(日本は市場経済ではないのかもしれない)
2022/09/24の日経新聞に、三菱総研の武田洋子氏の2022年の第3四半期(4から6月)の生産コストの消費者物価への転嫁率の試算がでています。
それによると、日本は28%、米国は73%、欧州は49%だそうです。
生産者コストが消費者物価に転嫁されるまでには、タイムラグがあります。その点を考えれば、米国の73%は、時間の問題で、100%になると考えられます。生産価格が、小売り価格に反映され、消費者物価指数があがるのは、市場経済の原則であり、インフレそのものです。インフレになると、名目賃金は上昇し、物価が上がり、経済が拡大します。ただし、賃金の上昇は、物価の上昇を後追いするので、労働分配率は低下します。
さて、日銀は10年にわたり、インフレ政策を進めてきました。これは、物価と、賃金が、シーソーで上がって、経済規模が拡大する状態です。つまり、生産価格が小売価格に転嫁されないと、インフレ政策は成り立ちません。しかし、その前提は成り立っていません。これは、市場が正常に作用していないことを示しています。
過去20年間で、日本は、ほとんど物価が変動していません。物価が変動しておらず、賃金が上昇すれば、消費が拡大して、売り上げが伸びます。その場合には、需給バランスが崩れるので、物価が上昇します。物価が上昇しなかった原因は、賃金が上がらなかったからです。20年間で、労働分配率は下がり賃金は下がっています。
労働市場があれば、同一労働同一賃金になります。人手不足の職種の賃金は上昇します。
しかし、そうなっていませんから、労働市場は機能していません。
労働市場が機能していなければ、物価と、賃金が、シーソーで上がって、経済規模が拡大することはありません。
つまり、インフレ政策には、経済を拡大させる効果はありません。
労働市場が正常に機能し、賃金が上昇していれば、現在は、インフレになっていたはずです。
実際は物価は上がるけれど賃金が上がらないので、生産費用を小売価格に転嫁できないわけです。消費支出が一定であれば、消費者は購入量を減らすか、量を確保して質を落とすか、どちらかになります。
金融緩和政策は、正常な市場がある資本主義の場合にしか機能しません。
こう考えると、最大の課題は、日本がまともな市場経済でない点にあると思われます。