミー氏が70席級の小型モデルを2021~2022年と初めて明示。
2018 年07月 エンブラルSA:民間航空部門の株式の 80% をボーイングが所有。
2018年12月 MRJ:三菱重工業から出資1700億円、債務放棄500億円。
2019年06月 MRJ:ボンバルディアの小型旅客機CRJ事業買収交渉開始。
2019年10月 MRJ:米国の顧客から、100機の受注キャンセル。
2020年01月 MRJ:初号機納入予定を2021年以降へ延期(6回目)
2020年05月 MRJ:親会社の三菱重工業が開発半減を公表
2020年06月 MRJ;ボンバルディアの小型旅客機CRJ事業買収を590億円で買収。
2020年06月 MRJ;開発体制の縮小とベラミー氏の退職
2020年10月 MRJ:開発凍結。実用化に必要な「型式証明」の文書作成プロセスは継続。
2022年03月 MRJ:「航空の用を供さない」として、3号機の国土交通省登録を抹消。
2023年03月 MRJ:開発中止
2-1)MRJの納期延期の原因
ウィキペディアから要点を抜き出すと次になります。
1度目の納期延期
2009年9月、胴体と主翼の設計変更にともない納期延期。
2度目の納期延期
2012年4月、開発並びに製造作業の進捗の遅れから納期延期。
3度目の納期延期
2013年8月22日には装備品について、パートナー各社と協力し、安全性を担保するプロセスを構築することに想定していたよりも時間が必要だとして納期延期。
2015年11月11日、県営名古屋空港において初飛行。
4度目の納期延期
2015年12月16日三菱航空機は試験工程から量産初号機の納入時期に至るまでの全体スケジュールを精査し、納入延期。
2016年2月10日、主翼の強度不足で中断していた飛行試験を、機体の改良を終え再開。
5度目の納期延期
2017年1月20日、機体を制御する電子機器の配置を見直しするなど設計変更が必要となったための納期延期。
理由は耐空証明を行う際、極端な状況(機内での爆発、キャビンからアビオニクス・ベイへの水漏れなど)での継続的な運用のために認定要件を満たす必要があることが判明したため数ヶ月の設計変更が必要になった。
副社長兼営業部長の福原勇吾氏は、過去5回起こった延期のうちの4回は共通して認証に関して何らかの不備があったために、開発作業をやり直す必要があった為という。
6度目の納期延期
2020年2月6日試験の遅延により年内のTC取得が難しくなったため、納入延期。
原因:
「過去5回起こった延期のうちの4回は共通して認証に関して何らかの不備があったために、開発作業をやり直す必要があった為」なので、原因は、はっきりしています。
「設計に必要な性能要求仕様を誰もかけなった(or書かなかった)」ことに尽きます。
つまり、技術力の不足です。
リーダーシップなど曖昧な原因をとる必要はありません。
これは、コロナ対策のCOCOAで起こったことと全く同じです。
「性能要求仕様」が不十分な場合には、幹部だけでなく、一般のエンジニアの意見を入れてグレードアップすることが可能です。
これが、パースのいう科学的な意見集約の方法です。
幹部が書いた「性能要求仕様」が明らかに不十分であっても、幹部の権威があって、一般のエンジニアが口を挟まなかったか、一般のエンジニアはイエスマンで、問題発見能力がなかったかのいずれかと思います。
「認証に関して何らかの不備があったために、開発作業をやり直す」ことは、認証の問題ではなく、仕様書の問題です。
3)大きな流れ
世界の航空機製造では、エアバスとボーイングが不動のトップ2です。
2010年頃までは、第3位がボンバルディアで、第4位がエンブラエルSAでした。
2010年頃から、エンブラエルSAが攻勢をかけ、2013年に逆転しています。
(1)ボンバルディア
2008年7月に、ボンバルディアが、小型旅客機CSeries を発表します。
2013年9 月に、ボンバルディアの CS100が初飛行します。
2015年12月に、 ボンバルディアは、CS100がカナダ運輸省から型式認定をうけます。
しかし、ボンバルディは、財政的に行き詰り、カナダ政府の援助を仰ぎます。
また、2016年04月には、ボーイングが、ボンバルディアのCSeriesのダンピング請願書を提出します。この請求は、2018 年01月に却下されますが、ボンバルディアは、その時まで持ちこたえることができず、2017年01月に、ボンバルディア C シリーズを実質、エアバスに売却して、小型旅客機から、撤退します。
(2)エンブラエルSA
2013 年6月 エンブラエルSA:E-Jet E2 ファミリーを発表しています。
ボンバルディアに遅れること5年ですが、性能を改良すれば、商機があると判断しています。
2016年2月に、最初の E-Jet E2 である E190-E2 が初飛行しています。
2018年2月 エンブラエルSAのE190-E2が、型式証明書を取得して、実機の配備が始まります。
2032年時点では、エンブラエルSAのEシリーズが最もコストパフォーマンスの高い小型旅客機です。
ボンバルディアの小型旅客機が、エアバス傘下になったことをうけて、2018 年07月には、 エンブラルSAの民間航空部門は、ボーイング傘下になります。
