2.3 携帯電話市場とラッセルの七面鳥の定理~2030年のヒストリアンとビジョナリスト

ラッセルの七面鳥の定理の応用として、携帯電話市場を取り上げます)



携帯電話市場を取り上げます。



1)携帯電話の売上

 

2022/02/07のニューズウィーク丸川知雄氏の記事を元に、2010年までの日本の携帯電話市場を振り返ります。

 

1990年代から2000年代に至るまで、ヨーロッパが統一して作った携帯電話の通信規格GSMは世界200か国以上で採用されていましたが、日本はGSMを採用せず、日本独自規格のPDCを採用しました。2010年頃にアップルのiPhoneが圧倒的に優位になるまで、GSMを使わないという戦略で、日本は、外国メーカーをブロックしました。その結果、、世界でシェアの高いノキアモトローラエリクソンを押しのけて、日本ではNECパナソニック富士通、シャープなど日本のメーカーの携帯電話機が市場を占めていました。

 

パナソニックNECGSM規格の携帯電話機を作ってヨーロッパや中国で販売していましたが、最盛期のノキアは世界で4億台以上の携帯電話機を生産して販売していたのに対して、日本メーカーの販売台数は数百万台で、販売台数で二桁も差がついていました。

 

2010年頃に、帰納で考えれば、日本ではNECパナソニック富士通、シャープなど日本のメーカーの携帯電話機が市場で売れていましたので、今後も売れるだろうというトレンド予測になります。これは、ヒストリアンです。

 

しかし、海外市場で、日本メーカーは全く競争力がなく、GSMを使わないという戦略で外国メーカーをブロックしていたから、ビジネスになっていたわけです。ビジョナリストであれば、日本も、いつかは、世界標準規格になるはずですから、それまでに、ヨーロッパや中国でも、価格競争力のある技術や製品開発をすべきと考えます。しかし、日本メーカーはその時の売り上げで、満足して、技術開発や製品改良を怠ってきたわけです。

 

1990年頃に、GSMを使わないという戦略で携帯電話を売って、高給取りであった企業の役員は、もしかしたら、草場の陰でお休みかもしれません。

 

しかし、2010年まで、日本の電機メーカーの業績はよかったと言えないわけです。企業の実態は、見かけの売上ではなく、技術力、製品開発能力、販売能力で見なければならないからです。

 

外資が株主になった場合、企業はつぶれることが必須な、ヒストリアン経営では、OKはだせません。

 

そんなことをしたら、七面鳥と同じ未来が待っているからです。

 

ところが、「物をいう株主」を、非難する人もいます。

 

2)ヒストリアンの金メダル

 

宮本 弘曉氏は、日本経済が活力を失った根本原因は、「大企業に入ってダラダラと働くのが一番おトク」だったからだといいます。

 

城繁幸氏は、「日本人の生産性が低いのはそれが最も合理的だから」といいます。

 

お二人の言っていることは、ほぼ同じです。

 

城繁幸氏は、「技術力でも社会の豊かさでもアメリカは今も変わらず世界のトップを走り続ける一方、日本は、株主より従業員の雇用や賃金を重視した終身雇用制度を続けた結果、

日本企業はGAFAどころか中国企業にも分野によっては技術力で後塵を拝し始めており、すでに日本は、賃金では韓国にも抜かれた」といいます。



2022/02/03のニューズウィークに、ダイアナ・チョイレーバ氏は、習近平式「強権経済」では、中国経済は停滞するといい、その理由を「共産党の要求を満たすために、苦労して手に入れた利益を好きな時に使えない、あるいは取り上げられるなら、そもそも成功を目指す意味はあるのか。功績を認められないのに、努力して金メダルを取ろうとする人はほとんどいないのと同じだ」といっています。

 

終身雇用制度では、歳をとれば給与は上がりますが、若くして成功を目指して努力して、功績をおさめても所得はあがりません。

 

ヒストリアンは、金メダルが嫌いなのです。

 

コロナ集計に、依然としてファックスをつかっています。これは、HER-SYS(ハーシス)の問題なのですが、問題を解決しても、金メダルをもらえないことが分かっているので、誰も、何もしないので、何も起こらないのです。

 

引用文献

 

「大企業に入ってダラダラと働くのが一番おトク」日本経済が活力を失った根本原因  2022/02/08 プレジデントオンライン 宮本 弘曉

https://president.jp/articles/-/54393?page=1

 

日本の労働生産性が低いのって国民性や労働観のせいなの?と思ったときに読む話 2022/01/13 Joe’s Laob

http://jyoshige.livedoor.blog/archives/9941653.html



「中国標準2035」のまぼろし 2022/02/07 ニューズウィーク 丸川知雄

https://www.newsweekjapan.jp/marukawa/2022/02/post-77_1.php



北京冬季五輪習近平式「強権経済」崩壊の始まり 2022/02/03 ニューズウィーク ダイアナ・チョイレーバ

https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2022/02/post-97994_1.php

 

今どきファクスって…コロナ集計にアナログの限界、大阪市1・2万人漏れ 2022/02/06 産経新聞

https://www.sankei.com/article/20220206-QEUIA7PF2BLINLSE7XMJVI2LEE/