(知識の賞味期限を考えると、年功型雇用で、イノベーションは不可能なことがわかります)
データサイエンスの知識は、10年は持ちません。以前は、知識の半減期は7年と言われていましたが、最近のAIでは、1年すると半分は使えない、知識の半減期は1年未満とも言われています。
今の大学で最新の知識を教えられているのか、教えるつもりがあっても生徒の理解力がついていけないのではないかなどの知識の習得のレベルで問題があります。
この話は、ひとまず、傍に置いて、仮に、知識の習得に問題がなかったと仮定します。
新卒一括採用で、企業に就職します。
日本企業は、大学での学習内容は実務には役に立たないと考えています。
企業は、大学入学時の偏差値にしか関心がありません。
大学の成績で採用に落ちることは稀です。
大学もスキルが身についていない学生を卒業させる、つまり、成績が水増しで当てにならないことを、企業が問題にするとは考えていないので、落第の判定基準は、スキルとは関係がありません。
専門も文系と理系の差はありますが、専門外の応募者でも採用することがあります。これは、多様性を考えているというより、基礎学習能力があれば、専門は問わないと考えているためです。
新規採用者には、その企業での仕事ができるようにOJTを行います。
簡単に言えば、転勤を伴う見習いから始めさせます。
新規採用者は、最初は、指示に従うだけです。
管理職になるとある程度のプロジェクトを担当する裁量権が出てきます。
しかし、現在の年功型雇用体系は、知識の半減期を想定していません。
管理職になった頃には、知識の半分以上は老朽化して賞味期限を過ぎています。
リカレント教育を受けていない60歳以上の社長の場合には、目を覆うばかりになります。
欧米の場合、エンジニアとテクニシャンを分けて採用し、エンジニアは、就職して数年でプロジェクトを任される前提で、採用されます。大学も、エンジニアのカリキュラムは、難易度が高く、卒業が難しい内容をそろえています。
この違いは、知識の習得にかかって費用を回収する点で、合理的なものです。
こう考えると、大学の理系の定員を増やしたり、企業がITエンジニアの採用数を増やしても、ほとんど効果が期待できないことがわかります。
マスコミは、今までに比べて、課長に慣れる最短年次が短くなったことを書き立てますが、管理職になる前に、知識の半分以上は老朽化して賞味期限が切れてしまうという社会的なロスを問題にしないのは、不合理と思われます。
現状では、リカレント教育もリスキリングも殆ど所得に反映しませんので、学習する人はいないわけです。たとえば、リカレント教育が不十分で、社長になれなかった人の話はきいたことがありません。
つまり、効率性の面で、経済成長があり得ない選択をしていることになります。