カーネマンの新著「ノイズ」は、意思決定のミスを避けるための工夫について述べています。
カーネマンは、ミスを避けるための手法としては、チェックリストの利用を推奨しています。
また、意思決定者は、オブザーバーを置いて、オブザーバーのチェックやアドバイスを受けることを推奨しています。
ノイズでは、「付録B 意思決定プロセス・オブザーバーのチェックリスト」として、チェックリストの見本が載っています。
下記にその一部を示します。
また、このアイデアの原型は、ハーバードビジネスレビュー2011年11月号に載っています。
記事は有料ですが、日本語の書評で、12のリストを見ることができますので、そのリストをリスト2に示しています。
これを見ると、日本の政策決定は、ノイズの塊であることがわかります。
例えば、補正予算の大臣による復活折衝が行われていますが、これは、a-2に該当します。
野党の国会答弁は、a-3に、該当します。
10万円を現金で配布しない場合は、a-1に、該当します。
マスコミは、本来は、オブザーバーの機能を果たすべきですが、全く機能不全になっています。
こうしたノイズだらけの政策決定を1955年の保守合同から、繰り返しています。高度経済成長したのは、政策の効果ではなく、戦争で生産基盤が破壊された反動や、朝鮮戦争とベトナム戦争の特需が原因で、経済が落ち込んでいるのは、こうした特効薬が切れた結果、政策の意思決定のノイズが、表に出てきた結果であるとも理解できます。
すくなくとも、カーネマンの視点に、立てば、こう見えます。
なお、リスト1は、あくまで、見本です。リスト2を見ると、チェックリストの選択には、幅があることがわかります。
リスト1 ノイズ
付録B 意思決定プロセス・オブザーバーのチェックリスト
バイアス発見のためのチェックリスト(見本) (中略) 2.予断と時期尚早な結論 (a)議論展開前の予断 a-1・ある結論にいたる得をする人はいるか? a-2・すでに結論を下してしまっている人はいるか?何らかの予断を疑うべき妥当な理由が存在するか? a-3・何にでも反対するタイプの人はいるか?その人は意見を述べたか? a-4・極端な意見に引きずられて議論があらぬ方向に迷走する恐れはないか?
Ⅰ.意思決定者が自問すべき質問 (1)提案チームが「私利私欲にかられて意図的に誤りを犯したのではないか」と疑われる理由はないか? (2)提案者たち自身が、その提案にほれ込んでいるか? (3)提案チームのなかに反対意見があったか? Ⅱ.提案者に問うべき質問 (4)顕著な類似性が、状況の分析に大きく影響するおそれはないか? (5)信頼できる代替案が検討されたか? (6)一年後に、同じ意思決定を繰り返さなければならないとしたら、どのような情報が必要になるか?それをいま入手できるか? (7)数字の出所を承知しているか? (8)「ハロー効果」が見られないか? Ⅲ.提案を評価するための質問 (9)提案者たちは過去の意思決定にこだわりすぎていないか? (10)基本となるケースは楽観的すぎないか? (11)最悪のケースは、本当に最悪なのだろうか? (12)提案チームは慎重すぎないか?
THE BIG IDEA Noise How to Overcome the High, Hidden Cost of Inconsistent Decision Making HBR
D・カーネマンによる「認知バイアスを見抜く12の質問」―『「破壊的」経営論(DHBR2011年11月号)
http://management-frontier.livedoor.biz/archives/51904042.html