つまり、2018年7月時点で、小型旅客機は、エアバス(ボンバルディア)とボーイング(エンブラエルSA)の2グループの寡占になっています。
(3)MRJ
2008年03月に、MRJはスペースジェット計画を発表しています。
これは、ボンバルディア(2008年7月)、エンブラエルSA(2013年6月)より前ですから、目標性能は、改訂していなければ、一番低いはずです。ボンバルディアとの性能の差は少ないですが、エンブラエルSAとに性能の差は大きいです。
2008年ののANAの報道資料によると、MRJは、リージョナル機としてはじめて主翼・尾翼に複合材を本格的に採用したほか、最新技術を駆使した新型エンジンの搭載や最先端の空力設計により、燃料消費量が現行機材に比べ約40%改善するとされました。また、宇宙航空研究開発機構(JAXA)との共同開発の成果を活用した最新の設計手法、要素技術、材料・加工法を導入し、客室の快適性や環境負荷の低減などにつなげているとしています。開発の後ろ盾となる初期発注者(ローンチカスタマー)はANA(全日空)で、JAL(日本航空)や海外の航空会社からの受注も獲得しました。
2010年以前に、MRJは、ボンバルディアとエンブラエルSAの飛行機開発に参画して、主翼と中央翼、中央部胴体などのサプライヤーです。
MRJは、飛行機の制御系には関係していません。
ANAの報道資料では、エンジンは国産のように見えます。実際には、IHIに打診されたこともあるようです。最終的には、プラット・アンド・ホイットニーのエンジンをつかっていますので、ボンバルディアやエンブラエルSAと変わりません。
機体には日本の最新技術が結集しており、日本が得意とする複合材を始め、機体の設計には国内開発のスーパーコンピュータを使用しました。また、航空機開発は自動車以上に技術の裾野が広く、MRJから様々な産業への技術移転が期待されており、機体の部品数95万点のうち3割を日本企業が手がけています。
予想されたように、国産は、機体の素材が中心です。
機体材料については、2009年9月の1度目の納期延期、胴体と主翼の設計変更にともない納期延期しています。
2015年11月に、MRJは、初飛行に成功します。
しかし、初飛行の後の2015年12月16日に4度目の納期延期をしています。そのあと、2016年2月10日に、主翼の強度不足で中断していた飛行試験を、機体の改良を終え再開しています。
この主翼の強度不足は、設計の性能要求の見直しのようです。
さらに、その後、2017年1月20日の5度目の納期延期では、 「機体を制御する電子機器の配置を見直しするなど設計変更」が入っています。
T1)2017年11月
ボンバルディアとエンブラエルSAの、初飛行から、型式証明の取得までのタイムラグは2年です。
つまり、極端な設計変更がなければ、2017年11月に、型式証明が取得できるはずです。
2017年11月が、継続か、撤退かの検討時期になります。
2015年12月に、 ボンバルディアは、型式証明を取得していますので、最短の2017年11月でも2年遅れになります。
2017年01月に、ボンバルディア C シリーズは、エアバスに売却されています。
2018年01月に、MRJとイースタン航空との契約がキャンセルになります。
2018 年02月 に、エンブラエルSAのE190-E2が、型式証明書を取得しています。
つまり、2017年11月に型式証明を取得できなかったので、アメリカの航空会社は、MRJをあてにしなくなりました。
(1)(2)を、見れば、ボンバルディアとエンブラエルSAの勝敗は、2018 年02月の エンブラエルSAのE190-E2の型式証明書取得までで決まっています。
また、E190-E2が、スペースジェットより安価で、高性能ですから、ここで勝負はついています。
T2)2018年1月
2018年1月、ボンバルディアでは小型旅客機「Cシリーズ」の開発メンバーで、計7機の飛行試験機に携わり、商業飛行に必要な「型式証明」取得をリードしたアレクサンダー・ベラミー(Alexander Bellamy)氏が三菱航空機 Chief Development Officer 兼 プログラム推進本部長の開発トップ就任します。
さらに、2016年末以降、エキスパートと呼ばれる外国人技術者を数十人から300人規模に増やします。
2018 年後半に、ボンバルディアはそのビジネス ジェットトレーニング プログラムをCAE Inc.に 6 億 4,500 万ドルで提供し、世界中の 70,000 人の従業員 (オンタリオ州で 500 人、ケベック州で 2,500 人、カナダ国外で 2,000 人) の 18 か月間で 5,000 人の人員削減を発表しています。
つまり、傾きかけたボンバルディアの流出人材を、MRJは引き受けた形になっています。
しかし、ボンバルディアが傾いたのは、エンブラエルSAに競争で負けたからです。
負けた方のボンバルディアの流出人材を獲得しても、勝算があるとは思えません。
ボンバルディアは、初飛行かた型式証明ほ取得までに、2年3か月かかっています。
