システム思考という用語は、システムダイナミクスの用語として、使われていますので、ここでは、それと区別して、システム手法の発想という用語を使います。
「システム手法」の定義は以下です。
定義;「システム手法」とは、問題解決をする場合に、問題を直接解かずに、問題を解決するツールをまず作り、ツールを使って問題解決をするアプローチである。
例を示します。
円周率を計算するには、
1)計算アルゴリズム(計算式)
2)計算をする人、または、コンピュータ
の2つのツールを使います。
円周率の計算の歴史は、この2つのツールの改善の歴史です。
円周率の計算に見られるように、このアプローチは、数百年経っても、改善が進んでいます。
定理1;「システム手法」は、開発者が交代しても、継続的に問題解決を改善できる手法である。
現在、円周率を計算している人は、コンピュータを購入するか、借りて、計算アルゴリズムの改善によって、より精度の高い、有効数字の長い、円周率を計算しています。
つまり、円周率の計算のために、コンピュータを自作している人はいません。円周率を計算するアルゴリズムは、円周率の計算者以外の人が開発したコンピュータ言語を使っています。
定理2;システム手法では、ツールはモジュール化され、モジュールを組み合わせて、構成される。
モジュールという言葉は、通常は、ソフトウェアの機能的にまとまった集合を表しますが、ここでは、コンピュータ言語と、コンピュータもモジュールとして扱っています。また、クラウドシステムを使うので、クラウドシステムもモジュールになります。
円周率の計算が成功すためには、モジュールが有効に働き、モジュール間の機能分担が適切に行われていなければ、なりません。
定理3;システム手法で、問題解決をする場合の制約条件は、時間、データ(メモリー)、人、お金です。
IT関係の仕事をしている人間には、システム手法が、頭の中に染み付いています。
それは、どんなに、計算が得意でも、紙と鉛筆で、コンピュータと競争することは、無謀だからです。
さて、以上で、システム手法の発想は、説明しました。
カーネマン流に言えば、システム手法の発想は、スローシステムであり、ヒューリステックのファストシステムとは相いれません。
システム手法の発想は、スローシステムですから、自然に日常的に、使うようにはなりませんが、IT関係者は、システム手法を使わないと生き残れないので、ストレスはありますが、日常的に、スローシステムを使うように、習慣化されています。
また、システム手法は、仕事をモジュール分割するので、DXの基本であるとともに、ジョブ型雇用に対応しています。この問題は、後で、論じましょう。
最後に、注意しておきたいことは、システム手法は、ファストシステムを否定するので、異端であるということです。