経験科学の学問分野の崩壊条件~経験科学の終わり

(データサイエンスは、経験科学の学問分野の境界を破壊しますので、エビデンスデータの収集が妨害されます)

 

1)危機認識の有無

 

筆者は、データサイエンスが、経験科学に対して破壊的な影響を与えてきていると考えますが、多くの専門家は、そのような危機意識を持っているようにはみえません。

 

大学や学術会議は、学問分野毎に分かれていて各学部、学科、学会は独立した価値を持つという前提で運営されています。

 

学問の研究手法は、分野ごとに異なり、その手法は、歴史的な経緯をもってブラッシュアップされたので、間違いないという経験科学の判定基準が用いられています。

 

インターネットが普及するまで、情報は貴重で、図書館にいくか、大学の専門の研究室にいかないと入手不可能なものが多くありました。

 

しかし、2022年現在、公開情報は、インターネット経由で、入手可能です。

企業秘密や軍事機密の情報は、もちろん手に入りませんが、全体としてみれば、図書館にいくか、大学の専門の研究室にいく以上の情報が入手可能です。

 

自動翻訳の精度には改善の余地がありますが、世界中の言語を少なくとも英語に自動翻訳して読むことが出来ます。

 

筆で書かれた手書きの古文書を読むのは、容易ではありませんが、現在、AIに学習させて、自動変換する試みがすすめられています。時間の問題で、古文書もデジタル化されると思います。

 

こうなると知識が多い専門家の価値は低くなります。また、統計的な推論は、分野別の専門知識を必要としません。

 

(1)多量の情報から、サマリーを抽出する能力において、人間は、AIに勝ち目がありません。

 

(2)統計学に基づく推論をする場合には、専門知識は不要です。疫学の元祖のスノーは、コレラの原因を推定するために統計学を用いましたが、その分析には、コレラ菌感染症に関する専門的な知識は不要でした。この時には、コレラ菌は、まだ発見されていませんでした。

 

統計的な推論は、専門知識を必要としませんが、エビデンスデータが必須です。

 

2)エビデンスを巡る攻防

 

アルファ碁は、碁譜のデータを作成して、学習します。エビデンスデータは碁譜のデータです。

 

アルファ碁の成功には、エビデンスデータが容易に得られるという背景があります。

 

経験科学の多くは、2次情報に基づいていて、1次情報であるエビデンスデータを含んでいません。

 

文学はその典型で、主人公の目を通して、状況が描かれますが、1次情報を含んでいません。

 

推理小説では、探偵と犯人を含む容疑者の聞き取りという2次情報の集合から、犯人を割り出します。

 

推理小説に、監視カメラが出てきて、監視カメラに犯人が写っていたら(1次情報があれば)、犯人は直ぐに特定できてしまい、小説が破綻します。



シャーロックホームズが、推理をめぐらして、犯人はCであるといっても、監視カメラの犯人にEが写っていたら、犯人がCであるというホームズの推理を誰も信じません。

 

データサイエンスのエビデンスは、シャーロックホームズという権威を破壊してしまいます。シャーロックホームズが、自分の権威が失われることに危機感を抱けば、監視カメラの設置を妨害して、エビデンスが集まらないようにします。

 

これは、一部の経験科学の権威者が行っていることです。

 

エビデンスがなければ、データサイエンスが無力で、経験科学や経験科学に基礎を置く権威主義が生き延びます。

つまり、DXが進むとこまる人がいて、エビデンスデータの収集を妨害しますので、DXはすすまないことになります。

 

エビデンスがいつまでも集まらない場合には、妨害者がいる可能性を考えるべきです。