スマートシティとアーキテクチャ
(スマートシティはアーキテクチャの試金石です)
1)自治体OS売ります
「自治体OS売ります」は、2022年3月に、Novel Daysに筆者が書いた小説のタイトルです。
これは、DX問題を小説にするためには、目に見える形にする必要があるので、「自治体O」という比喩を作成したものです。
自治体OS売ります
https://novel.daysneo.com/works/b34957e8dc68079d91d79bff91af0969.html
この小説を書いた時点では、トヨタ「Woven city(東富士)」は知っていましたが、Google; Sidewalk Lab「Side walk Tronto」(2022年5月終了)は知りませんでした。そもそも、スマートシティの小説として考えたのではなく、今でも遅れている自治体のDXの将来像はどうなるのかという問題意識で書いた小説なので、スマートシティは念頭にありませんでした。
実際に、DXを進めることはアーキテクチャの塊ですから、共通データ、IDの設定、モジュール分割、モジュール間通信を決める必要があります。モジュールは階層化する必要があります。モジュールのコーディングでは何をオブジェクトにするのか、オブジェクトの属性はどうするかを設計する必要があります。これらは、コーディングする前にしっかり設計しないと、システムは座礁してしまいます。最初から、全データを扱うことが難しい場合は、重要かつ使用頻度の高いデータを中心にモジュールを設計すべきです。
これらは、極めて大切ですが、こうした内容を小説に書き込むと、読むに耐えられなくなってしまいます。そこで、自治体OSやいくつかのたとえ話で、アーキテクチャ問題の趣旨を理解してもらう方法を取りました。
こうしたアプローチは、推理小説や恋愛小説とは全く異なります。SF小説でも、アーキテクチャを扱った小説は皆無だと思います。
アーキテクチャを書くと、ストーリー展開は、殆どなくなります。ある意味では、執筆している本人も、無謀だと思いながら書いていました。
2)スマートシティ
政府がスマートシティの推進をしていることはニュースなどで知っていました。
しかし、その内容はよく調べていませんでした。
2021年4月に、スマートシティガイドブックが出版されました。
今回は、その内容を見て、書いています。
結論から言えば、スマートシティガイドブックは全くアーキテクチャになっていないので、実現の可能性はありません。
スマートシティガイドブックには、「都市OS(データ連携基盤)の導入」が出てきます。
ここには、モジュール設計も、IDの設計もありません。行政の担当部署の名前が、モジュールの代わりに並んでいます。
都市OS(データ連携基盤)の作成前に必要な要件に、データの構造化、更新管理、整合性のチェックなど、インタフェースの標準化があります。この部分は完全に抜け落ちていますので、都市OS(データ連携基盤)はできません。デバイスがスマホやタブレット、PCで、クラウド上で、それらが通信するために、アマゾンやマイクロソフトなどのクラウドサービスは、標準化されたインターフェース(API;Application Programming Interface)を提供しています。日本のITベンダーで、APIを提供できるところはないと思います。アマゾンやマイクロソフトなどのAPIを使うとすれば、それに対応している機器のみが対象になりますが、リアルデータを観測する部門では、ITベンダーが、非公開の独自のAPIを使って、サービス提供をしているところがまだ多いと思います。これは、公開APIに変更すると、今までのITベンダーからより安いサービス会社に簡単に乗り換えられるので、それを回避するためです。
SCADAの利用率が低いのもこの理由です。クラウドタイプのSCADAで大抵のことはこなせます。ハードウェアは少なくなるので、メンテナンス費用も下がります。こうなるとITベンダーの収益が悪化するので、ITベンダーは標準APIを採用しません。
つまり、ITベンダービジネスのアーキテクチャに問題があります。
アマゾンやマイクロソフトのクラウドは基本部分は、ISOやIEEEで決められた標準APIを使っていますが、より利便性の高い独自のAPIも提供しています。
引用文献
スマートシティ
https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/smartcity/
スマートシティガイドブック検討会・分科会の開催について(2021年1月~3月)
https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/smartcity/guide2020.html