置き去りにされる貧困層
2021/11/09の産経新聞によれば、岸田文雄政権は、先般設置した「新しい資本主義実現会議」に、追加して「デジタル田園都市国家構想実現会議」、「デジタル臨時行政調査会(臨調)」、「新たな全世代型社会保障構築会議」の3つの会議を新設するそうです。一方では、「1億総活躍」「働き方改革実現」「統計改革」「人生100年時代構想」の各推進室を廃止するそうです。
2021/03/16のフォーサイトで、鷲尾高香一氏は、「総務省の労働力調査によると、2020年の年間平均完全失業者数は210万人と前年より28万人増加した」として、2020年の役員を除く雇用者数の数字をあげています。
筆者なりに整理すると、以下になります。
正規雇用者:全体 429万人増加
非正規雇用者:全体 898万人減少
差し引き(失業)ー469万人
正規雇用者:男性 90万人増加
非正規雇用者:男性 304万人減少
差し引き(失業)ー214万人
正規雇用者:女性 339万人増加
非正規雇用者:女性 594万人減少
差し引き(失業)ー255万人
アベノミクスでは、正規雇用が減って、非正規雇用が拡大し、貧困層が増えています。
雇用統計の数字では、2020度の失業者の増加は、28万人ですが、2020年の役員を除く雇用者数の数字の差では、469万人の雇用が減っています。
2021/11/15のFNNプライムオンラインのアンケートで、岸田政権に、要望することの第1は、景気や雇用で、42.3%に達しています。
鷲尾高香一氏は、失業が女性に集中し、それが、女性自殺者の増加につながっているというのですが、役員を除く雇用者数の数字の差では、男性が、ー214万人、女性がー255万人で、差はありますが、極端ではありません。
2020/01/29の総務省統計局「労働力調査(基本集計)2020年(令和2年)平均結果の要約 」では、 2020年平均の就業者数は、男性は3709万人と24万人の減少,女性は2968万人と24万人の減少としています。
この数字では、28万人ではなく、48万人になります。男性と女性で、働いている人の数が違いますので、比率をみます。
ー214万人/3709万人=ー5.7%
ー255万人/2968万人=-8.6%
8.6/5.7=1.50
になるので、女性の方が、5割多く失業しやすいことになります。
古いデータですが、経済産業省 平成28年度産業経済研究委託事業 「日本の中長期ビジョンの検討に関する調査」(ボストンコンサルタント作成)の図を引用します。
これは、コロナ前、アベノミクスの始まり(2012年12月)頃で、現在、に比べると、アベノミクスによる貧富の格差の拡大、コロナウイルスによる貧富の格差の拡大の前のデータです。現在は、貧困率はより広がっていると思われます。
これをみると、母子家庭の貧困問題を放置することは、人道に対する罪があると言えます。
母子家庭の失業が、自殺の原因であるという因果を検証することは簡単ではありませんが、2013年で、このデータであれば、自殺が増加した原因であるという仮説は、十分に納得できます。
2021/11/15の JIJI.COMは、経産相が経団連会長に賃上げを要請したと伝えています。しかし、経団連の企業で働いている人の賃金は、既に、平均より高いので、その賃金を上げても、貧困問題の解決にはなりません。
最近の最低賃金の増加率は、年3%でしたが、2020年はコロナ禍の影響が大きく雇用維持を優先したため、全国平均で1円(901円→902円)しか上がりませんでした。2021年は28円の引き上げ目安が提示され、全国平均が930円になっています。およそ3%です。これは、言うまでもなく、菅政権できまった内容です。
2021/06/10の JIJI.COMは、2021年度の最低賃金の決定について次のように、伝えています。
日本の賃金水準が上がらない背景には、1人の就業者が生む付加価値(労働生産性)の長期低迷がある。日本の1人当たりの生産性(19年時点)は経済協力開発機構(OECD)加盟37カ国中26位で、米国の6割弱にとどまる。野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは「最低賃金引き上げの環境をつくるため、まずは経済全体の生産性向上に政策の重点を置くべきだ」と指摘する。
因果律からすれば、生産性が上がれば、賃金が上がるので、木内登英氏のいっていることがもっともになります。
しかし、「最低賃金と変化の起こし方(1)」で、申し上げましたように、最低賃金を上げる目的は、正規社員、非正規社員といって身分制度のような、現在の雇用システムを破壊することが目的です。
おそらく、この不合理な雇用システムを改善しないと、貧困問題は解決しませんし、経済の発展もないと思われます。
貧困問題は、先進国とは思われない状態です。
江戸時代には、経済の中心は、農地でしたので、土地を相続できない次男、三男は、貧困で、結婚できませんでした。それに、合わせて、結婚できない女性も、多くいました。
https://www.fsight.jp/articles/-/47806
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2021/11/post-97431.php
https://news.yahoo.co.jp/articles/6880713410cb554c0d61cdc4a4907fdeacfa453f
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地方創生、賃上げが柱 都市部の人材呼び込み狙う―中小企業は反発・骨太原案 2021/06/10 JIJI.COM
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021060901192&g=eco
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岸田内閣 支持率63%で再スタート 10万円給付では評価割れる FNN世論調査 2021/11/15 FNNプライムオンライン
https://news.yahoo.co.jp/articles/b526307f598b70ec26a98141368b6076af765440
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岸田政権の目玉政策実現へ 3会議の新設発表 2021/11/09 産経新聞
https://news.yahoo.co.jp/articles/5900833f1435c9542ca233b6453f4db9555684f6
https://www.yomiuri.co.jp/politics/20211112-OYT1T50214/
https://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/nen/ft/pdf/youyaku.pdf
https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/H28FY/000280.pdf
https://www.job-terminal.com/features/%E6%9C%80%E4%BD%8E%E8%B3%83%E9%87%91/
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