2021/11/06のNWES ポストセブンは、「公明党が衆院選の公約に掲げた『18歳以下の子供への10万円の一律給付(未来応援給付)』に、岸田文雄・首相がどう対応するかに、関係者の視線が集まっている」と伝えています。
厚労省の「2019年 国民生活基礎調査の概況」によると、18歳未満の児童がいる世帯の所得は平均745.9万円で、全世帯の所得の平均の552.3万円よりも多く、高齢者世帯は平均312.6万円、高齢者世帯以外の世帯は平均659.3万円です。全世帯の所得の中央値は、437万円で、平均以下の割合は61.1%です。
つまり、「18歳以下の子供への10万円の一律給付」は、富裕層への給付になっているわけです。
ところで、「国民生活基礎調査」のデータは、非公開で、処理結果のみが公開です。
筆者は、非公開データの99%は、異常値の処理が不十分であると考えますので、非公開であることは、問題です。所得格差の研究者が、このデータなしに研究できるのか、疑問に思われます。
また、国民生活基礎調査の概況の文章で、平均値以外の統計量が言及されているのは、全世帯の所得の中央値のみです。これは、データサイエンスのリテラシーに問題があることを示しています。
元データが非公開ですので、高齢者を除く、子どものいない世帯の所得分布などのデータ処理ができません。
18歳未満の児童がいる世帯の所得分布が公開されています。
グラフ1とグラフ2に、分布を示します。
厚生労働省の「平成28年度全国ひとり親世帯等調査」によると、母子世帯の平均年収は243万円です。
グラフ2から、250万以下は、9.3%、450万以下は22.8%、550万以下は、34.7%、650万以下が、47.4%です。
10万円の給付は、 650万以上では、不要でしょう。一方、250万以下では、10万円では、焼石に水です。
シングルマザーの就労年収は、正社員が平均305万円、パート・アルバイトが133万円です。パート・アルバイトで年収が200万以下の割合は、83%に達します。
つまり、2000年以降解禁され、安倍政権下でも拡大した正規雇用から、非正規雇用へのシフトが、母子家庭の貧困問題の原因と思われます。
ジョブ型雇用では、非正規と正規の区別はありません。これは、ジョブ型雇用が少ない日本の雇用慣習に基づく特殊な課題です。
生活困窮者で、働ける人に、重点的にお金を配分する方法としては、最低賃金の賃上げが、圧倒的に優れています。それは、お金の再配分が市場メカニズムで行われるからです。
10万円を、より困っている人には、50万円、困っていない人には、0円というように、重みを付ける政策は、失敗します。それは、ソ連の社会主義が失敗した原因です。適切な配分ルールを決める合理的な基準は存在しません。資源配分は、市場メカニズムにゆだねることが、資本主義の基本です。
最低賃金を上げて、その結果、正規と非正規の賃金格差、あるいは、ジョブ型雇用に統合されて、正規と非正規の身分格差がなくなれば、貧困問題の大きな部分は解決します。
こう考えると、最低賃金の議論が、重要と思われます。
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