被写界深度エフェクト
「iPhone 7 Plus」世代以降のデュアルカメラを搭載しているスマホでは、被写界深度エフェクトを利用できます。
これは、ブランケット撮影ではないですが、混乱しやすいので、今回は、整理してみます。
ボケとボカシの違い
最初に、ボケとボカシの違いを整理します。
スマホで、ボケがえられると説明しているのは、現時点では、ほぼ100%、ボケではなくボカシです。ボカシでは、焦点のあっている画像を、 gaussian フィルタを用いたエフェクト処理をしてボカシます。
この機能は、darktableにもついています。
一方、複数の画像から、レンズのぼかし関数を作って、ぼかしを作成することは理論的には、可能です。筆者が、ブランケット撮影によるボケという場合には、こちらを指します。
残念ながら、現時点では、この機能を実装しているカメラはないと思います。
ボカシの原理
gaussian フィルタを用いたボカシは古くからある技術です。
要点は、ボカシをかける場所と強度の設定です。
スマホのアプリ、例えば、After Focusの特徴では、この2点をマニュアルで設定します。
基本的なアイデアは、フレームを前景と背景にわけ、背景にだけ、 gaussian フィルタをかけます。
「iPhone 7 Plus」のボカシのアルゴリズムが公開されている訳ではないので、以下は、他のソフトからの類推ですが、おおよそ、次のような機能が、実装されていると考えられます。
1)デュアルカメラを使って、フレームを、前景と背景に分けます。
2)デュアルカメラを使って、背景のポイントごとの距離を推定します。
3)背景に、 gaussian フィルタをかけます。このとき、ボカシの大きな画像と、ボカシの小さな画像の2枚を作ります。
4)背景にボカシをかけるときに、距離に応じて、ボカシの大きな画像と、ボカシの小さな画像の合成比を変化させます。
つまり、ボカシの大きさにグレードをつけることで、画像に奥行き感をだします。
従来のボカシは、均一強度であったので、改善になります。
ボケと距離の例
今度は、ボケについて、述べます。
ボケと距離の関係が、見てわかるのは、原型をとどめているボケの場合です。
例で、説明します。以下では、フルサイズ換算画角の係数を(x2)のように注記します。
写真1(x2)は、F8.0で撮影しています。一番後の草が、ボケています。この程度のボケであれば、 gaussian フィルタとの違いは、分かりにくいです。だだし、前景と背景の分離は困難です。
写真2(x2)は、F1.8で撮影しています。ここには、後ボケだけでなく、前ボケもあります。ボケの大きさは、焦点のあっている位置からの距離によって異なっています。ここでも、前景と背景の分離は困難です。
写真3(x2)は、F1.4で撮影しています。背景は、盛大にボケていて、原型をとどめていないので、ボケの大きさと、焦点のあっている位置からの距離の間に関係はありません。ここでは、前景と背景の分離は容易です。ボケは、悲しくなるくらい、美しくはありません。
写真4(x2)は、F2.8で撮影しています。これは、写真1から3とは別のレンズで、画角は換算80mmです。この場合には、ボケの大きさが微妙に変化している上に、ボケても、草の芯の部分がかなりはっきり見えます。gaussian フィルタで再現するのは難しいと思います。
写真5(x2)は、F4.0で撮影しています。画角は、換算200㎜で、望遠です。銀杏の右に緑色のボケがあります。ボケの大きさと距離との関係はみられません。この場合であれば、背景をボケを含めて、壁紙代わりに使いまわしが出来そうです。
写真6(x2)は、F4.0で撮影しています。画角は、換算200㎜で、望遠です。ボケの円が大きい理由は、写真5よりも、対称に接近して撮影しているからです。
写真5と6は、同じレンズで、ボケは、円形できれいです。
写真7(x1.6)は、F6.3で撮影しています。画角は換算320mmで、望遠です。これは、キットの望遠レンズなので、無理は効きません。F6.3でも、ボケが出ていますが、形は、円形ではなく、くずれています。
写真4から6のように、前景と背景の分離が容易で、背景が原型をとどめない場合には、背景を壁紙的に入れ替えることでも対応は可能です。
写真5と写真6の背景のボケはそれなりにきれいですが、これは、背景の色が緑色だから生きて来るのであって、アングルが異なれば、ボケの効果はなくなります。
写真を撮影するときに、前景、背景、構図、対象物に傷がないことを確信し、さらに、白飛びがないかもチェックします。このときに、ボケを考えて、絞りを調整することは困難です。
ボケを出したい場合には、レンズの一番明るいF値で撮影する程度の調整しかできず、ボケの量は、後で、確認することが多いと思います。
もちろん、撮影の腕が上がれば、ボケに合わせた絞りの調整も可能かも知れませんが、モミジは揺れますし、雲の状態で、光線も変わりますので、難しいことは確かです。
きれいなボケができるとうれしいですが、ポートレート撮影を除けば、ボケのために、レンズを買い替えるまではないと思います。もちろん、購入前であれば、ボケのサンプルをチェックすべきです。
また、解像度とボケの美しさは、両立しないという言う人もいます。
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被写界深度 wgld.org
https://wgld.org/d/webgl/w059.html
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Depth of Field (被写界深度) UNREAL ENGINE
https://docs.unrealengine.com/4.27/ja/RenderingAndGraphics/PostProcessEffects/DepthOfField/
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被写界深度の再現に基づく空間情報提示の研究 2008/05/16 石澤 昂
http://hdl.handle.net/10097/34570
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被写界深度・視野拡大のためのコンピュテーショナルイメージング 2015/01 中村, 友哉
https://doi.org/10.18910/52027