社会システム改革のロードマップ

(社会システム改革に残された時間はわずかです)

 

1)リスキリングの背景

 

岸田首相をはじめとした日本政府は、リスキリングを提唱しています。

 

リスキリングの背景には、習得した技術や知識が10年程度で入れ替わってしまう変化の速度があります。

 

これは、2009年のグレイの第4のパラダイム(データサイエンスの本格運用)の提案から加速しています。

 

忘れた人も多いと思いますが、AIが脚光をあびたのは、2012年のモントリオール大学の研究発表からです。Googleの実用化までが、3年で、10年経った2023年には、2012年以前のAIは書き直されています。

 

3年で技術や知識して、3年の現場体験で、実装できる力をつけて、10年以内に転職を繰り返すライフサイクルが普通になっています。

 

2023年1月15日には大学入学共通テストが実施され、記憶よりも、問題文を読んで、考える設問が出されています。問題文章の量が多いので、読解力のテストになっているという批判もでています。

 

少ない文章を確実に読んだり、少ない内容を確実に覚えてもその知識は、最長でも3年もすれば使いものにならなくなります。下手をすれば、1年以内に使えなくなります。AIのプログラミングに必要なスキルは、WEBやマニュアルなどの数千ページの英文の情報の中から、通常は2ページ程度の必要な最新情報を抽出して、理解してコーディングする能力です。これに比べれば、共通テストの日本語の文章の量はとても少ないです。このことは、現在のカリキュラムが、必要とするスキルに対応していないことを示唆しています。

 

リスキリングに求められているスキルは、このようなものです。

 

リスキリングは、レイオフ、再雇用(ジョブ型雇用)とセットのライフスタイルです。

 

ジョブ型雇用で、適切なジョブディスクリプションがなければ、スキルを活かせないので、リスキリングをしても給与があがりません。

 

ジョブディスクリプションは、文字通りで言えばジョブの内容を記載することですが、スキルを活かすことのできるジョブディスクリプションは、複数のジョブをモジュール化して、モジュールの組み立てで、全体が回るように設計される必要があります。

 

これは、ソフトウェアの設計を考えればわかりますが、大きな全体のジョブをサブモジュールに分割し、サブモジュール毎に必要なスキルを明示した上で、ジョブディスクリプションを決める必要があります。

 

春闘は、画一的賃金アップですので、春闘をしている企業に就職しても、スキルを生かした高い給与を得ることは不可能です。

 

2)高度人材のスキルの価値

 

2023年1月15日の現代ビジネスに、野口 悠紀雄氏が、高度人材の価値について記載していますので、引用します。(筆者の要約)

 

<==

 

人減らしを始めているといわれているアメリカ大手IT企業で、高度人材の給与は顕著に増えている。

 

メタ(旧フェイスブック)の2022年3月に94万ドルだったトップエンジニアの給与は、182万ドル(2億4000万円、1ドル132円)と、2倍近くになっている。

 

今まで、日本の高度動人材は、GAFAに流出していた。最近では、大学人材の海外流出も始まっている。

 

最大の問題は、民間企業での待遇の問題で、ジョブ型雇用採用の動きが始まっているが、一部の企業にとどまっている。日本企業の報酬体系が根底から改革されなければならない。

 

==>

 

どうして、高度人材に高い給与を払えるのかについては、別の回に説明します。

 

3)年功雇用の闇

 

日本証券金融の大株主の「ストラテジックキャピタル」は、 日本証券金融に、歴代役員に日銀や財務省東証からの「天下り」が多いとして、実態解明を求めた株主提案を行っています。

 

1月10日に、日本証券金融はこの株主提案に反対することを決議したと発表しています。



この決議には2つの問題点があります。

 

第1は、「ストラテジックキャピタル」の提案した株主利益を無視した人事が行わている可能性です。

 

第2は、日本証券金融が、今後も年功型雇用を続ければ、高度人材を獲得できなくなる点です。

 

第1は、調査をして見なければ、実態はわかりませんが、ウィキペディアによると、民営化前の日本道路公団については、次のような実態があきらかになっています。

 

<==

 