これから、ボンバルディアの設計要求仕様は、型式証明を満足するレベルであることがわかります。設計のやり直しは不要です。
アレクサンダー・ベラミー氏は、型式証明の取得のプロ化もしれませんが、設計要求仕様のプロではありません。
MRJが、アレクサンダー・ベラミー氏をヘッドハントした時点で、MRJは、問題点が、型式証明の取得にあると考えていたと思われます。
2018年06月に、MRJのベラミー氏が70席級の小型モデルを2021~2022年と初めて明示しています。
タイムラグが2年であれば、2020年6月には、型式証明がとれていなければならないことを意味します。
それが3年以上かかっていることは、型式証明をとるために、必要な設計変更がまだ、残っていたことを示唆しています。
つまり、ベラミー氏の手に負えない問題があったと推測されます。
T3)2018年7月
2018 年07月に、 エンブラルSAの民間航空部門の株式の 80% をボーイングが所有します。
つまり、この時点で、「エアバス+ボンバルディア」と「ボーイング+ エンブラルSA」の2大勢力に、市場が支配されいます。
T4)2018年12月
2018年12月に、MRJは、三菱重工業から出資1700億円、債務放棄500億円を受けています。
この頃から、試作機の製作が行われなくなります。
ここで撤退しなかった理由は思い浮かびません。
その後、2019年06月に、MRJは、ボンバルディアの小型旅客機CRJ事業買収交渉開始し、2020年06月に、 MRJは、ボンバルディアの小型旅客機CRJ事業買収を590億円で買収しています。
また、2020年06月に、アレクサンダー・ベラミー氏が退職しています。
(4)COMAC ARJ21
参考までに、中国のCOMAC ARJ21を見ておきます。
2002年 COMAC ARJ21が、中国の第5次五ヵ年計画で開始された。
2008年11月 上海大場空港で初飛行。
2014年12月 中国民用航空局 (CAAC) から型式証明を取得。
2002年からですので、トンデモなく時間がかかっています。
しかし、スペースジェットも商用機の計画発表は2008年ですが、前史もあるので、大差はないと思います。
ARJ21はダグラスのコピーとも言われていますが、ともかく、中国は、自前で飛行機を生産しています。
4)A:ロケットなどを例にすれば、日本の技術力は、どのレベルでしょうか
MRJの例でみたように、日本の技術力は高くはありません。
失敗の原因が、設計要求仕様書(技術力)にあることは明白です。
なぜなら、まともな要求仕様書があれば、設計のやり直しはないからです。
ところが、企業幹部は、問題が、型式認定の取得、組織の意思疎通など、技術以外に求めます。
企業幹部は、科学的文化が理解できないため、人文的文化の中に、答えを求めるのです。
MRJの失敗の原因を取り上げたマスコミ記事は多数ありますが、技術力をまともに評価していません。
みんなの意見のような書き込みには、ゼロ戦をつくったから、日本の航空機技術は高いという人もいます。
1964年の新幹線の技術がハイテクであるという人もいます。
新幹線は、ローテクで、ドローンがつくれない日本の技術力は、惨憺たる状態です。
ジム・ロジャーズ氏の「捨てられる日本(2023)」の中に、1950年代に、アルコアのCEOが日本から持ち帰った普通のアルミロールを見て、従業員が、驚くほど高品質なので、特殊な製品だと思った話が出ています。
事故、エラー、設計のやり直しは、ある確率では必ず発生します。しかし、その発生確率を抑えられることは、技術力に他なりません。
引用文献
「三菱スペースジェット」、“立ち止ま”ったまま初飛行7周年迎える 最初は「リージョナルジェット初」の設備も? 2022/11/11 乗りものニュース
https://trafficnews.jp/post/122762
国産ジェット事業は頓挫、それでも航空機産業を「第二の柱に」…東海地方の経済界 2023/02/09 読売新聞
https://www.yomiuri.co.jp/economy/20230209-OYT1T50060/
中国、衛星1万3000基打ち上げ計画──スターリンク対抗で宇宙空間の「場所取り合戦」に 2023/03/08 Newsweek 青葉やまと
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2023/03/13000-1.php
三菱航空機・元開発トップ、かなわなかった意思疎通 2020/07/02 日経
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO61016530R00C20A7000000/
ASPI’s Critical Technology Tracker - The global race for future power 2023/03/02 Australian Strategic Policy Institute
https://www.aspi.org.au/report/critical-technology-tracker
習近平がアメリカを名指し批判して示す、中国経済の新しい方向性 2023/03/07 遠藤 誉