エレン・オチョアのカード~2030年のヒストリアンとビジョナリスト

(失敗を繰り返さない方法は、エレン・オチョアのカードに書かれています)

 

知床半島の遊覧船の事故、KDDIの回線障害など、トラブルがあるたびに、担当する官庁が、注意や行政処分をしますが、類似のトラブルの再発防止に成功した例はありません。

 

事故のリスクがある場合に、誰に責任があるのかは微妙な問題です。

技術者は、どこまで、倫理的な責任を負うのか、事故の再発を防止するには何が必要かが課題になる。

 

1986年01月28日のスペースシャトル・チャレンジャー号の爆発事故では、機体全体の分解は、右側固体燃料補助ロケット(Solid Rocket Booster, SRB)の密閉用Oリングが発進時に破損したことから始まっています。

打ち上げ前に、SRBの製造とメンテナンスを受け持つサイオコール社の技術者ロジャー・ボージョレーは、SRBの接合部を密封するゴム製Oリングの弾力性が異常低温によって受ける影響について不安を表明しています。しかし、打ち上げは決行され、事故が起こりました。この場合、技術者の倫理からみて、ロジャー・ボージョレーの行動は妥当であったかが問題視されます。たとえば、もっと説得に努力すべきではなかったかといった論点です。

2003年2月1日には、コロンビア号空中分解事故が起きます。

1月16日の打ち上げの約80秒後、外部燃料タンクの断熱材が脱落し、左翼前縁部に時速850kmで衝突しました。2月1日、帰還のために大気圏に突入した際、衝突による損傷部から超高温の空気が流入したために機体が空中分解しています。断熱材の脱落は過去にも頻繁に起きていましたが、NASAは抜本的な対策を講じなかったことが原因です。

 

http://www.shippai.org/fkd/cf/CB0011019.html

 

エレン・オチョアは、1993年に、ヒスパニック系の女性として初めて宇宙にいった元宇宙飛行士で、コロンビア号の事故の時には、宇宙飛行室の副室長でした。

 

エレン・オチョアは、失敗を繰り返さないために、次のチェック事項を書いたカードを常に身に着けるようにしました。

 

  • あなたはなぜそのように想定するのか・その結論が正しいと思える理由は?それが誤っている場合、何が起こりうるか?

  • あなたの分析の中で、不確定要素は何か?

  • あなたの提案のメリットは理解できるが、デメリットは何か?

 

こうした判断の正しさは、結論が出て(スペースシャトルが墜落して)からでは遅すぎます。

ですから、「結果の説明責任」だけでは不十分で、「過程や手順についての説明責任」(プロセスアカンタビリティ)が必要です。

 

エレン・オチョアのカードは再考を促します。その際、最初の判断と2度目の判断、あるいは、コストとスケジュールに基づく判断と技術的妥当性に基づく判断は、判断主体を分離する必要があります。これは、現在のNASAのルールです。

 

エレン・オチョアの話は、アダム・グラントの「THINK AGAIN」の第10章に出てきます。

この話を読むだけで、この本は購入する価値があります。エレン・オチョアの話は、失敗を繰り返さないためのビジョンを示しています。

 

失敗事例データベースには、事故のヒストリーは載っていますが、再発防止のビジョンはのっていません。

 

次の日曜日には、参議院選挙が行われます。立候補者の政見には、99%、プロセスアカンタビリティがありません。立候補者だけでなく、現役の議員の発言にも、プロセスアカンタビリティがありません。

 

つまり、このままいくと、日本国株式会社も、スペースシャトルと同じように墜落する可能性があります。