行政コスト計算書と公団からの受注額が半分を占めている企業をファミリー企業として、役職員を合計すると58000人もの道路公団関係者がいることが判明。そのうち日本道路公団OBが700社に2500人、首都高速道路公団OBが300社に530人、阪神高速道路公団OBが150社に280人、本州四国連絡橋公団OBが90社に150人天下りしていることが分かり、ほぼ全社が取引関係があり、明白な相関関係が見られた。公団からのOBを受け入れると公団の仕事が多く貰える構造や、給与の面で公団OBがプロパー職員より1.5倍多いことが判明した。

 

==>

 

民営化前の道路公団は赤字でしたが、民営化で赤字が解消したとされています。

 

民営化でも、株主は100%国(首都高と阪高自治体も株主)です。「ストラテジックキャピタル」のようなモノを言う株主がいる訳ではありません。

 

2023年1月に、 国土交通省は、高速道路をの有料期間を、2065年から50年後の2115年に変更する法令改正計画をあきらかにしています。2005年の旧道路公団の民営化に際して掲げた無料化は、撤回されています。

 

ポイントは、どこまで、コストダウンしたかになります2065年の無料化を前提に、今後コストダウンを進める余地がある(少なくとも時間はある)と思いますが、早々と2115年に延期するのは、納得できないところもあります。

 

民間の雑誌の廃刊が相次ぐ中で、NEXCOは広報誌をだしていますが、無料化を2115年に延期するのであれば、その前に広報誌を廃刊にして欲しいです。広報誌の内容は、コストダウンするのであればカットできる不必要な記事が多いです。

 

日本証券金融の実態はもちろん不明ですが、道路公団の過去の事例がありますので、株主への説明責任はあると思います。

 

さて、前置きが長くなりましたが、本題は、第2の問題点です。

 

野口 悠紀雄氏が指摘するように「日本企業の報酬体系が根底から改革されなければ」、年功型の企業からは、高度人材がいなくなります。つまり、どこかで、ジョブ型雇用に切り替えなければ、企業は存続できません。ジョブ型雇用に切り替えれば、天下りという概念がなくなります。

 

今すぐに、ジョブ型雇用に切り替えるのは難しいかもしれませんが、ロードマップが出来ている必要があります。

 

4)残された時間

 

高度人材の流出が続く中で、年功型の日本企業はロードマップを出していません。

 

日立など、ジョブ型雇用を採用しはじめた企業では、ロードマップをだしていますが、ジョブ型雇用に着手していない企業で、ロードマップを出している企業はありません。



日本企業にのこされた時間はどの程度でしょうか。

 

今回の最後に、三木谷浩史氏が、1995年にアメリカで見た話を引用しておきます。(筆者要約)

<==



1995年に、アメリカのアトランタで、CNNに勤める友人に会いに行くと、同社のオフィスにはインターネットによるニュース配信の部署に800人近い社員が配置されていた。1995年には、インターネットの通信速度は遅く、日本の新聞社のスタッフはせいぜい4、5人だった。日本のマスコミはニュース配信事業には、全く力を入れていなかった。



==>

 

つまり、DXビジネスでは先手を打った企業だけが生き残ります。

 

2023年時点で、ジョブ型雇用によって、高度人材を確保するロードマップを作れずに、天下り(経験科学の高度人材)を受け入れている企業がデジタル社会でも存続できる確率は低いです。

 

その理由は、データサイエンス革命によって、高度人材の中身が入れ替わってしまったことにあります。

 

引用文献

 

これが低賃金・円安の本当の害毒、人材流出は日本の真の危機の始まり 2023/01/15 現代ビジネス 野口 悠紀雄

https://gendai.media/articles/-/104685

 

日証金、「天下り」解明求める株主提案に反対 2022/01/10 ロイター

https://jp.reuters.com/article/jsf-idJPKBN2TP0K3

 

ストラテジックキャピタル:日本銀行財務省及び東京証券取引所による天下りの実態解明を求めるため日本証券金融株式会社の臨時株主総会の招集を請求  PRTimes

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000051.000052343.html

 

日本証券金融 

https://irbank.net/E03688

https://irbank.net/E03688/share?e=E27325

 

NEXCO

https://ja.wikipedia.org/wiki/NEXCO

 

広報誌「E-NEXCOよこはまナビ」

https://www.yokokan-minami.com/site/activity/3/2.html

 

「遅れた理由を聞いて、僕はすっかり呆れてしまった」三木谷浩史との約束に3時間遅刻…世界を騒がす“超大物経営者”の正体 2023/01/16 文春オンライン

https://news.yahoo.co.jp/articles/861b35be9287b5de6f766949e69e915818d6d069