1.2 ヒストリーとビジョンの例~2030年のヒストリアンとビジョナリスト(新02)

ヒストリーとビジョンの区別が、どうして重要かを例をあげて説明します。

 

2022/03/08の日経新聞の新聞の一面に、「日本女性の賃金が、男性の74%」にしかならないことが出ています。この格差は、先進国の中では、韓国に次ぐワースト2です。男女賃金格差の大きい国ほど労働生産性が低くなる傾向があります。つまり、男女間の賃金格差は、経済成長の阻害要因なので、是正すべきであるというのが、記事の趣旨です。

 

男女間の賃金格差があるということは、過去のヒストリーです。解消するためには、ビジョンを描く必要があります。つまり、記事の価値は、どれだけ実現可能なビジョンを描けたかにあります。

 

男女間格差に、選挙権があります。今では、忘れられているかもしれませんが、女性の選挙権(投票権と被選挙権)は、戦後になって、成立しています。簡単に言えば、国内で、自発的に、女性の選挙権が成立したのではなく、GHQによってもたらされています。

 

戦前であれば、女性には、選挙権がありませんでした。ヒストリアンは、今まで、女性には、選挙権がなかったのだから、女性に選挙権が無くて当然であるというロジックを展開します。現在は、選挙権がありますので、このロジックは、論外と思われるかもしれません。

しかし、選挙権を男女間の賃金格差に置き換えれば、今まで、男女間賃金格差があったのだから、格差があって当然であるというロジックが同じ論理構造です。

 

ヒストリアンの、このロジックは、広く見られます。

 

女性天皇については、アンケートによると、国民の過半数は、賛成です。これは、選挙権と同じで、男女間格差を設ける理由はないという考え方です。これに対して、識者と呼ばれるヒストリアンが、女性天皇に反対します。そこで、女性天皇女系天皇は違うと言った時間稼ぎの議論を展開します。選挙権には、投票権と被選挙権の2種類がありますが、基本思想は男女平等ですから、細かな区別には意味はありません。

 

女性天皇天皇の継承に、男女格差をなくすことが基本です。細かな区別には意味はありません。

 

女性天皇を認めるか否かは、見解の違いですから、どちらが絶対正しいとは言えないかもしれません。

 

しかし、説明は、ビジョンに基づく必要があります。

女性天皇を認めない場合には、そのことによって、どれだけ国民が幸せになれるか、もしくは、その逆を説明する必要があります。

 

説明に、ヒストリアンの「今まで、〇〇があったのだから、〇〇があって当然であるというロジック」を使うことは、受け入れられません。もしも、このロジックが正しいとすれば、女性の参政権を認めたことは、間違いだったことになります。仮に、識者がそのような意見を持っているとすれば、基本的人権憲法に反対していることになります。

 

ヒストリーとビジョンの詳細な検討は、第2章から、始めます。

ここで示したように、問題解決には、ヒストリーとビジョンの区別が重要です。