中國の人口データと今後の経済成長(2)

前回の「中國の人口データと今後の経済成長(1)」を書いたあとで、大前研一氏が、最近の中国の経済の自由化に対する締め付けを「もしかすると文化大革命のように大きな後退にもつながりかねない」と書いています。

ニューズウィーク2021年12月 7日号(11/30発売)のタイトルは、「特集:文化大革命2.0」ですから、現在の中国の状態を、文化大革命であると、みなしている人は、多いことになります。

そこで、エマニュエル・ドッド氏の「老人支配国家 日本の危機」の視点から、この問題を整理してみます。

トッド氏は、人口減少から、中国の経済発展が失速するのは、時間の問題であると、みなしています。

資本主義の行き詰まりを指摘する人もいますが、トッド氏は、今後、英連邦の国と米国が、英語経済済圏をつくり、世界経済をリードすると考えています。つまり、これからは、保護主義の時代に切り替わり、英語経済圏とその他の経済圏に分断されると考えています。この流れは、2016年のブレクジットから、始まっているといいます。その他の経済圏については、トッド氏は、語っていませんが、推測すると、EU中国経済圏が大きな部分と思われます。

現在、中国経済圏は、影響のある国の数で言えば、米国経済圏を越えています。しかし、資金の流れは、中国から、途上国に、一方的に流れています。開発援助の場合には、長期的には、リターンを期待する訳ですが、投資案件はかなり、リスクが高いので、どの程度のりターンが見込めるかは、不透明です。

トッド氏は、主に、中国の市場開放を期待したグローバリズムは、米国の中流層の貧困化を招いたため、保護主義を提唱するトランプ氏が大統領になったと分析しています。また、バイデン政権になっても、この流れは変わらないと分析しています。

日本の所得分布も米国と同じ傾向をもっており、中間層が失われる以前には、中国経済は、競争相手ではありませんでした。したがって、分厚い中間層を復活するという政策は、米国流に考えれば、保護主義への転換につながります。日本の場合には、まだ、米国のように、保護主義政治勢力が、主流ではありませんが、そうなる可能性もあります。

トッド氏は、日本の場合には、英語経済圏への帰属を明確にすることのメリットが大きいと判断しています。

しかし、日本では、英語圏ではありませんので、文化や情報の上では、英語経済圏ではありません。

また、自動車とIT関係の部品の企業は、中国で市場が大きいので、中国経済圏への帰属を求める可能性があります。

米国が北京五輪の外交的ボイコットを発表しています。

岸田総理は日本の対応について「オリンピックや日本外交にとっての意義など総合的に勘案して国益の観点から自ら判断する」といっています。

林芳正外相は「外交的ボイコット」に関する日本政府の対応について「今後、適切な時期に諸般の事情を総合的に勘案して判断するが、現時点では何ら決まっていない」といっています。

過去に、日本が、対中政策の変更を検討した時期が、2回あります。

1)1989年の天安門事件のとき。

2)1996年の初の総統直接選挙で、中国が李氏の得票を減らそうとミサイルを発射したとき。

いずれの時も、日本政府は、明確な対応をせずに来ています。

今後、英国や、オーストラリアなどの英連邦の国が、米国に同調する可能性は高いと思われます。

トッド氏の見立てでは、国際情勢は、英語経済済圏が、保護主義に向かって進んでいくという判断です。

英連邦の国が、動けば、この情勢は、北京オリンピックまでに、明確になる可能性が高いと思われます。

今回も、様子見や、遅れた判断をすることは、外交的には、大きなマイナスになります。

現在は、1902年の日英同盟の前夜のような状況ではないでしょうか。

どちらに転ぶかよりも、まともな議論ができないことの方がリスクが高いと考えます。

https://www.moneypost.jp/856244

  • アリババら中国大手10社、1日で9兆円の時価総額を喪失 2021/12/06 Forbs Japan

https://news.yahoo.co.jp/articles/1ac0cffecd1b2ee2e57c16f5e4209eb52baeeed3

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  • 老人支配国家 日本の危機 エマニュエル・ドッド 文春新書 1339