この論考では、ヒストリアンを捨てて、ビジョナリストを重視せよと主張しています。
ビジョンとは、バックキャスト思考法です。ヒストリーの延長線をフォアキャストしたものは、ビジョンもどきで、ビジョンではありませんが、そうした内容をビジョンを読んでいることが多くあり、混乱の元になっていますので、今回は、この点を整理しておきます。
2021/010/16のJIJI.COMは、次のように伝えています。
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政府は２６日、新しい資本主義実現会議（議長・岸田文雄首相）の初会合を開き、政権の看板政策「成長と分配の好循環」を通じた分厚い中間層の復活に向けた具体策の検討に着手した。衆院選で与党が勝利した場合、来年春までに新たな経済社会のビジョンをまとめる。分配強化には経済規模を拡大する必要があり、長年の課題となっている成長戦略の推進がカギとなる。
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ここには、「来年春までに新たな経済社会のビジョンをまとめる」と書いてありますので、これは。ビジョンではなく。フォーキャストして、これからやる予定のことを並べているだけです。
科学技術政策では、ビジョンという言葉が、多用されます。
神徳徹雄氏がまとめたHPがありますが、そこに見られるビジョンは、フォーキャストの集まりのビジョンもどきです。
これは、例えば。イーロンマスク氏が、スペースXを立ち上げた時のことを想像して見れば、わかります。
スペースXは、「火星の植民地化を可能にするための宇宙輸送コストの削減を目的に、2002年にイーロン・マスクによって設立され[」ています。つまり、「火星の植民地化」が、ビジョンであり、バックキャストによって、それまでの、ロードマップが組み立てられます。
現状を延長したり、現状の方向を少し変更するのは、ヒストリアンのアプローチのビジョンもどきであって、ビジョンではありません。
１）出口を設定する
今、仮に、年金生活で、年収200万円を最低と考え、働いているきの年収の50％が、200万円に相当するとします。（注１）
そうすると、最低年収は、400万円必要です。
これを年間220日8時間働いて得るとします。
時給＝400万÷220÷８＝2273円になります。
つまり、最低賃金を2200円にあげないと、老後の生活ができないことになります。
２）バックキャストする
次に、時給2200円にするための方法を考えます。
企業の生産システムを大幅に改善する必要があります。
時給2200円は、労働生産性をあげなければ、払えませんので、社会人の再教育が必須になります。
その場合、落ちこぼれてしまう人もでますので、その救済策を、生活保護で行うか、ベーシックインカムで行う必要があります。
イーロンマスク氏は、「火星の植民地化」を出口にして、逆算して、ロケット開発をしています。
ビジョナリストの考え方は、常に、バックキャストになります。
政権が目指す「企業の競争力強化で生まれた利益が中間層の賃上げに回り、消費の活性化で次の成長につながるサイクル」では、非正規雇用の貧困問題が解決できないことは自明です。
３）残された時間問題
コロナウイルスが広まってから、生鮮食品の価格が高止まりしています。一部の野菜が、過剰生産で値崩れすることはありますが、4，5年前と比べると、特に、野菜と果物の価格があがっています。
考えられる要因に、外国人研修生がとれなくなったことがあります。
貧困対策を考えるとき、農業の役割は大きいと思います。農業生産は、GDPには、あまり寄与しませんが、食べられなくなった時には、社会の安全弁になります。農村地域では、農産物の寄付や物々交換は日常的に行われてきました。
しかし、経済が、サービス経済に移行すると、こうした安全弁が働かなくなります。
今まで、社会保障をおざなりにしても、治安が悪化しなかった原因には、こうした安全弁がありますが、それは、急速に失われつつあると感じています。
注１：
年金の50％保障は、税引き後なので、400万円ではなく、500万円が必要かもしれません。数字の修正は容易です。大切なことは、バックキャストすると問題の本質が見えることです。
成長・分配へ来春ビジョン 中間層復活目指す―新しい資本主義会議が初会合 2021/10/26 JIJI.COM
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021102600370&g=eco
科学技術政策の沿革 ［私的メモ］産業技術総合研究所 神徳徹雄
https://staff.aist.go.jp/t.kotoku/policy/history_j.html
スペースX wiki
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B9X
