(衝突回避のルールは、有益ですが、守らない人と国がでます)
人工物のレンマは、人工物を観測して、観測データから帰納法で得られたルールは、いつ破綻しても当然と言います。
人工物のレンマは、だからといって、人工物のルールが、役に立たないといっている訳ではありません。
人工物の特殊な例に、衝突回避のルールがあります。今回は、この問題を考えます。
1)信号機と右側通行
道路で衝突を回避する手段に、信号機と右側通行があります。
右側通行(あるいは左側通行)は、人工物で、向きは右でも左でも問題はありませんが、統一する必要があります。
信号機には、青、黄、赤のランプがついていますが、この色にも、格段の意味はありません。重要なことは統一されていることです。
交差点でも右側通行を使えば、信号機が不要になります。これが、ラウンドアバウト(英: roundabout)、または環状交差点です。
これらのルールを破ることはできますが、破ると、衝突が起こります。
とはいえ、信号無視のように、特定の自動車は、ルールを破ることで、走行時間の短縮などの利益を得る場合があります。
また、他の自動車がいない場合に、赤信号で一旦停止することは、衝突のリスクがありませんので合理的ではないかもしれませんが、ルールを単純化するために、採用されています。技術レベルが上がって、この条件を緩和した例が感応式信号機です。
ルールが破られる条件は何かという問題設定が行われることがあります。
その条件の一つは、ルール破りがバレないことと考えられています。
中国では、監視カメラを増やし、AIを使った個人認証をすることで、ルール
違反が減っています。
2)法律・条例・行政指導
法律・条例・行政指導の一部にも、衝突回避を目的としたルールがあります。
究極の衝突は、殺人です。殺人を避けるために、殺人は犯罪というルールが採用されています。相手が、殺人は犯罪であるというルールを守らなければ、殺されてしまいますので、正当防衛の殺人は犯罪ではないというルールが付加されます。
銃規制も同じ問題を抱えています。一旦、銃が広まってしまうと、正当防衛には、銃は必要と考える人が増えます。
3)戦争
国家間の衝突は、戦争になります。
第1次世界大戦までは、戦争に勝つことは、経済的な利益につながりました。
農地が経済的な利益につながった例は、植民地のプランテーションに見られます。
地下資源を占有することは、利益を生みます。
第2次大戦以降、大きな賠償金は、戦争を引き起こすので、回避されるようになりました。それでも、戦争は利益になるから行われると思われます。
ここでは、戦争について考えるべき事項をあげておきます。
(1)戦争による衝突は、一般市民の利益にはなりません。
(2)戦争は軍隊や軍隊を押さえている政治グループの利益になります。
ベトナム戦争のあとで、ドイモイを行って市場経済を導入するのであれば、市民の利益からすれば、ベトナム戦争は、無駄な戦争だったように見えます。しかし、ベトナム戦争で、南側が勝利していれば、現在の共産党の政治グループは、存在していないと思われます。つまり、軍隊や軍隊を押さえている政治グループの利益からみれば、ベトナム戦争は意味のある戦争でした。
周辺諸国が民主化した結果、ロシアが民主化すれば、独裁政権はなくなります。それは、軍隊や軍隊を押さえている政治グループの利益がなくなることを意味します。これを防ぐために、戦争を起こすことは、十分に考えらえたシナリオです。
民主化は正義ですが、民主化が軍隊の利益になるとはかぎりません。台湾のように、独裁政権から、民主政権に、紛争なしに切り替わることもありますが、例外的に少ないです。
引用文献
ラウンドアバウト ウィキベテア