1.19 評価とビジョン~2030年のヒストリアンとビジョナリスト(新19)

(適正な評価は、ビジョンに基づかないと出来ません)



日野自動車は2022年3月4日、ディーゼルエンジンの排出ガス試験と燃費性能試験における改ざんを公表しました。対象車両は日野ブランドだけで11万5526台で、新車は出荷停止になりました。

 

 このような自動車の不正は、繰り返されています。

 

自動車の不正は頻発するので、不正のチェックの手順は決まっていて、定期的にチェックされているが、それでは、不正は防げないという状態と思われます。

 

不正のチェックは評価の1種です。

 

ここで、問題にしたいのは、評価は何のためにするのかという点です。

評価は、全体のビジョンの中で位置付ける必要があります。

評価の結果を何に使って行くのかをデザインしておく必要があります。

 

逆にいえば、ビジョンのない評価は危険です。

 

評価は、計画にフィードバックする必要があります。

 

1950年代に、品質管理の父といわれるW・エドワーズ・デミングが提唱したPDCAフレームワークを例に、評価を考えます。

 

PDCAは、「Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Act/Action(改善)」のステップで進み、最後のAct/Action(改善)の結果が、次のPlan(計画)にフィードバックされます。DoとAct/Actionが、混乱を招きやすいですが、計画を実行するのはDo(実行)で、Act/Action(改善)は、実施が計画に沿っていない部分を調べて計画を改善します。この改善は、次のPlan(計画)に反映されます。Act/Action(改善)は、「実施が計画に沿っていない部分」を対象に行われます。つまり、Check(評価)は、「業務の実施が計画に沿っているかを評価」するのですが、その目的は、「実施が計画に沿っていない部分」を抽出することにあります。

 

つまり、Check(評価)は、計画通りに進んでいない悪いところを抽出するために行われます。

 

PDCAのCheck(評価)が、この方向で行われていれば、日野自動車の不正はありえません。不正は、「ディーゼルエンジンの排出ガス試験と燃費性能試験結果の改ざん」です。このデータは、「実施が計画に沿っていない部分」を抽出しましたので、意味のある評価がなされています。この評価は、Act/Action(改善)とPlan(計画)を通じて、エンジンの設計変更になるはずです。ところが実態は、エンジンの設計変更をしないために、データが改ざんされています。

 

このように、PDCAのサイクルを止める原因は、実謬主義にあったと推測されます。組織内に、実謬主義がはびこると、データ改ざんの不正が繰り返されることになります。



実謬主義は、フィードバックしないので、データを必要としません。これが、データ改ざんが起こる理由です。また、官庁のデータ公開が進まない理由でもあります。

 

無謬主義がある組織は、Plan(計画)の改訂をしませんので、ビジョンのヒストリーからのドロップアウトも発生します。