政治的治療法の有効期限の問題

少子化、過疎化などの社会変化問題の解決法には、変化に合わせたライフスタイルを再構築する方法と、変化を止める方法があります。

低賃金と労働生産性の問題は、DXを導入する、あるいは、DXを導入できるように、企業規模を大きくしないと解決できません。

DXを進めるためには、IT人材が必要ですが、それには、教育を変えることと、賃金体系を変える必要があります。IT教育の定員を増やしても、卒業後、見合うだけの収入が期待できなければ、履修希望者が集まらず、コースの定員を埋めることができません。

少子化や過疎化は、時間が経過すると、問題の状況が刻々変化していきます。

労働生産性の問題は、国際貿易の中では、相対的な意味を持ちます。DXにより、労働生産性を上げた競争相手国が出現すれば、相対的に、日本の賃金は下がり続けます。

このような状況変化に伴う問題解決は、病気による治療法と同じ構造を持っています。

例えば、ガンになった時に、ステージ1で、原因療法で、腫瘍を取り除けば、簡単な治療で、回復が期待できます。

これが、ステージ4になると、手術をしても、5年後生存確率は、激減してしまいます。

治療法には、有効期限があります。早期に、有効な対策をこうずれば、問題解決は容易です。対策をあと送りにすれば、治療法を変えなければならなくなります。さらに、問題解決できる確率(生存確率)は、激減してしまいます。

手術をするには、入院が必要なので、入院期間は、一旦、今までの、社会生活を続けることができなくなります。退院後は、リハビリも必要になります。

一方、飲み薬で済むのであれば、今までの、社会生活を続けることができます。これは、一見すると良さそうですが、ガンは飲み薬の対症療法では、治らないので、実態は、治療の先送りに他なりません。(注1)

こうした民間療法で、命を落とした人の例は、多くあげることができます。

日本経済の失われた30年は、対処療法で見かけ効果しかない飲み薬で、時間稼ぎをして、病気が進行してきた歴史に見えます。

ガンの治療法は医師が、提示して、患者が選択します。苦痛のある手術を避けて、病死を待つという選択もあります。その場合でも、死亡するのは、個人であって、他者を巻き添いにすることはありません。

国家の社会経済が、破綻した場合には、国民は、巻き添えを食らいます。国を捨てて、国を脱出する選択もありますが、それが、できるのは、国の社会経済が大きく破綻する前です。破綻が表面化すれば、脱出は、非常に困難になることを歴史は教えています。

金融緩和は、いうまでもなく、対症療法です。金融緩和が、直接、労働生産性を上げることはありません。

国家の社会経済の問題が、明らかになった場合、それを治療するのは、誰でしょうか。担当者は、政治家か、学者か、実業家か、でしょうか。

担当者は、原因療法を提示して、有権者に説明する社会的な責任があると思います。

注1: 原因療法には、バックキャストが、必須です。原因療法と、対症療法の違いは、バックキャストの有無で判定できます。 原因療法には、原因を判別するデータが必要です。30年前に、原因療法を論ずれば、それは、データがない現実を知らない空論であると言われました。現在は、データサイエンスの進歩によって、対症療法は、遅れているという逆の評価になっています。年寄りは、対症療法に慣れ切っていますので、原因療法を回避する傾向が強くあります。