関川1号砂防えん堤(長野県信濃町・新潟県妙高市)
1995(平成7)年の梅雨で、吊り橋と遊歩道が壊れたので、1995年から2004年までに、12億9千万円をかけて作った砂防ダムです。
写真1が案内板です。
写真3は、赤い矢印で、魚道を、水色の四角で、水クッションを示しています。
写真4は砂防ダムの上流側です。
この土砂の堆積は異常です。河川の上流部の石の粒径は大きくなります。また、河川の中央に、非沈水系の植物が生えることはありません。
写真6の苗名滝下流と比べると、違いがわかります。
写真5は、砂防えん堤の下流です。
勾配の急な河川では、流れは石で遮られて、階段状になります。
写真6の水色の線は、水面の高さが大きく変化している場所をしめしています。
落差を砂防ダムで吸収した結果、砂防ダム下流の河床勾配は、上流ではありえないほど、緩やかになっています。
つまり、砂防ダムは、健全な土砂と沈水木の移動を阻害して、河川環境を破壊しています。
さらに、写真5に見るように、砂防ダム下流の河川は直線化されているうえ、河畔帯植生が全くありまません。
1960年頃の河川生態学が進んでいなかった時代であれば、このような環境に悪い砂防ダムをつくることもやむを得なかったと思いますが、今世紀に入っても、旧態依然とした、砂防ダムが作られていることがわかります。
環境に配慮した設計の基本は、次の点です。
(1)土砂は、災害を引き起こさない範囲で、できるだけ、自然に近い形で、移動させるべきです。止めてはいけません。 (2)沈水木や、その分解物であるPOMの発生と移動を阻害してはいけません。このため工事には、コンクリートではなく、丸太を使うべきです。 (3)河床勾配は、蛇行をつかって緩くします。1m未満の自然なちいさな落水を多数使って、流れを減勢します。 (4)河畔帯植生と氾濫原をできるだけ確保します。
これが、欧米の河川環境復元マニュアルに書かれている工法です。
魚道があっても、魚の生息水域と餌が破壊されているので、魚の量は、激減しているはずです。