生物多様性条約と政治~2030年のヒストリアンとビジョナリスト

生物多様性条約は、政治にも、注文を付けます)

 

生物多様性条約は、生態系サービスの便益を最大化することを目的としています。

 

「この条約は、生物の多様性の保全、その構成要素の持続可能な利用及び遺伝資源の利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分をこの条約の関係規定に従って実現することを目的とする」



そのためには、1992年5月の条約原文には、エコシステムアプローチを使うことが明記されています。

日本は、1993年6月に条約を締結し、1993年12月に、条約は発効しています。

 

エコシステムアプローチはその後、実装の努力がなされ、EBM(生態系ベース管理)に集約しています。

 

生態系ベースの管理は、生態系と社会の2つのシステムのコンポーネントから出来ています。

 

ここまでは、前回の復習です。

 

問題は、生態系サービスの便益の最大化です。

 

生態系サービスには、全ての人間活動が含まれています。

 

つまり、生物多様性条約は、漁業、農業、都市生活など、全ての人間の活動領域をもカバーしています。

 

社会システムのコンポーネントでは、ステークホルダーアプローチが使われます。

 

これは、環境復元のルール作りに住民などの利害関係者が参加して、目標とロードマップを定めることを意味します。

 

生態系サービスの便益は、住民によって異なります。ここでは、主に、次の点を配慮する必要があります。

 

(1)人口、地域の産業などの条件の違いへの配慮をする必要があります。

 

人口密度が小さい場合には、高い復元目標を設定できますが、人口密度が高ければ、目標のレベルを下げないと期限内に実現できなくなります。漁業や農業の地域経済に占める割合も目標に影響を与えます。

 

(2)生態系の復元の状態、健全度に合わせた目標設定をする必要があります。

 

このとき、「政治的な境界だけでなく、生態学的な境界も考慮」する必要があります。土地利用計画における線引きは、政治的な境界ですから、土地利用上、合法であることが、問題なしとはいえません。

 

(1)(2)を考えると、法律や条例で一律にルールを作る方法では、生物多様性は守れません。ステークホルダーが話し合って、実現可能な目標を決めなければ、進めません。

 

これは、規制を撤廃することでは問題解決する方法ではありません。ケースバイケースで、それまでの規制を弱めたり、強めたりしなければ、生物多様性は守れません。

また、EBMですから、特定の政策や事業で、問題が解決するというアプローチを否定しています。

 

たとえば、6月4日の新聞に掲載された日本の出生率は、大変低いものでした。

 

エコシステムベースのアプローチは、複雑な問題は、システムベースのアプローチでなければ、解決できないという科学的な知見に基づいています。生態系の復元は、邪悪な問題(evil problem)であって、システムベースのアプローチでなければ解決できません。

 

出生率の問題も、同様に邪悪な問題(evil problem)であると思われます。そうであれば、科学的知見は、システムベースのアプローチでなければ問題は解決しないことを指しています。不妊治療の保健対象化や子ども庁は、システムベースのアプローチではありません。システムベースのアプローチを採用しない場合には、問題解決の方法が間違っているので、問題は解決しないことになります。

 

生物多様性条約は、少子化で、税収が減って、環境対策費が削減されるので、あれば、その部分も、EBMの社会システムのコンポーネントに反映しています。

 

少子化や政治と、生物多様性条約は無縁ではないのです。

 

生物多様性条約のシステムベースのアプローチが理解できれば、法律を作ったり、補助金を配分することで、問題解決ができると考えることは異端で、環境と科学に対する思慮を欠いていることになります。

 

この本は、変わらない日本を対象にしています。ステムベースのアプローチに対する無理解は、少なくとも、邪悪な問題(evil problem)に対しては、問題解決ができない原因と言えます。



生物多様性条約 生物多様性センター訳文

https://www.biodic.go.jp/biolaw/jo_hon.html

 

生物多様性条約 原文

https://www.cbd.int/convention/text/

 

生物多様性条約 外務省

https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kankyo/jyoyaku/bio.html