水生生態系復元の欧米基準~2030年のヒストリアンとビジョナリスト

(水生生態系の復元は、欧米では、塩性湿地と河畔湿地の回復にぼぼ手法が収斂しつつありますが、日本では、この点は、全く考慮されていません)

 

日本では、依然として、水産資源の減少が続いていて、原因らしきものを1つ取り上げて、対策を講じようとしています。

 

図1は、アメリカのチェサピーク湾の牡蠣の漁獲量です。






図1 チェサピーク湾の牡蠣の漁獲量



 

これだけみれば、状況は日本と変わらないように見えます。

 

しかし、この本題は、欧米では、ほぼ、決着がつきつつあります。

 

以下では、フラッグシップ種かつアンブレラ種を扱うので、先に説明しておきます。

 

(1)フラッグシップ種 (Flagship species) From Wikipedia, the free encyclopedia

 

フラッグシップ種は、特定の場所または社会的状況における生物多様性保全への支持を高めるために選択された種です。定義はさまざまですが、保全活動のマーケティングをサポートするために、概念の戦略的目標と社会経済的性質に焦点を当てる傾向があります。この種は人気があり、シンボルやアイコンとして機能し、人々がお金や支援を提供するように刺激する必要があります。

 

(2)アンブレラ種(Umbrella species) From Wikipedia, the free encyclopedia

 

アンブレラ種は、保全関連の決定を行うために選択された種です。通常、これらの種を保護すると、生息地の生態学的コミュニティを構成する他の多くの種が間接的に保護されるためです(アンブレラ効果)。多くの種の状態を判断するのは難しいため、種の保存は主観的​​なものになる可能性があります。アンブレラ種は、多くの場合、保全が他の種に利益をもたらす象徴種 か、生態系への影響のために保全の対象となる可能性のあるキーストーン種のいずれかです。。アンブレラ種は、潜在的な保護区の場所を選択し、これらの保護地域または保護区の最小サイズを見つけ、生態系の構成、構造、およびプロセスを決定するのに役立ちます。

 

なお、この定義は、次の日本語のウィキペディアとは一致しません。ここでは、英語版を使います。大きな違いは、英語版では、キーストーン種は、食物連鎖の頂点の消費者とはみなさない点にあります。日本語版のキーストーン種の解釈は、日本の高等学校の生物学の解釈に一致していますが、英語版の生物学の教科書には、一致しません。

 

アンブレラ種(アンブレラしゅ、英語: Umbrella species)とは、その地域における生態ピラミッド構造、食物連鎖の頂点の消費者である。アンブレラ種を保護することにより、生態ピラミッドの下位にある動植物や広い面積の生物多様性・生態系を傘を広げるように保護できることに由来する概念。



1)沿岸生態系

 

沿岸生態系は、塩性湿地と牡蠣の生態系の復元を中心に動いています。

 

牡蠣は、フラッグシップ種かつアンブレラ種です。

 

牡蠣の生息条件は、13項目の条件で、生育ステージごとに解明されています。

 

つまり、13項目の生態系の測定値があれば、生息条件が判定できます。

 

牡蠣は、汽水に生息するので、塩性湿地が必要です。

 

牡蠣は。水質を浄化しますので、他の生物の生息環境を改善します。

 

2)河川生態系

河川生態系は、湿地と淡水2枚貝、とくに、川真珠貝の生態系の復元を中心に動いています。

 

真珠貝は、フラッグシップ種かつアンブレラ種です。

 

真珠貝は。水質を浄化しますので、他の生物の生息環境を改善します。

 

3)まとめ

 

この2つの貝は、食物連鎖の頂点にはいませんが、水質浄化を通じて、他の種に大きな影響を与えているので、キーストーン種ですが、アンブレラ種と呼ぶ方が、より正確です。

 

環境の復元は、漁業だけのためではありませんので、EBMを通じて、ステークホルダー間の調整が行われます。

 

カナダの場合には、漁業権は有償で、漁家は、毎年購入します。コストもかかりますが、許可数をしぼって、漁獲を制限することで、3か月程度の短期間に大きな収入が得られます。

 

海は、漁家の所有物ではありませんので、違法に漁業をする人を取り締まったり、締め出すことはできますが、正当な範囲で、レクリエーションをする人を締め出すことは違法です。ステークホルダー間の調整とは、こうした調整作業を含みます。牡蠣には水質浄化機能がありますので、天然牡蠣を過剰に漁獲することも認められないと思われます。一方では、レジャーボートが、牡蠣の生息域を破壊することもあります。このような問題は、エコシステムで考えないと解決できなくなります。いずれにしても、調整の場がないと問題がこじれてしまいます。

 

2022/06/04の日経新聞の1面には、地域再生に、「川で街づくり」をする都道府県がふえていると書かれています。件数が1位は、北海道で、2位は、茨城県です。面積当たりで考えれば茨城県がトップになります。

 

茨城県内には、河川敷公園が多数ありますが、ほとんどが、運動場になっていて、公園内に湿地として保全されている面積は、極めてわずかです。このあたりも欧米とは意識の差を感じます。






Graph of the Day: Oyster harvests in the Chesapeake Bay, 1880-2008

http://desdemonadespair.net/2015/03/graph-of-day-oyster-harvests-in.html



「あれだけ捕れたアワビが激減」小田原の海に救世主 2022/06/05 藻場再生へ始動 神奈川新聞

https://news.yahoo.co.jp/articles/7e17c395968e8cd0a1cd50611c9841003bec93f3




宗像の海で高級食材ウニが“厄介者”に 再生のカギは「捨てられる食材」と「陸上養殖」 目指せブランド化 2022/06/02 テレビ西日本

https://news.yahoo.co.jp/articles/e1f426e8a5f3b89e12e3d6a7069f633455432749