Kiss-Mのズーム
レンズ交換式デジタルカメラのズームレンズは、一般には、次の3つのレンジで構成されています。なお、画角は、フルサイズ換算です。
1)広角ズーム12-24mm、あるいは14-28mm
2)標準ズーム 24-70mm、あるいは、28-70mm
3)望遠ズーム 70-200mm
キャノンの入門用のデジカメブランド、kissシリーズ(APS-C)のダブルズームの場合
EF-M 15-45mm F3.5-6.3 IS STM(換算24ー72mm)が、標準ズームで、
EF-M 55-200mm F4.5-6.3 IS STM(換算88ー320mm)が、望遠ズームになります。
広角ズームとしては、EF-M11-22mm F4-5.6 IS STM(換算17.6ー35.2mm)が販売されています。
広角ズームの広角側が不足している一方で、望遠側が、換算320mmと伸びています。
これは、センサーが小さいためです。標準ズームと、望遠ズームの間(72ー88mm)がつながっていないのは、最初の標準ズームが、次のレンズであったためです。
EF-M18-55mm F3.5-5.6 IS STM(換算28.8ー88mm)
昔ながらの35㎜フィルム、あるいはフルサイズセンサーのカメラの場合、F2.8通しの広角ズーム、標準ズーム、望遠ズームをそろえれば、ポートレートを除けば、一応なんでも撮影できると思われていました。
ただし、F2.8通しであれば、レンズの価格があがり、また、サイズと重量も大きくなります。
そこで、別の選択肢として、より小型のF4通しのズームレンズもそろえられていました。
kissシリーズが、入門機であるというのは、F2.8通しの、F4通し、あるいは、F値の小さな単焦点レンズ(注1)がないということです。
広角ズームが好きな人は、主に、風景を撮影する場合です。通常は、標準ズームと望遠ズームがあればよいことになります。
この2本を1本にしたズームレンズは、便利ズームと呼ばれます。
kissのEF-Mマウントには次の2種類の便利ズームがあります。
キャノンEF-M18-150mm F3.5-6.3 IS STM (換算28.8ー240mm)
タムロン18-200mm F/3.5-6.3 Di III VC (Model B011)(換算28.8ー320㎜)
これは、次の2本を1本にまとめたコンセプトになっています。
EF-M18-55mm F3.5-5.6 IS STM(換算28.8ー88mm)
EF-M 55-200mm F4.5-6.3 IS STM(換算88ー320mm)
2本を1本にまとめていますが、F値のレンジは、F3.5-6.3 で、同じで、暗くなっていません。
特に、タムロンは、望遠端が、換算320mmと望遠ズームEF-M 55-200mmと同じです。
逆にいうと、望遠ズームEF-M 55-200mmが、だらしがないとも言えます。
実際に、EF-M 55-200mm F4.5-6.3 IS STMと、EF-M18-150mm F3.5-6.3 IS STMを比べると、便利ズームのEF-M18-150mmの方が、画質が良いような気がして気になっていました。
kakaku.comのレビューを見ると、画質の良さを不等号で表して、
キャノンでは、
EF-M18-150mm >EF-M18-55mm
EF-M18-150mm >EF-M 55-200mm
タムロンでは、
18-200mm >EF-M18-55mm
18-200mm >EF-M 55-200mm
と書いている人がいました。筆者の勘違いでもないようです。
なお、新しいEF-M 15-45mmについては、
EF-M 15-45mm>EF-M18-150mm
だと思います。つまり、レンズ設計技術の進歩によって、便利ズームの画質が、必ずしも、望遠ズームより悪いとは言えなくなっています。
オリンパスの12-100mmF4
便利ズームとして、扱われるレンズに、オリンパスの12-100mmF4(換算24ー200mm)があります。
便利ズームにしては、望遠側が、換算200mmしかなく、見劣りしますが、望遠端で、F4は魅力的です。
オリンパスの標準ズーム12-40㎜F2.8は、カメラのキットレンズで手元にあります。
オリンパスのズームレンズのラインナップは次のようになっています。
F2.8通し
F2.8広角ズーム M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO(換算14ー28mm)
F2.8標準ズーム M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO(換算24ー80mm)
F2.8望遠ズーム M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO(換算80ー300mm)
F4.0通し
F4.0広角ズーム M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO(換算16ー50mm)
F4.0標準ズーム M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO(換算24ー90mm)
F4.0便利ズーム M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO(換算24ー200mm)
つまり、F4.0通しの望遠ズームはなくて、便利ズームが、100㎜(換算200mm)までをカバーしています。
F2.8標準ズームの写りに不満はありません。逆光特性は。ニコンのナノクリスタルコートにかないませんが、レンズはより解像しています。ただし、望遠側40mm(換算80mm)では、動いている犬を撮影するには、不足です。換算200mm程度ないと、散歩している犬を、それなりの大きさで撮影できません。
換算200mmが撮影できるズームの候補は、F2.8望遠ズーム、または、F4.0便利ズームでした。
犬の撮影には、通常はF1.4または、F2程度の単焦点レンズを使っています。F2.8標準ズームは、次善の選択で、写りに問題はありませんが、はっとするような写真の撮影は、難しいです。
画質は、F2.8望遠ズームが、F4.0便利ズームよりよいに決まっています。問題は、(換算80ー300mm)の画角を使いこなせるかです。
手元にあった、EF-Mマウントの2種類のレンズを使って、犬の散歩で、試してみました。
望遠ズーム EF-M 55-200mm F4.5-6.3 IS STM(換算88ー320mm)
便利ズーム EF-M18-150mm F3.5-6.3 IS STM (換算28.8ー240mm)
結局、1週間くらい試して、犬は、常に望遠の画角に入るとは限らないので、望遠ズームでは、無理だろうという判断になりました。
F4.0便利ズーム M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 は、評判のよいレンズであったので、風景の撮影には、問題はないと思われました。
しかし、ポートレートは、通常はF2.0以下、悪くても、F2.8で撮影します。F4.0での犬の撮影には、不安がありました。
写真1は、EM1-MKIIで、F4.0で、換算200mmで、撮影しています。F2.8望遠ズームを使わない限りは、F4.0 は、換算200mmでは、明るいレンズになります。特に、絵が硬くなるなどの問題は見られませんでした。
写真2は、kiss-Mで、F1.4、換算50㎜で、撮影しています。F4.0では、こうした写真は撮れませんが、便利ズームでも、画質が破綻することはなくなってきています。
F4.0で同じ画角で、使うのであれば、F4.0便利ズーム M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mmとF2.8標準ズーム M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mmの差は、かなり小さいと思われます。
F4.0便利ズームM.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mmのコンセプトは、
F4.0標準ズーム+F4.0望遠ズーム+F4.0マクロズーム
の1本で3本分ではないかと思われます。
写真3は、花に向かって飛んでいる蝶(F8.0、換算200mm)です。顕微鏡のような写真は撮れませんが、この程度のマクロ写真は簡単に撮影できます。
F4.0便利ズームの手振れ防止は、効きますが、F2.8標準ズームに比べると重いので、かなりしっかりグリップしないと、手振れになります。F2.8標準ズームのように、片手で撮影することはできません。
注1:
単焦点レンズには、少しだけ明るいレンズがあります。しかし、選択肢は広くありません。アダプターを付ければ、古いマウントの明るいレンズも使えますが、携帯性が犠牲になるので、既に、明るいレンズを持っているひとは別にして、新規に発売時期の古いレンズを購入する人はいないと思われます。
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