DXと将来の企業価値(2)DX対応企業とDX非対応企業

前回の補足

2021/11/16の現代ビジネスで、町田 徹氏は、政府高官の意見を引用し、東芝の企業分割が、企業再生には、つながらないだろうと述べています。

これは、前回の分析と一致しています。

DX対応企業とDX非対応企業

東芝の企業分割の話を書いたときに、企業のスケールメリットがなくなっているのではないかと述べました。

これは、前のメディアラボの所長であった伊藤穰一氏が述べていたことですが、今までは、製品の試作品を作るまでに、企業の多くの部門の協力を仰がねばならなかったが、現在では、3Dプリンタがあれば、一人で、アイデアから、試作品作りまでこなせるそうです。

ICも、設計、生産は、別々の会社に委託して、ファクトリーレスの企業もあります。こうなると、販売額や、生産量で、企業を分けることには、意味がなくなります。

中小企業は、労働生産性が、悪く、賃金も低くなっています。

こうした事実を見ると、つい、「中小企業」というスケールでものを考えたくなります。しかし、問題となる「中小企業」の労働生産性が上がらないのには、訳があります。それは、改善に必要なデータがないということです。

中小企業だから、労働生産性が低いのではなく、DXに対応しておらず、改善のための分析に必要なデータすらとれていないことが問題なのです。

政府は、DX非対応企業に、補助金を投入して、DXを促進する計画です。

しかし、これは無理です。DXに対応していないのですから、データがありません。データがなければ、どこを直せば、改善するのかという判断ができません。 それでも、改善することはありません。

データなしに、DXを改善することは、病気になったときに、端から順番に、薬を飲んでみるような方法です。基本、それで、病気が良くなることはありません。

そう考えると、企業を、DX対応企業とDX非対応企業に、分類することが合理的と思われます。

企業の情報公開に、DX対応スコアを義務付けることは可能です。 こうすると、DX対応度の低い企業は、将来性がありませんので、株価が下がります。投資家は、投資を避けるからです。

株価が、下がると企業は、不都合になりますので、本気になって、DXを促進します。 DXを促進するには、クラウドを使えば、さしたるお金はかかりません。

こうして情報公開を義務付ければ、労働生産性が上がります。

DXのレベルは、労働生産性に直結しますので、労働者の賃金に反映されます。 そうなると、就職希望者も、DX対応スコアを見て、就職先を決めるはずです。

現在の公務員の給与は、同じ規模の企業の賃金を参考に決められています。

企業のスケールでなく、DX対応スコアによって、賃金が決まるのであれば、公務員の給与も、DX対応スコアが同じレベルの、つまり、労働生産性が同じ程度の企業の賃金を参考に決めることが合理的です。こうすれば、DX化を進めないと公務員の給与が下がりますから、公務員の世界にも、DXは、急速に進展するはずです。

その効果は、デジタル庁とは、比較にならないでしょう。

 

  • 東芝再建を政府は諦めていた…「綱川改革」虚しく突き進んでいく「解体消滅」の末路 2021/11/16 現代ビジネス 町田 徹

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/89345

 

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