(11) ChatGPTと政府のパフォーマンス
(政策の策定は、低レベルの仕事です)
1)ChatGPTのヒット
2022年11月30日に公開されたChatGPTは、2023年2月には利用者が、1億人を超えています。
利用者は、急速に拡大して、ブームになっています。
ChatGPTを念頭にした「会話型AI」を開発するつもりがないといっていたGoogleも、人気に押されて、「会話型AI」を急遽投入して、株価が乱高下しています。
Beatrice Nolan 氏は、ファーマン大学の哲学教授であるダレン・ヒック(Darren Hick)は、AIに書かせたエッセイを提出した学生を見つけた事例を紹介しています。
教授は、レポートをChatGPTのAI検出器にかけて、そのレポートが、ChatGPTが作成したものか、尋ねたところ、ChatGPTは、99%の確率でAIによって生成されたと返事をしたようです。
清水 亮氏は、ChatGPTの人気は、予想外のレスポンスにあるが、それは、AIの予測精度が悪いことを意味しているので、AIの本命はより、地味なSiriやAlexaであるという意見です。
筆者は、ChatGPTのようなボットの知能を論ずることには、意義を感じません。
人間のパターンマッチングや条件付き確率の計算能力はとても低く、コンピュータやAIには、理論的にかないません。
問題は、人間がAIに勝てない仕事を引き続き行っていることにあります。
それは、企業であれば、資本の無駄遣いと生産効率の低下を意味します。
政府であれば、税金の無駄遣いと、非効率で不適切な政策の継続を意味します。
Forbes誌で、Gene Marks氏は、5つの神話(Myths)というタイトルで、ChatGPTが社会に与える影響を論じています。
その4番目は以下のタイトルです。
神話4:ChatGPTは人に取って代わる
意見は以下です。
ChatGPTが一部の仕事を代替することは間違いない。
しかし、大部分の人はそうならない。
このChatGPTが代替する低レベルの仕事には、次があげられています。
ブログの執筆や、ウェブサイトの更新、政策の策定(creating policies)など。
そして、「その仕事に従事していた人はその時間を、より多くのより良いものに振り向けることができる」と書いています。
つまり、レイオフされて、転職するという意味です。
ここで、Gene Marks氏は、政策の策定(creating policies)をChatGPTが代替する低レベルの仕事に分類しています。
筆者は、「(8)ビジョンの価値」で、金利の変更政策は、人間が行うより、AIが行った方がパフォーマンスが良いはずだと申し上げました。
これは仮説ですが、経済モデルを使えば、検証可能です。検証もせずに、AIを使わないことは、科学的文化ではあり得ません。
Gene Marks氏は、政策の策定(creating policies)を低レベルの仕事に分類していますが、これは、AIの開発者の視点でみれば、もっとも簡単に人間の代替システムが実現可能な分野であることをしめしています。
1960年頃の公務員には、運転手、重機のオペレータなど現業部門の人もいましたが、2023年現在では、現業部門は、アウトソーシングされています。残っているのは、研究を除けば、大学、病院、窓口業務、地元説明、クレーム対応といった対人業務だけです。かって、建設工事では、公務員が、施工実体を点検していましたが、現在は、責任施工といって、施行中の工事記録に、証拠写真を添付させ、不祥事が発覚した時に、責任を問う形式になっています。
もちろん、霞が関は、日本最大の政策コンサルタントで、政策を決定していることになっています。しかし、パフォーマンの実態(30年間一人当たりGDPが上がらない)というエビデンスをみれば、この政策コンサルタントが、ChatGPTのようなAIより賢いとは言えません。
それを考えれば、公務員の仕事で、研究、対人業務以外の部分は、9割方、AIで代替できます。
コストのかかる窓口業務も、スマホやクラウドの活用で、人員が劇的に削減できることがわかっています。これは、最近の銀行の支店の閉鎖状況を見ればわかります。
市民にとっては、市役所の窓口にいって整理券をもらって、順番待ちをするより、スマホで手続きが出来れば、時間の節約になります。
こう考えると、ChatGPTに大騒ぎするより、AIが人間の仕事を代替して、それまでの辞任をレイオフして、労働者が、「その仕事に従事していた人はその時間を、より多くのより良いものに振り向けることができる」かを問題にすべきです。
2)人頭で考えてはいけない
2023年2月14日の日経新聞の社説には、「実効性のある噴火予知体制を」というタイトルで、2023年4月から今まで、大学中心に運営されてきた噴火予知連絡会の活動は気象庁に移管されることが論じられています。社説で論じられていることは、火山の研究者の数を増やすべきだという人頭の論理です。
現在、地震と津波の緊急警報は、ChatGPTに比べるとかなり、低レベルのボットが担当しています。火山や北朝鮮のミサイル警報のシステムがどうなっているのか、筆者は知りませんが、タイムラグを考えれば、ボットを使う以外の方法はないと思われます。
そう考えると、火山警報のシステムの実効をあげるには、人数は減らして、給与をあげて、高度人材に対応させるべきです。
日本は人口が減っていますので、人頭を確保するという戦略は、基本的に持続できません。
国土交通省は、2023年3月から、全国全職種単純平均で前年度比5.2%引き上げられることを決めています。しかし、単価アップで、人出不足が解消するかは、不透明です。
インフレに伴って、多くの企業が賃上げをしています。
日本では、レイオフとAIをセットの労働生産性の向上を避けていますので、給与が、産業構造の変化に伴って劇的に上がることはありません。
その結果、今まで、建設現場を支えてきた外国人労働者の確保が困難になっています。
できだけ速く人頭で考えることを止めて、生産性で考えないと、袋小路が、直ぐそこにはあります。
引用文献
Two professors who say they caught students cheating on essays with ChatGPT explain why AI plagiarism can be hard to prove 2023/01/14 Business Insider Beatrice Nolan
On CRM: 5 Myths About ChatGPT 2023/02/07 Frobes Gene Marks
なぜ人々は、ChatGPTという“トリック"に振り回されるのか? Google「Bard」参戦、チャットAI戦争の行方 2023/02/10 ITmedia 清水 亮
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2302/10/news060.html