北京オリンピックと人権問題
北京オリンピックへの外交的ボイコットを、これまでに表明した国は以下です。
ここまでは、エマニュエル・トッド氏の見立て通りに動いています。
今後、オランダ、ドイツなどのEUの国がどう出るかに、関心が移ってきています。
さて、問題は、論点がずれていることです。論点は、北京オリンピックへの外交的ボイコットではありません。
論点は、「新疆ウイグル自治区での虐殺や人権侵害」に対する対処です。
新疆ウイグル自治区の実態については、わからない点も多いのですが、人権問題には、問題があります。また、世界報道自由度ランキングでも下位にあり、報道の自由がありませんので、実態に問題がないという公式発表は、国際社会では、受け入れられません。
マスコミは、北京オリンピックへの外交的ボイコットを中心に、ニュースを作りますが、問題は、民主主義と人権問題です。
2021/12/09の米政府主催の民主主義サミットで岸田首相は、「自由、民主主義、法の支配といった基本的価値を損なう行動に対し、有志国が一致して臨むことが必要だ。深刻な人権侵害にしっかり声を上げていく」と演説しています。
しかし、日本版マグニツキー法は、放棄しています。「ウイグルの人権問題に毅然と対応」するので、あれば、北京オリンピックへの外交的ボイコットをさけることは、難しくなります。
なによりも、「自由、民主主義、法の支配といった基本的価値を損なう行動に対し、有志国が一致して臨むことが必要だ。深刻な人権侵害にしっかり声を上げていく」という演説と、実際の行動が遊離してしまえば、国際社会から信頼されなくなり、外交的に孤立してしまいます。
日本国内では、一貫性のない政策でも、それなりに通用してきた面もありますが、欧米は論理的に、物事をすすめますので、白黒をはっきりさせない表現や、発言と行動が、矛盾していれば、信頼されなくなります。
なお、このサミットには、中国・ロシアは招待されていません。
最近の中国には、外交的な孤立が見られます。少なくとも、トッド氏の見立てでは、英語経済圏は、対中国に対して、保護主義を明確にしていくと思われます。
現在の日本の状況は、太平洋戦争の前夜に、似てきていると思われます。
以下に、関連する記事の要点を、時系列でまとめます。眺めていただくと、人権問題の流れが、理解できるはずです。
それにしても、最近1週間の動きは、非常に大きいです。
2021/02 人権団体が、スイス政府への公開書簡他のサイトへの中で、2008年の北京五輪をきっかけに中国の人権問題は解決するというIOCの予想は見込み違いだったと述べました。
2021/07 欧州議会と英下院、中国の人権問題に懸念を強め、政府代表らの五輪式典への招待を断るよう求める決議を採択します。
2021/09 岸田首相、自民党総裁選の期間中に、4候補者に対して行われたアンケートで、「日本版マグニツキー法に賛成」と回答し、公式サイトでは、「ウイグルの人権問題に毅然と対応」と明示します。
2021/10/08 ノーベル平和賞に、フィリピンとロシアのジャーナリスト2人が決定します。
2021/11/16 岸田首相、「日本版マグニツキー法」の制定を当面見送る方針を固めます。G7の中でマグニツキー法を制定しない方向で動いているのは日本一国だけです。
2021/12/06 ホワイトハウスのサキ報道官は、「バイデン政権は北京冬季五輪に外交使節団や当局者を派遣しない。新疆ウイグル自治区での虐殺や人権侵害が理由だ」と述べた。
2021/12/07 岸田首相は首相官邸で、日本政府の対応について、「オリンピックの意義や我が国の外交にとっての意義等を総合的に勘案し、国益の観点から自ら判断していきたい。これが我が国の基本的な姿勢だ」と述べています。
2021/12/08 オーストラリアのモリソン首相は記者団に対し、「オーストラリアの政府高官は五輪のために中国へ行かない。新疆ウイグル自治区での人権侵害問題を協議するための中国との外交チャンネル再開に苦慮していることや、中国政府が豪製品の輸入を遅らせ、阻止していることが要因だ」と説明しています。
2021/12/08 カナダのトルドー首相は「世界の多くのパートナー国が中国による度重なる人権侵害を著しく懸念している。カナダは北京冬季五輪にいかなる外交団も派遣しない」と表明しています。
2021/12/09 岸田文雄首相は、オンライン形式で行われた米政府主催の民主主義サミットで演説し、「自由、民主主義、法の支配といった基本的価値を損なう行動に対し、有志国が一致して臨むことが必要だ。深刻な人権侵害にしっかり声を上げていく」と訴えました。
- 岸田首相、人権侵害「有志国結束を」 国連機関に15億円拠出 2021/12/10 時事通信社
https://news.yahoo.co.jp/articles/0b711d318a1bd6ed05cd7c150384bb5e9808daa1
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2021/12/post-97633.php
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2021/12/post-97624.php
https://news.yahoo.co.jp/pickup/6411986
https://news.yahoo.co.jp/articles/3d433cfc9b1e3e8d8b9d7256bb9fef0730d250be
- 中国に最も痛手なのは日本が外交的ボイコットをすること 2021/12/10 中国問題グローバル研究所所 遠藤誉
- 北京五輪ボイコットできない岸田政権の対中友好がクワッドを崩す 2021/12/09 中国問題グローバル研究所所 遠藤誉
存在しないスイス人科学者、中国がねつ造か 偽アカウント600件...武漢説めぐり 2021/12/09 ニューズウィーク 青葉やまと https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2021/12/600-7.php
米豪に続きイギリスも。北京冬季五輪の「外交的ボイコット」相次ぐ 2021/12/09 ニューズウィーク ケイティー・ワーマス
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2021/12/post-97622.php
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2021/12/post-97621.php
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2021/12/293npo.php
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2021/12/post-97607.php
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2021/12/post-97599.php
- 海外から中国に移送される台湾人──犯罪人引渡し条約の政治利用とは 2021/12/06 ニューズウィーク 六辻彰二
https://www.newsweekjapan.jp/mutsuji/2021/12/post-132.php
- 北京五輪、欧州で外交ボイコット論活発化…英は「閣僚の航空券予約していない」 2021/12/06 読売新聞
https://www.yomiuri.co.jp/world/20211206-OYT1T50010/
- 首相、人権侵害法見送りへ 対中外交に選択の余地 2021/11/16 東京新聞
https://www.tokyo-np.co.jp/article/143104
- 【図でわかる】岸田文雄首相、人権外交に対するこれまでの発言は?(音声付き) 2021/10/06 HUFFPOST
https://www.huffingtonpost.jp/entry/huffchina98-kishida-magnitsky-act_jp_615bf3fce4b075408bdb145a
- 北京五輪、外交的ボイコットか スイスでも高まる圧力 2021/12/01 swissinfo.ch
- JOINT OPEN LETTER TO GOVERNMENTS: URGENTLY COMMIT TO A GOVERNMENT BOYCOTT BEIJING 2022;2021/02/03
https://nobeijing2022.org/joint-open-letter-to-governments-boycott-beijing2022/
- 世界報道自由度ランキング
- 2021 World Press Freedom Index
- 老人支配国家 日本の危機 エマニュエル・ドッド 文春新書 1339