安心・安全の課題～2030年のヒストリアンとビジョナリスト

(日本社会の長所といわれてきた、安全は、今後悪化する可能性が高いです。安心も経済力が落ちると難しくなります)

大日本帝国システムは、太平洋戦争で崩壊します。つまり、「警察制度を充実させ、軍備を増強して、安心と安全を確保する」(前節（６）)は失敗します。その原因は、（６）が、経済力の関数であるためです。

日本が、安全・安心でいられる大きな原因は、国のGDPが大きいこと、一人当たりGDPが高いことがあります。国のGDPが下がると、軍備にお金を回すことができなくなります。

あるいは、食料の安全保障において、自給率は問題ではありませんが、経済力が落ちて、輸入食料の購入で競り負けするようになれば、食料の安全保障は保てなくなります。現在、近づきつつある状態は、これに相当します。

以上は、国レベルの問題です。

個人のレベルになると、これは、貧困問題になります。

貧困問題が拡大すると、社会の安心・安全は保たれなくなります。

これは、人間は、生きていくことが困難になり、特に、食べ物に事欠くようになると、生存のためには、なんでもするようになるためです。「衣食足りて、礼節を知る」ことが肝心です。

ホームレスの調査があります。

2020年には、市町村の巡回による目視調査で、3824人（うち東京都は800人）のホームレスがいました。

東京都は2024年までにホームレスを0にする公約を掲げています。

2021年は、人数は調査せず、調査方法約1,300人を目標（達成1169人）に個別面接を実施しています。自立に向けた今後の展望に関する質問に対し、「今のままでいい」と回答した人が35.2%もいました。

ですので、ホームレスを全て否定する訳にはいきませんが、健康状態などの解答をみると、問題はあります。

ホームレスや、貧困問題で注意すべき点をあげます。

（１）カウントの仕方の問題

現在のホームレスの調査方法は、市町村の巡回による目視調査です。この方法で、どこまで実態を把握しているかは、不明です。

例えば、2018年の人口当たりのホームレスの比率は、ニューヨークが東京の30倍あります。

仮に、東京のホームレスの比率がニューヨークと同じであれば、800x30=24000人のホームレスがいることになります。

（２）今後の展開

最近のホームレスは高齢化が進んでいます。とはいえ、人数は減少傾向なので、このトレンドが進めば、朗報です。ただし、賃金分布をみるとパートタイムが増えているので、今後、増加する可能性も高いです。

（３）基本的な対策

厚生労働省は、ホームレス対策は行っていますが、この問題は、基本的には、労働賃金と社会保障の水準の問題です。ホームレスの仮宿泊施設は、当座の問題解決にすぎません。

（４）変化の速度

今のところ、日本の社会は比較的犯罪リスクが低い状態が続いています。問題は、悪化する場合の変化速度です。

2022/05/02のNewsweekに、長野弘子氏（在シアトル）が投稿した記事では、「2020年に犯罪被害額が増加した都市のワースト3は、シアトル、ニューオーリンズ、シカゴだ。それぞれ前年比42％、40％、29％増となった」そうです。

1年で、犯罪被害額が、4割増は信じられません。この速度で、犯罪が増加した場合には、3年くらいで、安全な日本はなくなってしまいます。

（５）まとめ

今すぐに、日本の安心・安全がなくなる訳ではありませんが、GDPが伸びていない一方で、賃金がさがり続けていますので、このままいけば、どこかで、クラッシュしてしまいます。

特に、問題解決のビジョンが示されていない点には、不安を覚えます。

引用文献

ニューヨークのホームレスと東京のホームレスを比較してみた～人生の選択肢とは～データの時間

全米で治安悪化、アマゾン本社のあるシアトルが「ワースト1位」に　2022/05/02 Newsweek 長野弘子（在シアトル）

ホームレス平均年齢63歳に　2022/04/26 KYODO

ホームレスの実態に関する全国調査（生活実態調査）結果について 2022/04/26 厚生労働省

ホームレスの実態に関する全国調査（生活実態調査）結果について 2021/04/28 厚生労働省

ホームレスの自立支援等に関する東京都実施計画（第３次）2014/06