トロッコ問題とデータサイエンス~2030年のヒストリアンとビジョナリスト

(データサイエンスを使えば、トロッコ問題を一般化できます)

 

1)トロッコ問題

 

ウィキペディアによれば、トロッコ問題とは、次のような問題です。

 

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ロッコ問題(トロッコもんだい、英: trolley problem)あるいはトロリー問題とは、「ある人を助けるために他の人を犠牲にするのは許されるか?」という形で功利主義と義務論の対立を扱った倫理学上の問題・課題。 



フィリッパ・フットが1967年に提起し、ジュディス・ジャーヴィス・トムソン(英語版) 、フランセス・キャム(英語版)、ピーター・アンガー(英語版)などが考察を行った。人間は一体どのように倫理・道徳的なジレンマを解決するかについて知りたい場合は、この問題は有用な手がかりとなると考えられており、道徳心理学、神経倫理学では重要な論題として扱われている。

 

(a) 線路を走っていたトロッコの制御が不能になった。このままでは前方で作業中だった5人が猛スピードのトロッコに避ける間もなく轢き殺されてしまう。

(1) この時たまたまA氏は線路の分岐器のすぐ側にいた。A氏がトロッコの進路を切り替えれば5人は確実に助かる。しかしその別路線でもB氏が1人で作業しており、5人の代わりにB氏がトロッコに轢かれて確実に死ぬ。A氏はトロッコを別路線に引き込むべきか?

 

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2)データサイエンスの課題

 

ウィキペディアには、トロッコ問題のバリエーションがのっています。しかし、データサイエンスの視点から一般化した例は見当たりません。

 

そこで、今回は、次の課題を設定します。

「トロッコ問題をデータサイエンスの視点で一般化し、具体例を説明しなさい」

 

読者も解答を考えてみて下さい。

 

解答の質によって、トロッコ問題が理解できているのか、内容は理解できていないがヒストリーをコピーして、わかったふりをしているのかの判定ができます。

 

3)解答例

 

次に解答例を示します。

 

ラインAに5人、ラインBに1人がいて、どちらが死ぬべきかという課題です。

 

人数は、ラインAにNa人、ラインBにNb人とすれば一般化できます。

 

ベンサム功利主義では、5人にウェイトをつけます。

 

5人のポイントが、Pa(1)、Pa(2)、Pa(3)、Pa(4)、Pa(5)であったとします。

 

ラインAのポイントPLaは、次式のように書けばよいでしょう。

 

PLa=Pa(1)+Pa(2)+Pa(3)+Pa(4)+Pb(5)=ΣPa(i) (i=1,..,5)

 

人数5を一般化すれば、次になります。

 

PLa=ΣPa(i)    (1)

 

同様に、ラインBについてもPLbを定義することができます。

 

功利主義は、

 

PLa>PLb であれば、ラインBに(判定関数X=1)

 

PLa<PLb であれば、ラインAに(判定関数X=0)

 

ロッコをすすめるべきであると考えます。

 

ここでは、判定関数Xは、1のときラインBに、0の時に、ラインAに、トロッコを進める意味と定義します。

 

一方、カントの義務論では、重みはつけられないことになりますので、

 

Pa(1)=Pa(2)=Pa(3)=Pa(4)=Pa(5)=0

 

Pa(i)=0

 

となり、

 

PLa=PLb=0

 

となりますが、数式の上では、(1)式に含まれます。

 

つまり、功利主義も義務論も、Pa(i)の設定問題に一般化できます。

 

次に、データサイエンスの視点を入れて確率変数を考えることにします。

 

Pa(i)、PLaを確率変数と考えることもできます。

 

たとえば、確率変数であれば、ベンサム流のPa(i)とカント流のPa(i)を合成することは可能です。

 

しかし、一番簡単な方法は、Xを確率変数とすることです。

 

例えば、

 

X=PLa/(PLa+PLb)

 

とします。

 

X>0.5であれば、ラインBに

 

X<0.5であれば、ラインAに

 

ロッコをすすめるのであれば、上記と全く同じになります。

 

しかし、

 

Xの確率で、ラインAに、トロッコをすすめるのであれば、異なった答えが得られます。

 

例えば、X=0.66=2/3の場合を考えます。

 

X=0.66になる現象、例えば、サイコロの目が4以下の場合を使えば、トロッコの切り替えができます。サイコロを振って、5か6がでれば、ラインAに、1から4が出れば、ラインBに、トロッコを切り替えればよいことになります。

 

実際のデータや判断には、バラツキがあるので、同じような確率変数になります。

 

つまり、トロッコ問題は、数学モデルをつくって、もっとも合理的なパラメータとアルゴリズムの選択問題に置き換えられます。このとき変数は、確率変数になるので、2者択一にはなりません。

 

ウィキペディアには、「このトロッコ問題は、そうした自動運転車のAIを設計する際に、どのような判断基準を持つように我々は設計すべきなのか、ということのかなり現実的、実際的な議論も提起している」と書かれていますが、自動運転の設計者が考えていることは、ここで例にあげたようなパラメータチューニングと思われます。



引用文献

ロッコ問題 ウィキペディア

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%83%AD%E3%83%83%E3%82%B3%E5%95%8F%E9%A1%8C