原発の40年ルール改訂の問題点

1)背景

化石燃料の入手が困難になりつつあります。

 

問題の解決策は、次の2つです。

 

(1)自然エネルギーの活用

太陽光発電、地熱利用の拡大によって、エネルギーを確保する政策です。

太陽光発電の場合には、セットになる電池の確保が課題になります。

地熱発電の拡充があってもよいと思われますが、その議論はすすんでいません。

 

(2)原子力の活用

福島の原発事故の後では、世界的に原子力の利用を縮小する傾向にありましたが、2022年から、ロシアの化石燃料の確保が難しくなったため、当面原子力を使う流れが出てきています。

 

2)最近の動向

 現行の「40年ルール」は、2011年の東京電力福島第一原発の事故後に導入された規制の柱の一つです。

 

2012 年6月に「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」(略称「原子

炉等規制法」)が改正され、原発の運転期間は使用前検査に合格した日から起算して 40 年とされ、1回に限り、20 年を超えない期間延長することができることになります。

 

経済産業省が2022年9月22日に行った論点整理では、「多くの国では運転期間の上限はない」「米国では80年延長認可を取得した原子炉は6基ある」「40年は一つの目安であり、明確な科学的な根拠はない」などと、運転長期化を支持しています。

 

規制庁は、これらを合わせる形で40年ルールを延長するようです。

 

関西電力のHPには次のように書かれています。

 

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高経年化に対するFAQ 関西電力



Q:古い原子力発電所は設計が古いままなのではないですか。

 

A:最新の技術知見をふまえた新規制基準がすべてのプラントに適用されます。

 新規制基準がすべてのプラントに適用されることを、バックフィット制度といいます。







 

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3)問題点の整理

 

これを見ると、驚きます。

 

「古い原子力発電所は設計が古いままなのではないですか」という設問に対する答えは、質問に対応していません。「バックフィット制度」は、原発を設計しなおす制度ではありません。対象は、交換部品に留まります。

 

古い施設を何時まで使うかは、費用対効果の問題です。

 

これは、自動車を整備して乗り続けるのか、新車にいれかえるのか、どちらが経済的かという問題です。

 

安全レベルをあげれば、整備点検費用が増大します。40年は、その目安にすぎません。

いつ新車に乗り換えるべきかは、古い車の傷み具合や、予想される修理費によります。

つまり、原発毎の傷み具合や、予想される修理費が公開されなければ、耐用年数の議論はできません。

 

現在の案では、原発の点検は、電力会社が行うようです。

 

これは、ドライバーが自分で車検をしてもかまわないという制度です。

 

透明性がありません。

 

原発の耐用年数を40年に限る必要がありませんが、透明性のある点検と傷み具合や、予想される修理費のデータが公開されなけば、危険極まりなくなります。

 

引用文献

 

原子力発電所の耐用年数は40年なのですか? 関西電力

https://www.kepco.co.jp/siteinfo/faq/atomic/10014565_10620.html



高経年化に対するFAQ 関西戦力

https://www.kepco.co.jp/energy_supply/energy/nuclear_power/anzenkakuho/koukeinenka_faq.html



原発の「40 年ルール」とその課題 経済産業委員会調査室 縄田 康光

立法と調査 2016. 10 No. 381(参議院事務局企画調整室編集・発行

https://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/rippou_chousa/backnumber/2016pdf/20161003055.pdf