アーキテクチャ(25)

スマートシティとアーキテクチャ

(スマートシティはアーキテクチャの試金石です)

 

1)自治体OS売ります

 

自治体OS売ります」は、2022年3月に、Novel Daysに筆者が書いた小説のタイトルです。

 

これは、DX問題を小説にするためには、目に見える形にする必要があるので、「自治体O」という比喩を作成したものです。

 

自治体OS売ります

https://novel.daysneo.com/works/b34957e8dc68079d91d79bff91af0969.html

 

この小説を書いた時点では、トヨタ「Woven city(東富士)」は知っていましたが、Google; Sidewalk Lab「Side walk Tronto」(2022年5月終了)は知りませんでした。そもそも、スマートシティの小説として考えたのではなく、今でも遅れている自治体のDXの将来像はどうなるのかという問題意識で書いた小説なので、スマートシティは念頭にありませんでした。

 

実際に、DXを進めることはアーキテクチャの塊ですから、共通データ、IDの設定、モジュール分割、モジュール間通信を決める必要があります。モジュールは階層化する必要があります。モジュールのコーディングでは何をオブジェクトにするのか、オブジェクトの属性はどうするかを設計する必要があります。これらは、コーディングする前にしっかり設計しないと、システムは座礁してしまいます。最初から、全データを扱うことが難しい場合は、重要かつ使用頻度の高いデータを中心にモジュールを設計すべきです。

 

これらは、極めて大切ですが、こうした内容を小説に書き込むと、読むに耐えられなくなってしまいます。そこで、自治体OSやいくつかのたとえ話で、アーキテクチャ問題の趣旨を理解してもらう方法を取りました。

 

こうしたアプローチは、推理小説や恋愛小説とは全く異なります。SF小説でも、アーキテクチャを扱った小説は皆無だと思います。

 

アーキテクチャを書くと、ストーリー展開は、殆どなくなります。ある意味では、執筆している本人も、無謀だと思いながら書いていました。

 

2)スマートシティ 

 

政府がスマートシティの推進をしていることはニュースなどで知っていました。

 

しかし、その内容はよく調べていませんでした。

 

2021年4月に、スマートシティガイドブックが出版されました。

 

今回は、その内容を見て、書いています。

 

結論から言えば、スマートシティガイドブックは全くアーキテクチャになっていないので、実現の可能性はありません。

 

スマートシティガイドブックには、「都市OS(データ連携基盤)の導入」が出てきます。

 

ここには、モジュール設計も、IDの設計もありません。行政の担当部署の名前が、モジュールの代わりに並んでいます。

 

都市OS(データ連携基盤)の作成前に必要な要件に、データの構造化、更新管理、整合性のチェックなど、インタフェースの標準化があります。この部分は完全に抜け落ちていますので、都市OS(データ連携基盤)はできません。デバイススマホタブレット、PCで、クラウド上で、それらが通信するために、アマゾンやマイクロソフトなどのクラウドサービスは、標準化されたインターフェース(APIApplication Programming Interface)を提供しています。日本のITベンダーで、APIを提供できるところはないと思います。アマゾンやマイクロソフトなどのAPIを使うとすれば、それに対応している機器のみが対象になりますが、リアルデータを観測する部門では、ITベンダーが、非公開の独自のAPIを使って、サービス提供をしているところがまだ多いと思います。これは、公開APIに変更すると、今までのITベンダーからより安いサービス会社に簡単に乗り換えられるので、それを回避するためです。

 

SCADAの利用率が低いのもこの理由です。クラウドタイプのSCADAで大抵のことはこなせます。ハードウェアは少なくなるので、メンテナンス費用も下がります。こうなるとITベンダーの収益が悪化するので、ITベンダーは標準APIを採用しません。

 

つまり、ITベンダービジネスのアーキテクチャに問題があります。

 

アマゾンやマイクロソフトクラウドは基本部分は、ISOやIEEEで決められた標準APIを使っていますが、より利便性の高い独自のAPIも提供しています。




引用文献

 

スマートシティ 

https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/smartcity/

 

スマートシティガイドブック検討会・分科会の開催について(2021年1月~3月)

https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/smartcity/guide2020.html