ブランケット撮影の研究(4)被写界深度エフェクト

被写界深度エフェクト

iPhone 7 Plus」世代以降のデュアルカメラを搭載しているスマホでは、被写界深度エフェクトを利用できます。

これは、ブランケット撮影ではないですが、混乱しやすいので、今回は、整理してみます。

ボケとボカシの違い

最初に、ボケとボカシの違いを整理します。

スマホで、ボケがえられると説明しているのは、現時点では、ほぼ100%、ボケではなくボカシです。ボカシでは、焦点のあっている画像を、 gaussian フィルタを用いたエフェクト処理をしてボカシます。

この機能は、darktableにもついています。

一方、複数の画像から、レンズのぼかし関数を作って、ぼかしを作成することは理論的には、可能です。筆者が、ブランケット撮影によるボケという場合には、こちらを指します。

残念ながら、現時点では、この機能を実装しているカメラはないと思います。

ボカシの原理

gaussian フィルタを用いたボカシは古くからある技術です。

要点は、ボカシをかける場所と強度の設定です。

スマホのアプリ、例えば、After Focusの特徴では、この2点をマニュアルで設定します。

基本的なアイデアは、フレームを前景と背景にわけ、背景にだけ、 gaussian フィルタをかけます。

iPhone 7 Plus」のボカシのアルゴリズムが公開されている訳ではないので、以下は、他のソフトからの類推ですが、おおよそ、次のような機能が、実装されていると考えられます。

1)デュアルカメラを使って、フレームを、前景と背景に分けます。

2)デュアルカメラを使って、背景のポイントごとの距離を推定します。

3)背景に、 gaussian フィルタをかけます。このとき、ボカシの大きな画像と、ボカシの小さな画像の2枚を作ります。

4)背景にボカシをかけるときに、距離に応じて、ボカシの大きな画像と、ボカシの小さな画像の合成比を変化させます。

つまり、ボカシの大きさにグレードをつけることで、画像に奥行き感をだします。

従来のボカシは、均一強度であったので、改善になります。

ボケと距離の例

今度は、ボケについて、述べます。

ボケと距離の関係が、見てわかるのは、原型をとどめているボケの場合です。

例で、説明します。以下では、フルサイズ換算画角の係数を(x2)のように注記します。

写真1(x2)は、F8.0で撮影しています。一番後の草が、ボケています。この程度のボケであれば、 gaussian フィルタとの違いは、分かりにくいです。だだし、前景と背景の分離は困難です。

写真2(x2)は、F1.8で撮影しています。ここには、後ボケだけでなく、前ボケもあります。ボケの大きさは、焦点のあっている位置からの距離によって異なっています。ここでも、前景と背景の分離は困難です。

写真3(x2)は、F1.4で撮影しています。背景は、盛大にボケていて、原型をとどめていないので、ボケの大きさと、焦点のあっている位置からの距離の間に関係はありません。ここでは、前景と背景の分離は容易です。ボケは、悲しくなるくらい、美しくはありません。

写真4(x2)は、F2.8で撮影しています。これは、写真1から3とは別のレンズで、画角は換算80mmです。この場合には、ボケの大きさが微妙に変化している上に、ボケても、草の芯の部分がかなりはっきり見えます。gaussian フィルタで再現するのは難しいと思います。

写真5(x2)は、F4.0で撮影しています。画角は、換算200㎜で、望遠です。銀杏の右に緑色のボケがあります。ボケの大きさと距離との関係はみられません。この場合であれば、背景をボケを含めて、壁紙代わりに使いまわしが出来そうです。

写真6(x2)は、F4.0で撮影しています。画角は、換算200㎜で、望遠です。ボケの円が大きい理由は、写真5よりも、対称に接近して撮影しているからです。

写真5と6は、同じレンズで、ボケは、円形できれいです。

写真7(x1.6)は、F6.3で撮影しています。画角は換算320mmで、望遠です。これは、キットの望遠レンズなので、無理は効きません。F6.3でも、ボケが出ていますが、形は、円形ではなく、くずれています。

写真4から6のように、前景と背景の分離が容易で、背景が原型をとどめない場合には、背景を壁紙的に入れ替えることでも対応は可能です。

写真5と写真6の背景のボケはそれなりにきれいですが、これは、背景の色が緑色だから生きて来るのであって、アングルが異なれば、ボケの効果はなくなります。

写真を撮影するときに、前景、背景、構図、対象物に傷がないことを確信し、さらに、白飛びがないかもチェックします。このときに、ボケを考えて、絞りを調整することは困難です。

ボケを出したい場合には、レンズの一番明るいF値で撮影する程度の調整しかできず、ボケの量は、後で、確認することが多いと思います。

もちろん、撮影の腕が上がれば、ボケに合わせた絞りの調整も可能かも知れませんが、モミジは揺れますし、雲の状態で、光線も変わりますので、難しいことは確かです。

きれいなボケができるとうれしいですが、ポートレート撮影を除けば、ボケのために、レンズを買い替えるまではないと思います。もちろん、購入前であれば、ボケのサンプルをチェックすべきです。

また、解像度とボケの美しさは、両立しないという言う人もいます。

 

https://wgld.org/d/webgl/w059.html

https://docs.unrealengine.com/4.27/ja/RenderingAndGraphics/PostProcessEffects/DepthOfField/

  • 被写界深度の再現に基づく空間情報提示の研究 2008/05/16 石澤 昂

http://hdl.handle.net/10097/34570

  • 被写界深度・視野拡大のためのコンピュテーショナルイメージング 2015/01 中村, 友哉

https://doi.org/10.18910/52027

 

f:id:computer_philosopher:20211125231725j:plain

写真1

 

f:id:computer_philosopher:20211125231735j:plain

写真2

 

f:id:computer_philosopher:20211125231751j:plain

写真3

 

f:id:computer_philosopher:20211125231804j:plain

写真4

 

f:id:computer_philosopher:20211125231825j:plain

写真5

 

f:id:computer_philosopher:20211125231837j:plain

写真6

 

f:id:computer_philosopher:20211125231850j:plain

写真7